第6話 年末の一大行事と言えばX'masですよね
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年の瀬である。
世間様はあと一週間後に控えたクリスマスムード一色だ。
もちろん、敬の家であるところの「アン・レーヴェ」もケーキの仕込みで毎日毎日大忙しであった。
クリスマスケーキの予約も、おかげさまで限定個数は完売。
限定品以外にもかなりの注文が入っている。
嬉しい悲鳴というやつだ。
「お母さん、こっちでいいよね」
「ありがとう~」
敬も家の手伝いを頑張っていた。
それと同時に、自分でケーキを焼く準備も進めていた。
恒例のクリスマスパーティには、自分で焼いたケーキを凛に振る舞う約束をしているのだ。
「敬もすっかりお菓子作りが上手になったわよねぇ」
「うん。お手伝いがてら練習してるからね。それに、お菓子作るの楽しいよ?」
「そう言って貰ったら嬉しいわ。お父さんの後を継いでパティシエになれるかな?」
「どうかなぁ」
そういってふふっと笑う敬。専用のミトンがやけに可愛らしい。
紅茶や珈琲を入れるのもお手の物。
飲み物に合わせたお菓子作りも料理も小五男子とは思えない腕前だ。
女子力上げてどうするのかと小一時間程問い詰めたい。
「凛ちゃん、美味しいって言ってくれるかな?」
「大丈夫よ。お母さんが保証するわ。それより、プレゼントの準備はしたの?」
「うーん、もう少し。まだ編み上がらないんだよね~」
実は、プレゼントに手編みのマフラーを編んでいるのだ。
だから女子力を発揮してどうすると。
「敬は、ホント無駄に女子力高いわよね・・・」
「やだなぁ、ボクは男の子だよ?」
「そういうことじゃないのよ。まあいいわ。誰も困らないんだから」
確かにそうかも知れないが、それでいいのか母よ。
一方その頃。
「うう、上手く出来ない・・・」
凛は凛で慣れない編み物をしていた。
奇遇なことに、敬と同じくマフラーを編んでいるのだが、そのことはお互いに知らない。
凛がそれを知れば、
「やっぱり私たちは通じ合ってるのね!」
と狂喜乱舞することだろう。
「似合わない編み物なんかするからよ」
「う~る~さ~い~。私だって自覚はあるんだから!」
母の茶々にもめげずに、必死で編み続ける凛。
この数年間、凛はすくすくと成長した。
そりゃあもうすくすくと。
小学校五年生にして身長は160cmジャスト。
幸いなことに敬より大きくはない・・・とは言ってもほぼ同じようなものだが。
とにかく、自分の方が大きいという事態は避けたい凛であった。
細身の体は引き締まり、ショートカットの髪と合わさって、まるで凜々しい美少年のようだ。
だからといって性別を間違えられるようなこともない。
それなりに体の方も発達しているせいもあろうが、やはり恋する乙女の醸し出す雰囲気のなせる業であろうか?
何でも水準以上の力量でこなす凛ではあったが、細かい作業は苦手であった。
お菓子作りや料理、編み物など、明らかに敬の方が腕前は上だ。
それも目下のところの凛の悩みであった。
「敬君の方が女子力高いんだから、あんまり見栄張らないのよ?」
「女子力言うな~」
「凛も相当ハイレベルだけどねぇ。どうしてお父さんとお母さんから凛みたいな出来のいい子が生まれたのか不思議だわ~」
心底不思議そうな母親。
鳶が鷹を産むとはよく言ったものだが、逆に比べたらどれだけマシか。
「あと一週間あるからね。頑張るんだから!」
「はいはい、がんばんなさい。心を込めてね」
「それは大丈夫。込めまくってるから!」
「それもちょっと怖いわね・・・」
心がと言うか念がこもっている気がしないでもない。
何にしても、クリスマスまであと7日。
二学期終了までも、あと7日。