誰かが何かを諦めた理由と諦めない理由
あけましておめでとうございます。
訳が分からない。
今の状況を表すなら、そういうことになるのだろう。御灯光景が『ホームズ』の壁をぶち抜いた。井伊藍が『酒呑童子』の娘だった。首塚花道と万屋正義、不知火由紀、音岳が藍を連れて逃げた。そして、唯原飛翔は灯台下千影とそれを追い掛けている。なんて、意味不明な状況だ。
「なあ、飛翔」
千影さんが何となくって感じで話し掛けてきた。思うけど、千影さんは何故、ぼくと行動を共にしているんだ?
「何ですか」
「お前、気付いてたんじゃないか」
「何にですか」
「藍が『酒呑童子』の娘だと、とっくの昔、具体的には流水が藍を拾ってきた時、つまりは初対面であいつの正体に気付いていたんじゃないか?」
「……」
伊達に三百年は生きていないか。
「だったら、何ですか」
「何でもねえよ。まあ、お前としてはそんなことを気にする訳にはいかねえよな。お前の母親も『百鬼夜行』の一員だったんだからな」
最後の解決人、唯原葛葉。『百鬼夜行』第九位『玉藻前』。
ぼくが母さんの正体を知ってしまった日、母さんはいなくなった。今も、行方不明。本気で探してんだけど、どこでどうやって生きているんだか。
「しかし藍が『酒呑童子』の娘とはな」
千影さんが独白する。
まあ、一番近くにいた花さんや正義さんは全く気付いていなかった訳ではなかっただろう。でも、確証もなかったはずだ。もし確証があれば、藍をぼくから離していたはずだ。
ぼくが、ぼくから母さんを奪った『百鬼夜行』を心底憎んでいるのは知っているはずなんだから。その上で同じ屋根の下で生活していたんだから、大したもんだ。
そもそも『百鬼夜行』はその名の通り、百人で構成されていると言われている。十四年前の『七夕の悪夢』で三十人、『戦争』で五十人が死んだ。残りの二十人の内、四人は賞金稼ぎや殺し屋が殺し(この中の一人はぼくが殺した)、五人が裏世界と関係のない場所で事故死し、三人が『戦争』でヤケになって自殺した。正体不明の癖に、死体になったら正体が判明した。生き残り八人の内に、花さんや正義さんや音岳さんや母さんがいる。
光景さんが出てきたってことは、極地兄さんは『十戒家』の名を賭けて、禁忌『百鬼夜行』を潰す気だ。おそらく、花さんは生き残っている『百鬼夜行』全員を呼び出すはず。『十戒家』も光景さんだけってことはないだろう。
禁忌と禁忌の全面戦争になる。
だが、結果は分かっているようなものだ。間違いなく『十戒家』の完全勝利で終わる。どちらにしても、この町はタダでは済まない。
「これで『ホームズ』も終わりだな」
「え?」
「家屋も『御灯』の小僧がぶっ壊しやがったし、家の持ち主である音岳が死ぬんだから、あのシェアも終わりだろう」
音岳さんは死ぬまでいかなくとも追われる身となるだろうから、当然そうなるだろう。
そうか、考えてなかったな。これが終わったら何がどうなるのだろうか。終わる、か。何がどうなったら『終わり』なんだろうか。
「別れ際で言うと悲しくなるから、ここで言うけどよ」
千影さんは立ち止まった。
「この三百年の間で、この数年間が一番楽しかったぜ。夢を捨てた後の反動かもしんねえけど」
千影さんの夢。おそらく五年前の千影さんを語る上で、『最強』の次に出てくる事項。人間になること。
「人間になることを諦めたのは、七丁目に負けたからですか?」
「他にないだろ。まあ、客観的に見れば『最強であること』と『人間になること』に関係はないのかもしんねえけど、俺には重要なことだったんだ」
「……なんとなく分かる気がします」
「お前はそういう奴だよな」
千影さんは肩を竦めた。
「ともかく。ほら、行きますよ。結界が張ってみたいですが、光景さんより先に藍を見つけないと」
「いや、俺はここまでだ」
ぼくは千影さんの言葉の意味が分からなかった。だが、すぐに理解した。痛いほどに、理解した。
「じゃあな、楽しかったぜ」
「ええ、ぼくもです。『家族』みたいな時間でした」
「家族?」
千影さんは失笑混じりに鼻を鳴らした。
「お前の家族は、あそこには一人しかいなかったじゃねえか」
「…………」
「なんてな。まあ、その一人は大事にしろよ。家族ってのは、そういうもんだ」
踵を返した元『最強』人間になることを諦めた妖怪こと灯台下千影に、ぼくは頭を下げた。心を込めて、深々と。
「ありがとうございました」
□
「断る」
灯台下千影が唯原飛翔に別れを告げた頃、某マンションの一室、七丁目一言は辛辣な態度でそう告げた。
「俺は『百鬼夜行』のおかげで家族を失ったんだ。それなのに、その頭領である『酒呑童子』の娘を助けてやる道理も義理もないな」
「一言、そんなこと言わないで」
「そうです、七丁目さん。せめて明時さんに繋いでください。詳しい話を聞きたいんです」
凪茶と仮名美は食い下がるが、七丁目は依然として顔色を渋くしている。普段の仏頂面と大して変わらないが。
「悪いが、守永に何を聞いても何を言っても何も変わらないと思うぞ。井伊藍は『十戒家』に処刑される。それで終わりだ」
「一言、藍ちゃんが死んでも構わないって言うの?」
「井伊藍は刃宮凪茶ではないからな」
さらっとのろける七丁目。
「それに、俺と井伊の関係は知り合いの家族と言った感じだしな。わざわざ手間を掛ける関係ではない」
「だからって……」
「井伊藍に関して手間を掛けるのは、唯原飛翔の仕事だ」
「…………」
「俺の仕事じゃない」
七丁目は、唯原飛翔の仕事であるが故に自分がそれを横取り出来ないと言っているのだ。
仮にも『神』を受け継いだ男。自分という存在の身を弁えている。
神が人から自ら行動する意味を奪ってはならぬ。七丁目はそう考えているのだ。
「奴なら何とかするさ。あれは俺が信者以外で唯一認める存在だぞ?」
口には出さないが、七丁目一言は知っていた。井伊藍が自分の両親と姉を死に追いやった『酒呑童子』の娘であると知っていた。だが、七丁目には藍を憎めない理由があった。
友の家族であったからだ。まあ、親の罪で子を憎むような人間でもないが。
ともかく、今回の件に首を突っ込む気は皆無らしい。
「見損ないましたよ、七丁目さん」
「見損なわれるほどの人徳があったことに感激だな」
「茶化さないで、一言。……せめて明時さんに繋いでくれない?」
凪茶の要望に、七丁目は黙って携帯を差し出した。少し前に買い換えた物だが、既に傷が付いている。相当手荒な扱いをしているらしい。
「昨日までは無傷だったのに……また握り潰しそうになったの?」
「まあな」
「また? 握り潰す? 七丁目先輩、凪茶ちゃん、何の話なの?」
絆からの質問をその場にいた全員がスルーした。
「物は大事にしないと……。もしもし、明時さん?」
凪茶の周囲に人が集まり、携帯からの応答に耳を済ませる。
『お? その声は凪茶ちゃんじゃないか。何でまた七丁目の携帯から? まあ、答えは分かってんだけど』
「説明、してくれますよね?」
『必要ない』
それは、いつもの陽気な道化師とは違う明時の声。『十戒家』第一部署『壱圏』第九分家『守永』当主としての声。崩壊と破滅を司る冷徹な悪魔の声。
『井伊藍はあの化け鬼の息子。それは確定事項だ。ならば、処刑しなければならないだろ?』
最後の一文だけいつもの調子だったため、より恐怖を煽る結果となった。
「だ、だけど」
『凪茶ちゃん。こんなことは言いたくないんだけどさ』
再び声色が変わる。ただし、それは陽気でも冷徹でもなく、静かで優しかった。明時が凪茶を、いや、その場にいる全員を気遣っていると分かる声だった。
気遣う? 何に対して? 決まっている。
『井伊藍は、君達を騙してたんだぜ?』
「……」
『君達が身の上話を敢えて聞かなかったって言い訳は出来るが、相手が「酒呑童子」の娘となれば話は別だ。別次元だ。そんな出生を黙っているなんて、騙しているとの何も違わない。むしろ騙しているより悪い』
「だ、だけど! 藍ちゃんは何かやった訳じゃあ……」
『聞こえなかったか?』
明時の声がまた変わる。だが、伝わってきたのは冷たい殺意ではなく、激しい憤怒だった。
『井伊藍は、あの化け鬼の娘なんだよ……僕から両親を! 飛翔から母親を! 七丁目から家族を! 前夜から兄を! 塁から恩人を! そして君から母親を奪ったあの「百鬼夜行」のリーダー、「酒呑童子」の血を引いてんだ!』
その怒号と同時に、電話の向こうから激しい破壊音が聞こえた。明時が何かを殴るか蹴るかしたのだろう。
『親の罪は子供に関係ないだって? 正論だ。だがな! なら僕や君を最も苦しめているのは何だ! 親の罪じゃねえか! 井伊藍が「酒呑童子」と関係ないと言うなら、君は忘れたってのか? 君の母親が……』
「おい、明時」
七丁目が凪茶から携帯を奪うように取って、明時の言葉を遮断する。
「それ以上言えば、殺すぞ」
『何だよ、七丁目。井伊藍の味方をするってのか?』
「いや。俺は凪茶の味方だよ。俺の味方の味方だよ。まあ、味方であって言いなりではないが」
言うだけ言って、七丁目は携帯を切った。目には静かな怒りが浮かんでいたが、泣きそうな顔をした凪茶を見て、無理矢理笑顔になる。
「そんな顔するなよ、凪茶」
「……一言」
凪茶は自分の頭を撫でてくれる七丁目に、弱々しい動きで抱き付いた。
「な、凪茶ちゃん、『百鬼夜行』と何か……」
「斑崎」
絆からの質問を七丁目は静かな声で遮る。同時に、それは拒絶の意思表示。絆が踏み入れてはならない領域を意味する。
「さてー、わたーし達がいてもお邪魔だから消えましょうか、絆ちゃん、仮名美ちゃん」
「え?」
「そ、そうですね。行きますよ、斑崎先輩。彼氏持ちなんだから、そういう勘は働かせてくださいよ」
「え、ちょ、仮名美ちゃん、離して」
「では、良い夜を」
絆を羽交い締めにした仮名美を連れて、如月傘子は七丁目の部屋から出た。
「……不器用な気遣い、感謝する」
二人きりになって心の枷が外れた凪茶は、幽霊のようにすすり泣きを始めた。
「ひっく、ひっく、一言、ひっく……。お母さんは、『百鬼夜行』に殺されたけど、けど、お母さんは悪くなんかない、お母さんは悪くない、お母さんは悪く、悪くなんかない。だから、自業自得なんかじゃない」
「ああ。お前の母は偉大な人だ。お前のような女を産んだんだ。罪人なはずがないさ」
凪茶の背中を優しく撫でる七丁目。『戦争』で虐殺と殲滅を繰り返した化け物は、ここにはもういない。
と、突然部屋のドアが無遠慮な音を立てて開いた。
「言い忘れたことがあったよ。少年少女達、性行為をする時はちゃんと避妊するんだぞ」
決め顔でそんな台詞を吐いた傘子に、七丁目一言の一言。
「色んな意味で台無しだよ」
□
十五年前まで、万屋正義の人生は退屈そのものだった。
人が生きることに懸命になれる理由が分からなかった。大切な物も欲しい物もなかった。
だが、『酒呑童子』に邂逅した日に、彼の人生は変わった。
万屋正義はかの化け鬼の狂気に当てられ、『子泣き爺』になった。彼だけではない。『茨木童子』にしろ『三つ目八面』にしろ『天邪鬼』にしろ『鴉天狗』にしろ『鵺』にしろ『座敷童』にしろ『姑獲鳥』にしろ、『百鬼夜行』のメンバーは誰もが『酒呑童子』に初見で見入った。魅入るしかなかった。
だから。
「だーかーらーよ、万屋正義。井伊藍がどこに言ったか教えてくれよ。そうすれば、『戦争』時に締結した契約に基づき、見逃してやるから」
「はっ。あんなものは『茨木童子』を含む生き残りの幹部が勝手に決めたことだ。俺は知らん。それに、俺は万屋正義ではない。『子泣き爺』だ」
だから、今こうして『酒呑童子』の娘を守る為に戦うことに、死ぬことに何の躊躇もない。むしろ本望だ。 ただ一点、肝心の藍の行く末を見守れない以外は。
「そうかい。じゃあ『御灯』の名に懸けててめえは殺す。まあ、そんなもん懸ける必要もなく、てめえはもう死ねがな」
光景の言う通り、二人の実力差は明らかだ。正義も弱くはないが一般人と比べての話。相手は『十戒家』の当主。次元が違う。
「だからどうした。大鬼様の血を守る為に死ねるのだ。何も怖くないし、何も苦しくない」
当然、大嘘である。化け物以上に化け物じみていると言われる『百鬼夜行』だが、構成員はほぼ人間である。死ぬの怖いし、苦しい。
だが、だからこそ、藍を守りたいと思うのだ。
「貴様ら『十戒家』には分からんだろうな。権力と暴力で裏世界に支配者気取りで椅子に座っている貴様らには」
井伊藍という存在に違和感を覚えたのは、彼女が清水流水に拾われてから一ヶ月後だった。雰囲気がどこか似ていると感じたのだ。笑った顔の目や口元、笑い声が特に似ていた。
それから彼女を気に掛けるようになった。それが原因でロリコン呼ばわりされたことはあまりいい思い出ではないが。
「分かんねーな。俺らにとって大事なのは特別なテッペンじゃねえ。平凡な底辺どもな」
「詭弁だな」
「まあな。てめえらみてえな化け物と、マトモに会話する気力は皆無だ」
化け物。
お前達がそれを言うか。正義という幻想に従って狂気に染まった『十戒家』が、自らの決断で狂気に飛び込んだ『百鬼夜行』を化け物と評価するか。
正義は歯軋りしたが言葉には出さなかった。元より住んでいる世界が違う。使う言葉も違うのだ。意思の疎通など最初から不可能だ。
「万屋、てめえは終われ」
「っ!」
一瞬だった。
その一瞬の後に、光景の右手が正義の腹部を貫通していた。まるで豆腐でも潰すように、光景は致命傷を与えた。
「あばよ、雑魚キャラ。地獄の同胞どもにもよろしく伝えないでくれ」
言ってから、光景は右手を抜き取る。血まみれだが全く気にすることなく、再び井伊藍を探し始める。倒れた正義のことなど、彼の血以上に気にしていなかった。
「……負けたか。情けない」
万屋正義が御灯光景に敗北するのに必要だったのは僅か0,2秒。正義がそれを理解するのに掛かった時間は二分。
「今そちらに参ります、大鬼様」
それは、光景に攻撃されてから正義が絶命するまでの時間だった。
「何死んでんだよ、『子泣き爺』。ダッサイな。名前がそもそもダッサイけどよ」
突然、光景の目の前に、見るからにチャラい格好をした二十代後半と思しき男が現れた。
光景はその顔に覚えがない。つまり『十戒家』の人間ではない。今、この町全体に人除けの結界が張られている。つまり一般人ではない。
決定的なのは万屋正義が『子泣き爺』であると知っていたこと。
光景が慣れない推理をしていると、男の方から勝手に名乗った。
「『百鬼夜行』第三位『鵺』、内淵外縁だ。知り合いからは外さんって呼ばれてるぜ」
第三位。即ち、長い間不明だった『百鬼夜行』のトップスリー最後の一人。『酒呑童子』『茨木童子』に次ぐ実力者ということだろう。
「『鵺』ねえ。退治しても怨念で京都を狂わせたジャパニーズキメラか。言い得て妙だな」
「誉め言葉と受け取っておくぜ、『御灯』さん」
「はっ。こっちの手の内はバレバレか。そっちについては名前しか分からないってのに。かっー、不公平な話だ」
「有名税だろ? 諦めな」
『鵺』こと外縁は一歩踏み出る。光景も戦闘体制に入った。
「一応聞いとく。『百鬼夜行』を裏切る気はないか?」
「アンタが『十戒家』を裏切るのと同じくらい有り得ない提案だな」
「てめえもか。……なあ、これは機会があったら知りたかったことなんだが、何でお前らって裏切り者が出ないんだ?」
「はあ?」
「普通有り得ないだろ。『七夕の悪夢』を除いて考えても異様だぜ、お前らの結束力は。七丁目一言を信奉する『断言教』の連中にさえ匹敵する。下手をすれば上回ってやがる」
口には出した光景自身、無意味な比較だと思う。属性云々の話ではなく、純粋に違い過ぎるのだ。
「『断言教』の結束力は七丁目一言に対する畏怖と感謝だ。しかし、それは『戦争』という時代の流れがあったからこそ、七丁目一言の力をこれ以上なく世界に見せしめた出来事があったからこその畏怖と感謝だ」
言わば、決定的な事実。
「だが、お前らにはそれがない。『戦争』と『七夕の悪夢』の最大の違いは、単独か複数か。『酒呑童子』は『七夕の悪夢』を実行しうるだけのカリスマを持っていた。そして、死後十四年の今でもお前らの忠誠心は薄らいでない。奴の娘の為に、姿見せなかったお前が出て来るくらいだからな。それは何故だ?」
光景は眼前の男が分からない。初対面であることを差し引いて考えても、自分と彼は理解し合えない。それだけは理解出来たが、聞かずにはいられない。
「何がお前らを、そこまで動かす?」
この件の終着駅は決定しているようなものだ。井伊藍の死、『百鬼夜行』の完全消滅。それは彼らにも分からない訳ではないだろうに。
「は、ハハハハハハハハハ」
「何がおかしい?」
「いや何、どうやって時間を稼ごうと思っていたが、勝手に時間を潰してくれたからな。助かったよ」
「ああ?」
光景にはその言葉の真意が分からなかった。
単に井伊藍を逃がす為の時間稼ぎにしては妙だ。ならば、彼自身の攻撃ということになるが彼が何かを仕込んでいる様子は見られない。
「ぐおっ……!」
それもまた突然だった。
光景は息苦しさを感じた。心理的描写としての息苦しさではなく、物理的な息苦しさだ。
「て、てめえ」
ガスの匂いはない。呪術独特の違和感が体にはない。そして、彼には何かをしている気配や動作がない。そして光景は今の自分の状態を『酸欠』と判断した。
「てめえ、空気支配系の超能力者か!」
おそらくは酸素か二酸化炭素のような気体を操っている。
返事はただ一瞬の微笑。光景にはそれで十分であった。
幹部の中で最も秘匿されるはずだ。知っていても対応出来ないタイプの能力なのに、知らなければ尚更だ。
「ぐお、くそ……」
油断していた。と言うより浅慮していた。『百鬼夜行』は正体不明の集団。元よりどんな敵がいるかあらゆる可能性を考えておくべきだったのに。
「あばよ、雑魚キャラ。だっけ? じゃあな、中ボス。地獄で我が同胞の餌となれ」
「畜生が……」
外縁の言葉を聞き終える前に、光景は意識を手放した。
夜はまだ明けない。戦いはまだ終わらない。




