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芸術家が思い出を好きな理由

 鍋による嫌がらせから二日後、退院した。松葉杖にはもうしばらく世話になるが。医者曰わく「君、本当に人間かよ。回復が異常だよ」らしい。で、久々の学校。

 学校でのぼくの立ち位置は、不良。社会のゴミという見方では遠くない。

 成績の方はともかく、出席率が悪いし、怪我も多いから。後、自覚はないんだが、目つきが悪いらしい。これは仕方ない。親譲りだ。

 まあ、授業は退屈だった。

 描写を省略して、放課後。いざ帰ろう、絆はもう帰ったかな、と思った時だった。

「唯原」

 教室の入り口から、ぼくを呼ぶ声があった。

 七丁目だった。不機嫌そうな仏頂面で、ぼくに向かって手招きしている。

「ちょっと来い」

「……うぃーす」

 周りの視線が痛い。七丁目も言い方ってものがあるだろう。今のやつだと、明らかにぼくに非があるっぽいじゃないか。生徒会副会長だからって、正しそうに。

 関係ないかな。

「何のようだ、七丁目」

「唯原、お前、俺に何か言うことはないか?」

 ある。めっちゃある。具体的には嘘吐きました。だけど、本当のこと言うほど、命知らずじゃない。

「全くないよ」

「そうか。ならいい」

 拍子抜けするくらい、あっさり信じやがったな。

「いやな、麻川がそう質問してみろと言っていたもんでな」

「……」

 あの野郎。

 何考えてやがる。ぼくに死ねと言うのか。

「それと」

「ん。まだ何か?」

「鎌倉の奴が欠席しているらしいんだが、何か知らないか?」

 業火が欠席? 七丁目がわざわざ聞いてきたということは、無断欠席ってことだ。珍しい。

「いや、知らない」

「そうか。じゃあ、これを頼む」

 七丁目は、緑透明なクリアファイルを渡してきた。中には数枚のプリントが入っていた。

「それ、鎌倉ん家に持って行ってやってくれ」

「何でぼくが」

「畦道百足、御灯風景」

 えーと、その二人の共通点は、まあ、決まっていて。ぼくが七丁目に吐いた嘘に関してで。

「さて、俺が何を言いたいか、俺が何を知っているか、理解したか。もし死にたいなら、そう言えよ」

 どうやら、ぼくには拒否権はないらしい。

「機会があったら、守永にも言っておいてくれ」

  何、それ。とんでもなく恐い発言だけど。え、明時も何かやったの?

「じゃあな」

 七丁目は踵を返して、生徒会室に向かった。多分、今誰もいないんだろうな。明時宛ての伝言ってことは、あいつは確実にいないな。

 このプリント、七丁目からってことは、生徒会関係か。七丁目とぼく達、学年違うし。

「それにしても、業火の家なあ」

 面倒臭い。あらゆる意味で。





 鎌倉業火は、五食同盟の中で唯一、『人間』らしい人間だ。

 明時はぼくと同じくらい精神がいかれているし、七丁目は身体能力が桁外れで人外だし、塁は根本的に異常で、前夜は死神で人間ですらない。

 だが、業火にはあまりそういう面はない。ないこともないかもしれないが、ぼくの周りの人間としては皆無の部類だ。

 ただ、何だろう。彼に問題があるとすれば、五食同盟で喧嘩屋をやっているという点と、家庭のことだろうか。

 裏世界によくある家庭が暗く重いなら、彼の家族は、グロい。

「あ、飛翔先輩じゃん。我が家に何か用事?」

 中流家庭の一軒家、鎌倉家前で佇んでいたら、ポニーテールの女の子に声を掛けられた。

 近くの公立高校の制服で、背中にはギターケースを背負っている。活発そうな目が特徴的だ。

 業火の妹、鎌倉かまくら仮名美かなみ。肉食主義の音楽家。

「って、先輩がうちに来るって、業火に用事がある時だけか。大穴で融だね」

 仮名美は兄達を呼び捨てで呼ぶ。理由は兄だと思っていないから。

「まあな。業火、いる?」

「あ、いえ。あの馬鹿、今朝からどこかに出掛けていて。学校にも行ってないんですか」

「来てなかったみたいだ」

「ふうん」

 どうでも良さそうだが、実際にどうでも良いのだろう。

「前ちゃんは元気ですか?」

「元気っぽいぞ。五食同盟の一人として七丁目の世話を焼いて……焼いて……焼いてないな」

 むしろ藍と遊んでいる時間の方が多いんだよな。あの連中は基本、自由だ。自由過ぎる。明時や七丁目を含めて。

「変わんないなあ、前ちゃんは」

「業火、家にはいないのか?」

 ぼくは目の前にある一軒家を指差す。

 仮名美は少し失笑して、素っ気なく答えた。

「いないんじゃないですか」

「そっか」

 ぼくもまた素っ気なく返す。

「ついでだから、ご一緒に『ホームズ』に行っていいですか?」

「ついでって何だ」

「いえ、噂の恋人さんを見てみたいなあと思いまして。凪ちゃんや藍ちゃんとも久しぶりに逢いたいなあとも思いまして」

「ん。ま、いいぞ」

 仮名美は、『あっち』側の人間じゃないしな。むしろ今まで逢わなかったのが不思議なくらいだ。

「あざーす」

 ない帽子を脱ぐ振りをして、ぼくにお辞儀をする仮名美。

「先に聞きますけど、業火や融はいませんよね? あと、馬鹿親子も」

 親子に馬鹿を忘れないのはぼくと同じだなあ、と親近感を覚えた。まあ、基本的にぼくの身近にはそんな奴ばっかか。

「そんな三人はいねえよ、多分」

 この時、それより大変な人がいたことをぼくは察知出来なかった。

 もし出来たら、全力で逃亡しただろうけど。





「きゃー! 何この子、可愛いー! 階段ちゃんといい勝負! なんか小さい頃の飛翔君に似てるー! 特に目つきー!」

 みいらさんが『ホームズ』にいた。そして藍を抱き締めて狂喜乱舞していた。

 何故いる……。

「う、うけけけ? おばさん、誰?」

「満礫みいらよ。探偵で、ついでに満礫美術館館長よ。みいらおばちゃんって呼んでね!」

「お、オーケー」

 不承不承といった態度で親指を立てる藍。みいらさんの何かに、それが共鳴したらしい。目が輝く。

「うわあ……やっぱり超可愛い!」

 苦笑いを浮かべる藍だが、さすがに困惑しているみたいだ。

「う、うけけけ……た、助けて、ひっしょん!」

 あ、馬鹿。こっちに視線向けるな。

「ひっしょん? ん。飛翔くーん?」

 みいらさんは笑顔だが、この笑顔が恐い。

 昔、ぼくはこの人にトラウマになるくらい殴られたことがある。ふっ。古傷が痛むぜ。

「え、はい、不肖私こと唯原飛翔です。只今、帰宅させて戴きました」

「お帰り。言いたいことは宇宙くらいあるけど、部屋着に着替えてらっしゃいな。待ってあげるから」

 最後の台詞には『逃げたら殺すぞ』という裏の意味が込められている。反射的に冷や汗が出る。

 自分の部屋に向かう途中で、凪茶とすれ違った。半端じゃないくらい申し訳なさそうだ。

「すいません。みいら様たら、急にいらっしゃって」

「だろうな」

 気にするな。いずれはこうなったさ。

「貴女は、鎌倉仮名美ちゃんね! 明時君の言ってた通り、勝ち気な瞳が素敵!」

「た、助けて、先輩!」

「凪茶、頼んだ」

「え、ちょ、飛翔さん!」

 ぼくは自分の部屋に一時退避した。

 鍵を掛けた扉の向かうから時折、

「貴女もこっち来なさい、凪茶」

「え、ちょ、みいら様、離してください! 私の体に触っていいのは一言だけで……」

「凪ちゃん、大胆」

「あ、いえ、そういう意味じゃなくて」

「それにしても藍ちゃん可愛いわ、持って帰りたいなあ」

「離してー」

「……凪ちゃん、この人が話に聞いてたみいらさん?」

「はい。残念ながら」

「凪ちゃんの実家の『満礫』で一番偉くて、当主として芸術家として探偵として世界中を飛び回ってる、『十戒家』で最大の知名度を誇る、凪ちゃんが尊敬する恩人にして偉人の、満礫みいらさん?」

「……誠に遺憾ながら」

「ちょっと凪茶」

「な、何でしょう」

「陰ながらあたしを尊敬とかしてたのね、感動したわ! 久しぶりに可愛がってあげる!」

「ひ、一言~」

 とか聞こえてきたけど、聞こえなかったことにした。

「うわあ、最悪だ」

 独白してから着替えて、本当に嫌だったが、リビングに出た。

「改めてご無沙汰していました、みいらさん。いえ、満礫館長」

「その世代交代しても使える愛想のない呼び名は、喧嘩売ってんのかしら」

「ひ、飛翔さん、私達にも飛び火しますから、訂正してください」

 凪茶に真摯に頼まれたのではしょうがない。断ったら七丁目に殺される。

「それで、みいらさん。何で急に」

「私の要件の前に、何か言うことないかしら、飛翔君。恋人が出来ていた事実をひた隠しにしていた唯原飛翔君」

 うわあ、最悪だ。

 絆がいなくて良かった。

 でも、藍は絆以上に、みいらさんには逢って欲しくなかったんだよな。

「ひ、ひっしょーん」

 涙目の藍がぼくに救援を求める。本格的に嫌になったらしい。みいらさん、見る分には面白い人なんだけど。

 なんとなく、昔の階段を思い出した。正確には、階段の昔か。いや、多分、今もされているんだろうけどさ、セクハラ。

「みいらさん、いい加減に藍を解放してください。嫌がってます」

 直後、殴られた。顔面を。グーで。

「嫌よ。そんなこと言うと殴るわよ」

 もう殴っています。

「じ、自己犠牲の上に正義は成り立つ。ぼくは、極地兄さ……、壱圏さんにそう教わった。本音じゃなかったろうけど! という訳でみいらさん、藍を解放してください!」

「自己犠牲は正義ではなく、偽善でしかないのよ、飛翔君。周りの人の想いを考えなさい」

「自己欲求で生きているアンタにだけは言われたくねえ!」

 諭すように言われたことが余計に腹が立った。直後、二度目のグーパンチ。

「くっ……」

「……はあ。分かったわよ」

 みいらさんは本当に仕方なさそうに、名残惜しそうに、藍を離した。藍がぼくの背中に避難する。

「そんなに意地を張るなんて、あたしの知ってるひーちゃんじゃなーい」

「止めてください、昔のあだ名を引っ張り出さないで」

「あ。ひっしょんがひーちゃんって呼ぶなって言ってた理由って、それか」

「違うよ」

「昔みたいに、みーちゃんって呼んでいいわよー」

「やです。恥ずかしいです」

「まあ、閑話休題。その話は置いておくわ」

 みいらさんの目が真剣になる。いや、この人の場合、真剣にふざけたこと宣うから、目の色が変わったからって何だって話だが。

「えーと、先輩。私、帰った方が良くないですか」

 余計な気は使うな、と目で合図。

「何か言い訳があるなら、先に聞くわよ。まあ、言わせないけど」

 鬼がいた。

 しばらく睨み合い。だが、ぼくが負けるのは時間の問題だった。

「あのー、みいら様」

 凪茶が助け舟を出してくれる。

「あら凪茶、何かしら?」

「みいら様と飛翔さんって、何か深いご関係だったんですか?」

 さっきの、ひーちゃんみーちゃんの話か。

「深いと言うか古いという程は古くない関係よ」

 容量を得ない説明なので、補足する。

「壱圏さんとみいらさんが幼なじみで高校まで同級生だったは知っているよな」

「はい」

「ええ!?」

 凪茶は頷き、仮名美は驚く。

「壱圏さんって確か、先輩の一番上の上司だよね。裏世界で最も偉い人の一人っていう」

「その偉い人と飛翔君は、従兄弟よ」

「へー……ええ!?」

「本当ですか!?」

 仮名美だけでなく凪茶も驚いたが、藍は無反応。藍には話したことがあるから当然かな。

「唯原極地ってのが極地君の昔の名前。『壱圏』本家に迎えられる前の名前。で、当然、私とも交流があったのよ。よく遊んであげたわ」

 明時共々、セクハラと暴力の思い出しかないけどな。

「あの頃は可愛かったなあ、ひーちゃんもめーちゃんも」

「あの頃、ぼくはぼく達が可哀相でしたよ」

「昔は良かったなあ」

 無視された。

「自由だったし」

「今でも自由でしょ」

屍笞ししもと数列すうれつも生きてたし」

「重い話を出さないでください」

「みんなで集まっても、難しい話なんかしないで良かったし」

「当主の言葉ですか、それが」

「飛翔君も勝手に恋人なんか作らなかったし」

「誰と交際しようとぼくの勝手です」

「それにさ」

「まだ何か」

「葛葉さんもいたし」

「…………」

 その名前を出すのは卑怯だ。そういう卑怯さに影響されて、ぼくも明時もこんな性格になったのに。反撃の一手が思い浮かばない。

「飛翔君、覚えてる? 葛葉さんがいなくなった日のこと。そして、葛葉さんがいなくなった理由」

 覚えているし、忘れたこともなく、思い出すまでもない。

 本当は、覚えていなくないし、忘れたいし、思い出したくもない。あれが夢であって欲しいと、今でも思う。

 多分、みいらさんも同じだ。

「葛葉さんは秘密を抱え込んでいた。私達はそれを知らなかった。それを知らずに、生きていた。今だって知ったと言うには程遠い。だから、飛翔君には分かるでしょう?」

「何が」

 みいらさんは無言だ。答えるまでもないってのか。改めて教えるまでもないってのか。

 じっと見守るような目で見つめてくる。だから、そういうのは卑怯だ。

 自覚はあるのだろうか。

「私はいいの。本当は良くないけど」

 でしょうね。

「でも、極地君に言わなかったのは、何故なの? 彼は、大切な家族じゃないの? そんなことも忘れちゃたの?」

 悪いけど、みいらさん。

 ぼくはそんな出来た奴じゃないんですよ。

「ぼくに家族なんかいねえよ」

 可愛い奴でもない。

「いるのは他人と、敵だけだ」

 本日三度目のパンチ、と思ったが。

「ダウト」

 抱き締められた。

「え、えっと、あの、みいらさん?」

 かなり苦しい。加減はしてくれていないようだ。強く、ただ強く、みいらさんはぼくを抱き締めていた。

「飛翔君、嘘吐き、変わってないみたいだね」

「い、いやー。ぼくはいつだって正直者ですよ」

「ダウト。七丁目君についてはどう説明するつもり?」

「それは、その」

 どうでもいいけど、七丁目のことを君付けで呼ぶのって、肝の据わった少数派だよな。

「飛翔君、嘘を吐く時に瞬きするんだよね。昔から」

「そんな癖は直しましたから、やってないはずです」

「ほら、やっぱり嘘だったんだ」

 はっ。はめられた。

「家族はいるし、敵や他人以外の関係だって、ちゃんとあるんでしょ。なら、大事にしないと」

「……うん」

 みいらさんのこういう部分は、母さんとは対極だよな。

「分かったよ、みー、って痛い!」

「むー。ひっしょんめ」

 背中に張り付いたままの藍に肉を摘まれた。加減無しだ。千切られそう。

「やっぱりこの子、可愛い!」

 みいらさんは何故か喜んでいるし。

「ぐえ」

 ぼくを抱き締める強さが更に高くなり、結果、締め上げられた。柔道の技を受けた気分。

 治りかけの怪我に響く。

「み、みいらさん、離して……」

 二人を引き離そうとすると、背後の視線に気付いた。振り向く。

「…………」

 絆がいた。

 厳密には、買い物袋を提げた由紀さんと一緒にいる絆が目を丸くして呆然と立ちすくんでいた。

 予想だけど、絆はぼくが鎌倉宅に寄り道している間に帰ってきて、ちょうど買い物に出掛けるところだった由紀さんに同行して、残った藍が留守番をしていたら、みいらさんがやって来た。のかな。

 限りなく正解に近いはずだ。

「斑崎先輩だ、ちーす」

 仮名美が陽気に挨拶するが、絆は無反応。つうか聞こえていないようだ。

 この状況、絆にはどう見えるか。

 ぼくが美女と美少女に挟まれている。

「ひ、ひっくん、何やってんの? 何で藍ちゃんと知らないお姉さんに抱き付かれてるの?」

 当たりみたいだ。

「ま、待て、絆! 話を聞け、せめて言い訳させてくれ!」

「言い訳って何さ!」

 走り出そうとしたが一時停止して、買い物袋を由紀さんに渡す。そして、涙目になってぼくを指差す。

「ひっくんの浮気者!」

 そして、ダーと走り出す。ヒューと走り去った。

「うわあ、最悪だ」

 睡眠薬の件、まだ許してくれてないのに。

 どうしよう。

「どうしようってより、どうしてくれんですか、みいらさん」

「あたしは知らないわよ。あ、つまり、今のがひーちゃん、もとい飛翔君の彼女ね?」

 意味深な訂正があった。

「そうですけど」

「んー。もうちょっとどうにかならなかったの?」

「どういう意味ですか」

「月並みな子だったわね。初夏のどこがあんな子に負けているって言うの。さあ、言ってご覧なさい」

「何故に初夏の名前が出たのかも絆があんな子呼ばわりされるのも理解出来ませんが、離してください!」

「離しても構わないけど、引き換えに藍ちゃんをくれない?」

「やらねえよ!」

 本気で怒鳴ったら、みいらさんが離してくれた。けど本気過ぎて、変な空気になった。

「い、いつもの飛翔さんじゃない」

「先輩、何故にそんなマジに」

「え? もしかして飛翔君、頭にロが付く趣味に目覚めたの?」

「変な誤解すんな!」

 何でそうなんだ。少女の所有権譲渡を拒否したくらいで。いや、むしろ当然?

「うけけけ」

 あと、藍、何故により強く背中に抱き付くよ。何が嬉しいんだ。

「うわあ、癒されるわー」

 みいらさんが悶える。知らない間に藍をお持ち帰りされかねないから、藍もみいらさんもよく見ておかないとな。

「あのー、飛翔君」

 入り口で買い物袋を提げたまま立っていた由紀さんが非常に言いにくそうに、口を動かした。

「絆ちゃん、追い掛けた方が良くないですか?」

 あ。忘れてた。

 多分、ぼくが追って来ないことには気付いたろうから、また怒られる。

「全く。女心の分かってない奴だぜ」

「ずわあ! 無黒さん、いつからいたんですか!」

 本気で驚くと、無黒さんの顔が歪む。

「最初からずっといたぜ。隠れてもいないぜ、気配も殺してないぜ」

 無黒さんは目頭を押さえる。涙をこらえているようだった。

「どいつもこいつも……」

 最近、何かあったのかな。

「とりあえず藍ちゃんの可愛さを知れたってことで、今日は良しとしましょうか」

 そして、無黒さんが本格的に傷付いているのに全く慰める素振りを見せないみいらさんって一体……

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