表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

少女が少年を愛そうと決めた理由

「ふざけんな!」

 少年は怒鳴った。

「ふざけんなよ、てめえ何を考えてんだ!」

 少女はその様子を見ていた。

 少女は少年の近くに隠れていた。だが、少年は少女に気付いていなかった。普段なら有り得ないことだった。それほどまでに少年は怒っているのだ。

「それだけの理由でこれだけのことをやったのか? 甘えんな。犯罪者の身内だからって、そんなのが言い訳になるか!」

 今の少年は少女が知っている少年とは違っていた。

「そりゃお前に罪はねえよ。だけどな、これじゃあダメだろう! それじゃあダメなんだよ!」

 違い過ぎていた。

「ぼくが、『ぼく達』がどんな思いで生きていると思ってんだ! 自分の体に流れる血にビクビク怯えながら、自分の心に潜む闇にヒヤヒヤ震えながら、周りの人間に仮初めの自分を見せながら生きていくのが、偽物の自分を見せることでしか生きていけないことが、どれだけ辛いか、どれだけ気持ち悪いか、てめえに想像出来るのか!」

 少女の知る少年は、強く、硬く、雄々しく、格好良いはずだった。

 しかし。

「これが本物の自分だって錯覚したいよ! でもな、ぼく達にそれは許されないんだよ! そんな権利もチャンスもねえんだよ!」

 しかし、今の少年は、弱く、脆く、女々しく、格好悪かった。

「自分がどれだけ恵まれているか、考えたことねえだろうが! 最悪の不幸も知らない癖に、簡単に折れてんじゃねえ!」

 強いと避けていたのに弱くて。

 堅いと断じていたのに脆くて。

「自分が不幸だと思うなら、断崖絶壁から落ちてみろ! 踏みとどまってんじゃねえよ!」

 遠いと感じていたのに、こんなに近くて。

 違うと悟っていたのに、こんなに同じで。

「助かりたいと思うなら、全力で世界と対面しろ!」

 嫌いだと思っていたのに、こんなに好きになった。

「出来る出来ないの問題じゃねえ。望むことすら出来ないなら、お前の命に価値なんてねえんだよ!」

 だから。

「ぼくは全力でお前を否定する」

 この人の傍にいたい。

 この人の隣に行きたい。

 この人に愛して欲しい。

 そう願った。

「ぼくは、ぼくを、『ぼく達』を全力で肯定してやる!」

 少女は生まれて初めて、胸が熱くなった。

「認めてやるし、愛してやる!」

 少女はこれが、“愛”だと知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ