鹿羽研究所
今回はタイトルの場所には行きません。詐欺ですね、すいません。
確信はなかった。
だが、あの屍笞処刑場から脱獄するには作戦や能力だけでは限界がある。畦道の能力だけでは、絶対に不可能がある。
どうしても、優れた『道具』が必要になる。それもとぎっきりのやつが。
例えば、そう。
満礫美術館当主か当主代行、あるいは相談役の作品が。
それに、畦道に面会していた『満礫』はこの人だけだった。
□
「素直に認めるよ。
僕は畦道百足の脱獄に協力した。『道具』を作って、その使い方をレクチャーをするという立ち位置でね。
どんな道具かって?
紙で出来たヤスリだよ。本に挟んでおけば、ただのシオリにしか見えないような、我ながら素晴らしい一品だ。
動機? ないよ、そんなの。僕はただ、脱獄に使えるような道具を作れって依頼が来たから、それに応じただけだよ。
仕事を選ばず名作を作る。僕って、芸術家の鑑じゃないかな?
さっきから自画自賛が過ぎるって? 彼女を『十戒家』当主達に紹介しているような君に、そんなこと言われたくないなあ。てか、あれ本当に彼女なのかい?
ふうん。本当なのか。
てっきり、畦道と共犯者を探す為に、適当な女子に演技させてるのかと思ったけど。
ああ、ごめん。流石に言い過ぎた。
でも無理からぬと理解して欲しいよ、こっちとしては。
君という人間を理解した場合、君が人を愛することなんて、限りなく困難であると判断するしかないんだから。
話が逸れたね。
畦道のことだけど、あれは三ヶ月くらい前だったかな? ある男に頼まれたんだ。脱獄に使えるような道具を作ってくれって。
あの『屍笞』を出し抜こうなんて面白い提案、僕が断る訳ないだろう? 脱獄させる相手があの畦道だってのが驚きだったが、それを含めて面白いと思った。
君も考えているだろうけど、彼は今、どんな気分なんだろうね。
あと、これは君を信頼しての行為なんだよ?
例え脱獄が成功しようと失敗しようと、君がいるなら、畦道の捕獲も僕の弁護も、心配要らないからね。
そんなこと言うと助けない? 分かった分かった。依頼人、つまりは畦道百足脱獄の主犯を売るから勘弁してよ。
いや、口止め料とか貰ってないし。家族以外を庇う理由なんか、一つもないからね。
僕に仕事を寄越したのは----」
□
「ある意味、予想通りだな、全く」
この件が終わったらマッサージに行こう。
このままだと、心労で死ぬ。
「あ、あの、唯原さん」
しいらさんと絆が待つ応接室に行く途中で、案内役という見張りをやっている初夏が、話し掛けてきた。
案内役なのに後ろにいた。いつの間にか追い越したらしい。
「さ、先程の話は……」
「マジだ。畦道百足が脱獄した」
「そう、ですか……」
不意に、初夏の足音が止まった。見れば自分の肩を抱いて、震えていた。
……忘れていたが、今思い出したが、初夏は、畦道百足を知っているんだった。しかも、被害者として。初夏の心には、奴に対するトラウマが、深々と残っているはずだ。
「ちっ……」
うっかりしていた。初夏の前で、こんな話はすべきではなかった。つまんねえミスやっちまった。
顔色が青くなりつつある初夏の頬を挟んでタラコ唇にしてみる。
「ふぎゅ!?」
不意打ちを食らった初夏は、怒りと羞恥からか、顔色を青から赤を変えた。
「心配するな。畦道ならぼくがまた捕まえてやる。意地でもな」
虚勢だけどな。
初夏は顔を真っ赤にしながら、こくこくと頷いた。
ほっぺを解放して、再び歩き出す。そんなぼくの背中に、初夏はこんな質問を投げかけた。
「唯原さん、あの恋人さんとは長いんですか?」
「もうじき一年」
「何故、私達に、黙っていたんですか?」
「しいらさんにも言ったけど、一般人だったんだよ。だから、『十戒家』のことは知られたくなかった」
「……何人かは、ご存知だったようですが」
「『ホームズ』の連中とか五食同盟とかは、どうしてもな」
同じ屋根の下やら同じ町だし。
「じゃあ凪茶も?」
「ああ。言っておくけど、あいつを責めてやらないでくれ。ぼくが黙っておくように頼んだんだ」
「だと思いました」
「ぼくのことより、お前はどうだ。恋人とか好きな男とかいないのか?」
「気になっている方ならいます」
だが、それにしては暗いというか寂しそうな顔をしている。
「しかし、相手には既に交際している女性がいます。なら私は引くしか……」
「馬鹿か、お前」
反射的に暴言を吐いてしまった。
初夏が呆然としている間に、次の言葉を繋げる。
「昔からお前は真面目だった。『十戒家』の中で最もまともな『満礫』の中でも、一番善良だ。でもな、欲しいものを無理してこらえるなよ。これはぼく個人の意見だけど、略奪愛はアリだと思っている」
初夏はしばらく黙っていた。歩きながら反応を窺っていると、
「では唯原……いえ、飛翔さん」
珍しい。ぼくを下の名前で呼ぶなんて。
「私の恋、応援してもらえますか?」
「当たり前だ、と言いたいけど、あんまり期待するな。ぼく、結構おかしいから、他の男子の考えることはよく分からん」
同じおかしい男子でも、七丁目や明時くらいしか通ずる奴がいない。
「そうですか。そういえば、飛翔さん。この髪型、どう思います?」
「さっきも言ったけど、似合ってる。君はロングよりショートの方が良いよ。でも、何で切ったんだ?」
「昨日、つい衝動的に……」
ごまかすようにぎこちなく笑う初夏。女の命を衝動的に切るなよ……。似合ってるから構わないんだけどさ。
□
応接室に戻ったら、にこにこなしいらさんと顔を真っ赤にして俯いた絆に出迎えられた。
「絆、どうした?」
「聞かないで」
にべもなく返答を拒否された。
「しいらさん、絆とどんな話を?」
「女同士の秘密です」
唇に手をやって大人の仕草だった。聞かない方が吉だと判断した。いや、すごく気になるけどね?
「それで、蒐に何かありましたか?」
「聞きたかったことは聞けました。心配は無用です」
「なら良いのですが……。何か問題でも起こしたのでしょうか」
「知らぬが仏とだけ」
しいらさんはそれだけで、改めて事態の深刻さを理解してくれたみたいだ。多くは聞きたかった。
ただ、
「初夏はどんな様子でした?」
と聞いてきた。
「恋しているみたいですよ。相手が誰かは知りませんが」
「ふむ。そうですか」
どうやら知っていたらしい。たぶん、初夏の想い人が誰かも知っているんだろう。
しいらさんなら悪いようにはしないだろうから、それ以上は何も語らなかった。進展があれば勝手に連絡があるようだし。
「これからどうするの?」
満礫美術館から出るなり、絆が質問してきた。
「今日はもう帰ろう。手掛かりは見つけたから」
手掛かりつうか確信。
「あと、今から帰らないと、夕飯に間に合わない。昨日はそのまま『鹿羽』に向かったからコンビニ弁当で済ませたけど、由紀さんの手料理が恋しくなってきた」
「……私はあれを超えないといけないんだよね」
絆がやや引きつった顔で呟く。
まあ難しいと思うが、頑張ってくれ。期待しているから。
さて、近くの山でカブトムシの幼虫狩りをやっている千影さんに迎えの連絡を入れるか。
□
「やあお帰り、飛翔君に、絆ちゃんに、千影さん」
出迎えてくれたのは花さんだった。時刻は六時半。仕事を終えた男の顔をして、新聞を読んでいる。
キッチンでは由紀さんが鼻歌を歌いながら料理をしていた。ぼくらの帰宅に気付いていないが、いつものことだ。今日はどうやら肉じゃが。察するに、藍のリクエストだな。
「で? どうだった、絆ちゃん。飛翔君の生きている、裏世界を見た感想は? 聞いた話だと、『壱圏』の当主に逢ったり『屍笞』の監獄を歩いたりしたみたいじゃないか」
新聞から絆に視線を移す花さん。ぼくや千影さんも、絆を見る。
「結構ショックだったんじゃない? あんなものが、この世界にあるなんて」
「……大丈夫です」
そう言う奴は大抵、大丈夫じゃないんだよ、絆。
「大丈夫ならいいけどね」
分かってて言ってるよな、この人。文句の一つでも言おうとしたら、花さんの方からぼくに話し掛けてきた。
「そうそう。飛翔君にお客が来ているんだよ」
「客ですか?」
「今は凪茶や藍と一緒に、買い物に行ってもらってる」
客を買い物に行かせるって。この人もいい性格してるよなあ。
でも誰だ?
花さんも知っている相手のようだし、同行しているということは、藍や凪茶とも顔なじみ。加えて、買い物に行ってくれるような性格?
主に最後のがヒントだな。うーむ。余計に分からなくなってきたぞ……。
とか考えているうちに、藍達が帰ってきた。
「ただいまー。あ、ひっしょん達お帰り」
「お勤めご苦労様でした、飛翔さん」
「出所後みたいに言うな」
昨日、リアル監獄にいたからか、何でか嫌な感じだった。
「花さん、ほい。頼まれてたビールとおつまみ」
藍は発泡酒とピーナッツの入った袋を机に置く。
「ありがとさん。酒は、この間の鍋パーティー以来かな」
「まだ一週間も経ってませんね」
それなのに酒。酒に強いがあまり飲まない花さん。ということは、これは来客用か? あるいは一緒に飲むための。
「あの、客って、結局誰なんです?」
「僕だぜ」
「ずお!」
全く気付かなかったが、そこには化学の教師を彷彿させる白衣の男がいた。
存在感が希薄というか影が薄いというか地味というか。自己主張皆無とでも言えば良いのか。
とにかく、ぱっとしない男がいた。
僕もよく知っている男だった。
「そんなに驚くなよ、飛翔。いつものことだけど、傷つくぜ?」
彼は苦笑いをする。
こんな地味な彼こそが、『十戒家』第六部署『鹿羽』本家当主にして、裏世界の研究の第一人者、鹿羽無黒。
此度の畦道百足脱獄事件の重要容疑者の一人である。
□
花さんと無黒さんは仲が良い。同年代ということもあるが、おそらく、どちらも癖のある女性を恋人にしているから、通じ合うものがあるのだろう。
片や引退した殺人鬼、片や現役の科学者だってのに。まあ、ぱっと見では、どちらもそんな風には見えないが。もやしな美容師と地味な化学の教師だ。
そんな訳で、今日は無黒さんを交えての夕食だった。
「お前があれか、飛翔君の恋人か」
何故、突然『鹿羽』の最高責任者が来たかと言えば、理由は簡単で、噂の『唯原飛翔の恋人』を見に来たのだ。
「は、はい」
「なるほど。しかし君も人が悪いぜ、飛翔君。恋人なんか出来たなら、僕やみいらに報告してくれれば良かったのに」
「話したら何かあったんですか?」
「恋愛相談くらいならしてやれたぜ」
「参考にならないですよ、アンタ達みたいなアブノーマルカップルの意見なんか」
「照れるぜ」
「誉めてねえよ」
夕食後、帰宅した傘子さんの提案で、最寄りの銭湯に出掛けた。
大きな湯船に浸かりながら、白衣を脱ぐことで更に存在感の薄くなってきた無黒さんに聞いた。
「無黒さん、一週間くらい前に畦道と面会したらしいですけど、どんな用事だったんですか?」
「あー、あれはあれだぜ。みいらに頼まれて畦道に、奴自身の能力について聞いたんだぜ」
「畦道の能力?」
「何でも、外国で奴に似た能力の子供を見つけたそうだぜ」
「……へえ」
畦道に似た能力、か。
あれはかなりレアな部類のはずだけど。いるもんなのか。
「その子供は、能力を持て余していたそうだぜ。だから、畦道の奴に聞きに、わざわざあの監獄まで行ったんだぜ。畦道、やたら機嫌が良かったみたいで、理由も聞かずにペラペラ喋ってくれて助かったぜ」
脱獄間近で、気が緩んでいたってとこれか。
無黒さんが畦道と面会したのは七番目。三番目に面会したのが蒐さん。
「そういえば、俺以外にも奴に何人か面会してたみたいだぜ? 看守が言っていたような気がするぜ」
「ええ。ぼくも階段からそのことを聞いたら気になりまして、こうして質問した訳なんです」
「物好きばっかりだぜ」
アンタが言うか。
「てかお前さん、恋人のこと黙ってたの、みいらにバレてるぜ?」
「何ですと!?」
驚いてみたけど、当たり前だった。
しいらさんを通して、あの名推理を披露してもらったし、当然知られているはずだ。
「マジ切れだったぜ」
「でしょうね……」
あの人、こういうネタ大好きだからな。自分も恋愛やってる癖に。
「何度もした説明なんですが、絆は一般人ですし、みいらさんにだけ教えるのも……」
むしろあの人にだけは知られたくなかった。遊ばれるのが目に見えているし。
だが、無黒さんは首を横に振った。
「いや、そっちじゃなくて」
どうやら、ぼくに言いたいことが違うようだ。
「そっち? じゃあどっちなんですか」
「だから黙っていたことにじゃなくて、他のことに怒っていんだ、みいらは」
ほ、他のこと?
蒐さんのこととか? それとも、凪茶の方か? まさか、初夏へのセクハラがバレたのか!
「……たぶん想像出来ていないだろうから、言ってやるぜ。みいらが不機嫌だと俺が困るんだぜ」
「お手数掛けます」
あと、迷惑を掛けてます。
「いいか? あいつが怒っているのはな……」
「イッヤホー! 久しぶりの銭湯だっぜー!」
そんな無粋な横槍みたいな、ここが公共の場であることを何一つ弁えていないような大声が、入り口の方から聞こえてきた。
よく知った声だった。馬鹿丸出しなので分かり易かった。
無黒さんも頭を洗っていた花さんもサウナから出たばかりの千影さんも、その他のお客さんも、声のした方角を見る。なんとなく無黒さんと顔を合わせる。
「馬鹿かお前は。うるさいんだよ、馬鹿が。本当に馬鹿だな」
「馬鹿馬鹿言い過ぎじゃないッスか、生徒会長さんよ」
「……無礼」
「ほら、マナーを弁えろよと業火も言っている」
「んだよ、お前まで俺の敵なのかよ。俺には敵しかいないのかよ。畜生、大将がいれば事態は変わるはずなのに」
「関係ないと思うがねえ」
「……同意」
五食同盟マイナス二人だった。マイナスの分は、一人が女性でここは男湯であるから、もう一人が集団行動が苦手であるからだから、この面子はおかしくない。
だが、ここにいるのはおかしい。
馬鹿騒ぎしながら湯船に向かってきた三人と、必然的に目が合う。
「やあやあ、これは鹿羽研究所の鹿羽無黒さんではありませんか」
先頭を歩いている胡散臭い笑顔の道化師が、分かり易くぼくを無視して、無黒さんに挨拶する。「明時じゃねえか。後ろの二人は、部下か何かか?」
「……否定」
「同僚ではあるッスけど、部下ではないッスよ」
相変わらず人望のない道化師だった。
「泣きたい気分だよ」
「気持ちは分かるぜ」
と、大きな研究所の地味な所長。
思う所があるらしい。
「で、結局誰だぜ?」
「知りませんか? 僕、『五食同盟』ってチームを組んでいるですが、そのメンバーですよ」
「麻川塁ッス」
「……鎌倉業火」
「知らないぜ?」
ばっさりだった。
「『五食同盟』は聞いたことあるんだけど、構成員の名前は初めて聞いたぜ。でも、死神の娘がいるのは知っているぜ」
「前夜は何気に有名人ですからね、人じゃないけど」
数少ない純血の死神。
最後の、女の死神。
「その前夜は?」
「そりゃ女湯だよ。もしかして、あっちには『ホームズ』の女性陣がいるのかい?」
「海外で遺跡探している流水さん以外のはな」
「かかかか、か、傘子さんは!?」
「……いるよ」
業火、お前は何故そんなに分かり易いんだ。
「ん? そっちの筋肉君はあの女医さんのことが好きなのか?」
筋肉君って。
確かに、喧嘩屋だけあってたくましい体だけどさ、さっき名乗ったじゃん。
「すす好きだなんて、とんでもない! 憧れているだけです!」
だから分かり易過ぎるぞ、業火。
「なるほどだぜ」
「そういうアンタは誰ッスか?」
さっきの明時の呼び掛けを聞いていなかったのか、この馬鹿は。
塁の馬鹿な質問に、無黒さんはこう答えた。
「ただの科学者だぜ」
□
「何だか、男湯が騒がしいですね」
壁を通しているため内容は聞こえないが、騒がしいのは女湯にも伝わっていた。
「うけけけ。花さんとくろちゃんが喧嘩でもしてんじゃないの?」
「有り得ますね」
「そうなの? 仲良さそうだったけど」
「よく言うじゃん。喧嘩するほど仲が良いって。まあ、あの二人の喧嘩は伴侶の自慢話、つまりノロケなんだけど」
「花さんは由紀さんだけど、無黒さんの恋人はどんな人なの?」
「あたしも逢ったことないから知らなーい。何でか、ひっしょんが逢っちゃダメって」
「何で?」
「知らない方がいいですよ、藍ちゃんも絆さんも」
凪茶の言葉に首を傾げていると、知った顔の少女が女湯に入ってきた。
「ぜんやんじゃん」
「……何でおるん?」
「わたーしの提案でみんなで来たんだよー」
「さいでっか」
男湯にいる同僚達は気付いているのだろうか、あの交渉人もあちらにいるのだろうかと考える前夜。
「ぜんやんや、女同士で背中流さない?」
「ええで。先、藍ちゃんな」
「いえーす」
「ホント、仲良しね」
湯船に浸かっている由紀の顔には、聖母のような微笑みに満ちている。
髪が白い上、どこか浮き世離れした気品がある由紀には、そんな表情がよく似合う。だが、前夜が注目したのは髪でも顔でもなく、もっと下の部分だ。身も蓋もない言い方をすれば、胸。
「……由紀はん」
「何?」
「何食べてそんな立派になったんですか?」
「え? 何が?」
本気で首を傾げる由紀から、前夜は目を逸らした。
「やっぱええです」
「ぜんやん、まだ成長期は終わってないんだから諦めないで」
「ぐす。ありがとな、藍ちゃん」
「あたしもこれから育つ予定だから。お風呂上がりに、牛乳飲もう」
「せやな」
二人はグッと握手した。
ただ、そんな二人の友情に水を差す鬼というか医者が一名。
「医学的観点から言わせてもらうと、牛乳飲んでもバストには関係ない……」
「傘子はん、うっさい!」
「余計なこと言うんじゃないよ、かっさん!」
絆はその様子をなんとも言えない表情で見ていた。
□
「何だろう、女湯でやばいくらいに楽しい会話がされているような気がする。気のせいだろうか」
「気のせいだ、明時」
「そうかなあ」
「お前はどんなセンサーを持ってんだぜ? そういや飛翔。お前、彼女連れてあちこちの本家に挨拶していると聞いたぜ。うちにはいつ来るんだぜ? 茶の用意があるから前もって連絡が欲しいぜ?」
「何でお茶の用意だけで要連絡なんですか。てか、鹿羽研究所には行きませんよ」
「え? 何でだぜ?」
「あんな場所に絆を連れて行ったら、今度こそ発狂しますから」
「『屍笞』は大丈夫って聞いたぜ?」
「あれも、結構ギリギリでしたから」
「そうか。残念だぜ」
「ぼくはそうでもありません」
割と本音だった。
女湯でのくだりはどうかと思いましたが、ライトノベルに同次元の話があったので、まあいいかなあと。
初夏には恋敵として働いてもらいます。下克上の可能性はあります。




