表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬の日、書道教室の君と

作者: 桂要
掲載日:2026/05/25

新連載投稿までの時間稼ぎです。

 雪の降る、寒い寒い冬の日。月は分厚い雪雲に隠れ、周りの街灯が灯っていた。

 そんな夜七時の道を、俺は同じ書道教室に通う桐谷桜きりがやさくらとともに二人で歩く。

 今日も書道教室帰りであった。


「ねぇ宗太そうた! 雪だよ! 雪!」


 そんなふうにはしゃぐ彼女を眺め、無意識にも頬を少し緩ませてしまう。

 咄嗟に、巻いていたマフラーを口元まで引き上げ、隠す。


 そんな俺のことを不思議に思ったのか、桜が下から見上げるように顔を覗いてくる。


「どうしたの? そんなにマフラー上に上げちゃって?」

「……寒いだけだよ」

「……そっか」


 それっきり、会話は止まってしまった。

 いつもならここで、桜が何気なく、自然と話題を提供してくれるのだが……今日は、黙りきっていた。


 どちらが先に口を開くか。そんな駆け引きの末、結局は俺が折れた。


「あー……なんか奢るよ」


 近くにある、自動販売機に目線を向ける。

 桜も気が付いたのか、頷き、小さな声で「ありがとう」と呟くようにお礼を言ってきた。


 そんな仕草にも、またもや頬を緩ませかけてしまう。

 頬の筋肉を鍛え治さなくてはならないな。でないと、桜にいずれ勘づかれてしまう。


「何飲む?」

「うーんっとね……ホットココアがいい……」

「はいよ」


 財布を取り出し、百円玉を二枚、自販機の小銭入口へと放り込む。

 ホットココアを購入し、桜へと渡す。

 

 ホットココアを受け取った桜は、冷え切った手を温めるが如く、缶を両手でギュッと握っていた。

 そんな桜を横目に、もう一度小銭を自販機に入れ、同じホットココアを購入する。

 

 近くの駐車場の柵に二人並んで寄りかかり、缶のプルタブを開く。

 少し路地の方ということもあり、人も車も全く無く、俺と桜の二人きりであった。


「そういや、来週書道展だな」


 書道展。

 二週間前に、俺と桜の書いた作品が入賞し、明日から飾られるのだ。


「そうだね〜……いや〜まさか二人とも入賞するなんてね」

「だよな。まさかそうなるとは思ってなかった」


 沈黙が落ちる。

 日はとっくに傾き、桜は街灯と月光の光にほんのりと照らされていた。

 静まり返ったこの空間は、妙に静かで、いつもなら感じてしまう気まずさというものがなかった。


「なぁ、桜……そのさ……」


 桜の方を向き、一度深呼吸をしてからそういう。

 なかなか、もう一言が言い出せない。


 けれど、ここで言わなきゃ、一生言えないだろう。休日に桜と会う口実なんて、これ以外思いつかない。この機会を絶対に逃せない。


 ここで言わないとまたいつものように、学校で会って、挨拶をして、ちょっと話して、書道教室でなんとも言えない距離感で作品を書くだけだ。

 それからいい加減脱却したい。この関係にキリをつけて、次のステップに進まなくては。


 一度、深呼吸をする。吐く息は白く、そのまま冷たい空気へと溶けていった。

 自分は今どんな顔をしているのだろうか。きっと、緊張と恥ずかしさで真っ赤にでもなっているのだろうか。

 そして、桜から目線を逸らして口を開く。


「桜……一緒に、書道展……行かないか?」


 言えた。やっと言えた。

 中学入学で桜と出会ってから一年、桜を目で追ってしまっているというのに気がついてから半年。

 けれど、これで最後じゃない。本番は、書道展だ。


「……うん……いいよ。一緒に行こっか、書道展」


 驚き、桜の顔を見る。

 その顔は、まるでりんごのように、赤く染まっていた。そして、そんな桜はとても愛らしかった。


気が向いたらこの続きを書くかもです。


《近日公開》深界洞窟戦線 〜地下の巨大洞窟で、少年少女は命を換金する〜

https://ncode.syosetu.com/n2486mf/


こちらもどうぞ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ