プロローグ
包みを開くと女が入っていた。きれいだと思った。
恐怖は感じなかった。なんとなく予想はついていたからだ。
閉塞感。
まず感じたのはそれだった。目を開けているはずなのに真っ暗で、体は縛り付けられているかのように動きづらい。ひんやりとした物体が顔を埋め尽くす。
「起きてください。もう十時半です。予定起床時刻からニ時間半ほどオーバーです。」
思い切り圧迫される。だんだんと息苦しくなり、我慢できずに物体を思い切り突き飛ばす。ドスンと鈍い音が鳴って一瞬驚くが、すぐにそんな必要ないと気づく。頑丈さだけは一流な彼女が立ち上がり、何事も無いかのように口を開く。
「おはようございます、さっちゃん。」
「アズ、おはようじゃない。何でベッドにいるの。」
「どうしても起きなかったので潜り込んでみました。」
「は?理屈通ってないけど?」
「そうでしょうか? しかし、あれほど効果覿面だとは思いもしませんでした。」
「効果覿面?」
「息が出来なくなれば絶対に起きますよね。」
「何それ、二度としないで。……ていうか、勝手に起こさなくていいから。自分で起きられる。」
「しかし、予定起床時刻八時のアラームでは微動だにしませんでしたよ。」
「うるさい。大体さ、起こすなら起こすで二時間半くらい何してたの?このポンコツ。」
「申し訳ございません。人を抱きしめるという感覚は初めてのことであったためか、少々プログラムに異変が生じてしまい、その解決に時間がかかってしまいました。」
「なにそれ、大丈夫なの?体壊しても私は直せないから。」
「はい。活動に支障は見受けられなかったので問題ないです。心配してくださりありがとうございます。」
「別に心配なんてしてない。ただでさえポンコツなのにこれ以上酷くなられても困るから聞いただけ。」
私はプイっとそっぽを向き、部屋を後にしようとドアノブに手をかける。ひんやりとした感覚が手に伝わるが、アズに感じたものとは違う。
「本日のご予定は?」
「別に何にも。課題をちょっとやるくらい。」
「そうですか。わたくしに出来ることは?」
「無いし、黙ってて。」
「それは残念です。ところで、大学への出席率が先月より20%ほど低下しているようですが。」
「命令聞けっての……このポンコツ木偶の坊。」
彼女といるとペースが乱される。それは出会った時から何も変わらない。そう、1ヶ月前からずっと……。




