表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/67

第29話 瓦礫の中の空白

──世界が、静かだった。


どれほど時間が経ったのだろう。

空はまだ曇り、焼け焦げた王城からは薄い煙が立ちのぼっている。

瓦礫の中で、崩れた石壁と折れた柱が無造作に散らばり、

焦げた布の匂いと鉄の臭気が風に流れていった。


その中に、アマリアの声が響いた。

「……勇者さま! どこですか、勇者さま!」


彼女の白いローブはすすで汚れ、手は血に滲んでいた。

それでも、祈るように瓦礫をどけ、呼び続ける。


ミディアは肩をすくめながらも、無言で魔法の光を放ち、捜索を続けていた。

ジークは黙ったまま、剣の柄を強く握っていた。


◇ ◇ ◇


「……王は?」

ジークが低く問う。


「ご無事です。けれど……重傷で」アマリアの声が震える。

「玉座も、すべて……」


ミディアが息を吐く。

「王城は崩壊寸前。 あの“浄火の陣”、威力が想像を超えていましたわね」


「勇者は、奴と相打ちになったのか?」

「そう見えますわね」ミディアが淡々と答える。

「仮面の主の姿も消えていましたし」


アマリアは震える声で呟いた。

「……そんな。そんなはず、ありません。勇者さまが……」


◇ ◇ ◇


彼女は両手を組み、瓦礫の山の前で膝をついた。

「神よ……どうかお導きください。彼の魂がまだこの地にあるなら――」


祈りの光がゆらりと揺れた。

その瞬間、遠くの崩れた壁の隙間で、何かがきらめいた。


「……!」アマリアが駆け寄る。

そこにあったのは、焦げた地面に突き刺さった一本の剣。

柄の部分に、青い火花が微かに瞬いていた。


「これ……勇者さまの……!」


◇ ◇ ◇


ジークが剣を手に取り、まじまじと見つめる。

「……熱い。まだ、力が残ってる」


ミディアが目を細める。

「魔力の残留。彼自身の“意思”が、剣に宿っているのかもしれませんわね」


アマリアは涙を拭いながら、剣を両手で抱いた。

「勇者さま……絶対に、戻ってきてください」


ジークは拳を握りしめる。

「戻るまで、俺たちは戦い続ける。

 王城は壊れたが、国はまだ死んじゃいない」


◇ ◇ ◇


その頃――。


崩れた王城の地下、ひとつの影がゆっくりと目を開けていた。

視界はまだ霞み、耳鳴りが止まらない。


……ここは、どこだ?


焼け焦げた壁、崩れた天井。

その中で、かすかに青い火花が漂っていた。


僕は息を吸い込み、笑った。


「……どうやら、まだ幕は下りてないらしい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ