第24話 仮面の集会
王城の執務棟。
扉の向こうで仮面を手にする文官は、誰もいないのを確認すると、そっと外套に隠した。
そして忍ぶように廊下を歩き出す。
僕は距離を取りながら、その背を追った。
夜の城内は不気味なほど静かで、蝋燭の炎が揺れるたびに影が長く伸びた。
──仮面はすでに、王の側近にまで浸食している。
心臓が高鳴る。
だがそれは恐怖ではなく、昂揚だった。
「裏舞台の扉が、いま開く」
◇ ◇ ◇
文官は使用人用の階段を下り、城の地下へと消えた。
僕も足音を殺して後を追う。
石造りの回廊を抜けると、地下倉庫へ続く扉の前に灯りが漏れていた。
微かな声が混じり合う。
「……玉座はもはや長くは持たぬ」
「王が倒れれば、我らが新たな秩序を築く」
「勇者をどうする?」
「観客に立たせるのか、それとも……主役に据えるのか」
◇ ◇ ◇
僕は息を潜め、隙間から覗いた。
地下倉庫の中には十数人の人影。
文官、騎士、侍従――立場も階級も違う者たちが、皆そろって白い仮面を顔にかけていた。
火の灯りに照らされ、同じ仮面がずらりと並ぶ光景は異様な迫力を放っていた。
その中央に、一際豪奢な仮面をつけた人物が立っている。
低く響く声が、石壁に反響した。
「混乱は広がり、記録は消えた。次は――王自らを引きずり下ろす」
◇ ◇ ◇
その言葉に、集まった仮面の者たちが一斉に頷く。
「玉座を倒せ!」
「新たな舞台を築け!」
僕の胸で、青い火花が弾けた。
──これだ。
英雄を持ち上げる声とはまるで違う、絶望と破壊を希求する響き。
その渦中にこそ、僕が求める“黒幕”の舞台がある。
◇ ◇ ◇
「勇者はどうする?」誰かが問う。
豪奢な仮面の主が答える。
「利用する。あるいは、殺す。どちらに転んでも舞台は盛り上がる」
僕は思わず笑いを漏らしそうになった。
「……観客に見せるなら、もっと面白い結末を用意してやるさ」
◇ ◇ ◇
物音を立てぬよう後ずさりし、闇へ身を隠す。
仲間に報せる? 王に伝える?
いや、そんなことはまだしない。
これは舞台の序幕にすぎない。
真の幕が上がる瞬間を、この目で見届けなければ。




