表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/67

第21話 仮面の囁き

暴動は表面上、鎮まった。

人々は勇者の言葉にすがり、広場は一時的な静けさを取り戻した。

だが、王都の裏路地や酒場では、別のざわめきが広がり続けていた。


「王家は何もしてくれない」

「貴族どもが毒を流したんだ」

「いっそ誰かが新しい秩序を作ってくれれば……」


──不信と怒り。

それはまるで油のように町中に撒かれ、いつ火がついても燃え上がる危うさを孕んでいた。


◇ ◇ ◇


その夜。

王城に戻った僕らは謁見の間に呼び出された。

王は玉座に腰掛け、憔悴した顔で言う。

「勇者よ……民を落ち着かせてくれたこと、感謝する。だが王都は今、限界に近い。

 黒幕を暴かなければ、国は民に呑み込まれるだろう」


ジークが剣に手を置き、強く頷く。

「陛下、必ず俺たちが奴らを討ちます」


「……祈りましょう。神が必ず導いてくださるはずです」アマリアは両手を組み、目を閉じる。


ミディアは横で小さく笑った。

「祈りよりも、現実的な策が必要ですわね」


僕は玉座を見上げながら、心の奥で別の笑みを浮かべていた。

──仮面の主たちの狙いは、この玉座。

王の姿は、まさに舞台の頂点に立つ役者そのもの。


◇ ◇ ◇


謁見を終えて部屋に戻った時だった。

コツン、と小石が窓枠に当たる音がした。

不審に思って窓を開けると、外の窓台に小石が置かれている。

その表面には赤い墨で描かれた印──円に斜線。仮面の合図だった。


「勇者よ」低い声が闇から響いた。

「王都の混乱を収めるのは容易い。我らに加われば、すぐに民は新しい秩序を受け入れるだろう」


僕は窓辺に立ち、闇の向こうを見つめた。

そこには人影の輪郭がかすかに浮かんでいる。

白い仮面が月明かりに光り、嗤った。


「だが、王を守るなら──やがてお前は民の敵となる」


◇ ◇ ◇


背後でジークが剣に手をかける。

「勇者、聞くな! こいつらの言葉は毒そのものだ!」


「……でも」アマリアは小さく呟いた。

「人々はすでに、王や貴族を信じていません。もし……仮面の言葉に従う者が増えたら……」


ミディアは目を細めて僕を見た。

「さて、勇者ちゃん。あなたはどちらの舞台に立つおつもり?」


◇ ◇ ◇


僕は仲間たちの声を背に、仮面の囁きに応じるように笑った。

「民の期待も、王の信頼も──どちらも悪くない舞台装置だ。

 けれど、幕を操るのは……黒幕だけだ」


白い仮面は何も言わず、ただ静かに頷くと、闇の中に消えていった。


胸の奥で青い火花が爆ぜる。

──英雄か、反逆者か。

観客が選ぶ役割の狭間で、僕はますます黒幕の座に近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ