第六話：幼馴染の想い、気づいてた？
午後の授業は、微妙で気まずい雰囲気の中で始まった。
黒谷碩也は席に座っているだけで、まるで針の筵のようだった。
彼は栗子の方を見ないようにしていたが、視界の端で、彼女のいくつかの小さな動きを捉えてしまう。
例えば、何気ないふりをして顔を向け、すぐに彼を睨みつける。頬はぷっくりと膨らみ、まるで怒った小さなフグのようだ。
また、彼が黒板を見ていると、背中に焼けつくような（あるいは怒りに満ちた？）視線を感じる。
だが、彼が実際に振り返ると、彼女はすぐに顔を伏せ、真面目に本を読むふりをする。わずかに赤くなった耳たぶだけが、彼女が決して「平気」ではないことを物語っていた。
（こいつ……まだ怒ってんな……）
碩也は心の中でため息をついた。
それもそうか。あんなことがあったのだ……誰だって怒るだろう。ましてや、最後に自分が、あんな馬鹿な質問をしてしまったのだから。
手のひらには、まだあの衝撃的な柔らかな感触が残っているかのようだ。温かく、滑らかで、弾力があって……。
（やめろ！ やめろ！）
碩也は勢いよく頭を振り、あの甘美で危険な記憶を脳内から追い出そうとした。
しかし、抑えようとすればするほど、あの感覚的な記憶は鮮明になる。
そして、栗子の最後の、恥じらいと怒り、そして少しの混乱が入り混じった表情……。
（彼女は、一体……どう思ってるんだ……）
混乱した感情が、絡みつく蔦のように彼の思考を縛り付け、授業に全く集中できなかった。
先生が教壇で複雑な古文の文法を説明しているが、彼にとってはまるで呪文のように聞こえた。
窓の外の蝉の声も、クラスメイトがページをめくる音も、異常に遠くに感じられた。
彼はまるで、魂が体から抜け出した傍観者のように、教室の上空を漂い、上の空で困惑した表情の自分自身を見下ろしているような気分だった。
＊
午後の体育の授業は、男子たちが大好きなバスケットボールだった。
灼熱の太陽がコートを照りつけ、空気中には汗と青春のホルモンの匂いが漂っている。
碩也、渡辺光、宮本良俊は同じチームになり、３対３の練習試合を行っていた。
「おい！ 碩也！ パス！」渡辺光がドリブルで突破しながら、スリーポイントラインの外でぼーっとしている碩也に向かって叫んだ。
「あ？ おう……」碩也は半拍遅れて反応し、無意識に手を伸ばしたが、集中していなかったせいで、ボールは彼の指に直接当たり、手から弾き飛ばされてしまった。
「何やってんだよ、お前！」渡辺がボールを拾いに駆け寄り、不満げに文句を言った。「今日どうしたんだよ？ 上の空じゃねえか！ 攻撃も消極的だし、ディフェンスもザルだし、まるで棒立ちだぞ！」
「悪い……」碩也はぶつけた指をさすりながら、どうしようもなく言った。確かに彼は調子が悪かった。
「なあ、お前さ」渡辺が肘で彼をつつき、ゴシップ好きな表情を浮かべた。「またどっかの女にフラれたのか？」
「は？」碩也は意味がわからなかった。
「おいおい、失恋のプロはお前だろ、光」隣の宮本良俊が眼鏡を押し上げ、容赦なくツッコミを入れた。
「うるせえよ、良俊！」渡辺は痛いところを突かれたのか、すぐに反論した。「俺はまだ真実の愛を探してる途中なんだよ！ 戦略的撤退ってやつ、わかるか！」
「はいはい。お前の先週の『真実の愛』は、確か三日も持たなかったよな？」宮本はさらに追い打ちをかけた。
「そ、それは事故だ！ 性格が合わなかったんだよ！」渡辺は顔を赤くして言い返した。
この二人がいつものように口喧嘩をしているのを見て、碩也の気分も少しだけ和らいだ。
しかし、渡辺の次の一言が、彼の神経を瞬間的に張り詰めさせた。
「そういえばさ」渡辺は何かを思い出したように顎を撫で、少し離れた場所で女子たちとバレーボールの練習をしている栗子に視線を向けた。「原田さんって……彼氏いるのか？」
碩也の心臓が、ドクンと重く沈んだ。まるで何かに鷲掴みにされたかのように。
彼は、ほとんど反射的に答えていた。「いない」
その声は、彼自身が予想したよりも速く、そして……確信に満ちていた。
「お？ マジでいない？」渡辺の目が輝き、すぐに興味津々になった。彼は碩也の肩に腕を回し、兄弟分のように顔を近づけ、声を潜めて言った。「じゃあさ……どうだ？ 兄弟、頼むよ。彼女、俺に紹介してくれよ」
碩也の体が、瞬間的に硬直した。
「ほら見ろよ」渡辺は碩也の異変には全く気づかず、栗子の「長所」を滔々と語り始めた。「原田さんって、性格明るいし、可愛いし、スタイルもいいし……ゴホン、いや、運動神経がいいってことな！ それに、お前の幼馴染だろ？ よく知ってる相手だし、絶対いい子だよ！ どうだどうだ？ 兄弟を助けてくれよ！」
渡辺の口調は熱意と期待に満ちていた。彼にとっては、これは友達同士の、ごく普通の頼み事なのだろう。
碩也は光の性格を知っている。大雑把で、悪気はなく、可愛い子を見れば追いかけたくなる。失敗してもすぐに立ち直るタイプだ。
しかし……。
なぜだろう。光が、そんな当たり前のような口調で、栗子の「長所」を語り、自分に「紹介しろ」と言っているのを聞いて……。
言葉にできない、苛立ち、怒り、そして強烈な不快感が入り混じった、名状しがたい炎が、彼の心の底から、猛烈に燃え上がってきた！
まるで、自分が大切にしている宝物を、誰かに無遠慮に値踏みされ、欲しがられているかのようだ。
（なんで……）
（栗子は、お前が気軽に評価していいような子じゃない……）
（お前に紹介？ 考えるな！）
そんな考えが、まるで手綱の外れた馬のように、彼の頭の中を駆け巡った。
彼は、ほとんど全身の力を使って、殴りかかりたい衝動を抑えつけた。
「…………」
碩也は勢いよく肩を振り、渡辺が彼にかけていた腕を振り払った。
その動きはあまりにも大きく、力強かったため、渡辺も一瞬呆気に取られた。
「おい、碩也、お前……」
渡辺の言葉は、碩也の次の表情と眼差しによって、完全に遮られた。
碩也は振り返り、渡辺を見た。
運動中のため、彼は眼鏡をかけていない。普段はレンズによって和らげられている黒い瞳が、今は何の遮蔽もなく、まるで底なしの深い泉のように、鋭く、冷たく、そして人の心を凍らせるような威圧感を放っていた。
彼の顔には何の表情もなく、顎のラインは硬く引き締められ、全身から、かつてないほどの、ほとんど「凶暴」とも言える冷徹なオーラが発散されていた。
それは、渡辺光と宮本良俊、この長年の親友でさえ、一度も見たことのない表情だった。
「断る」
碩也の声は低かったが、疑う余地のない冷たさと決意を帯びていた。
「栗子をお前に紹介するつもりはないし、お前の頼みを聞く気もない」
「…………」渡辺は完全に呆然とし、口を開けたまま、まるで突然別人になったかのような友人を見て、一言も発することができなかった。彼は背筋に冷たいものを感じさえした。
「じょ、冗談だよ！ 冗談！」最初に我に返ったのは、意外にも渡辺だった。彼は慌てて手を振り、この凍りついた空気を和らげようとした。「ただ言ってみただけだって！ 場を盛り上げようと思ってさ！ 本気にすんなよ、な！ はは……」
彼の笑い声は乾いていて、ぎこちなかった。
「あ、あの……飲み物買ってくる！ そう、飲み物！ 俺のおごりだ、お詫びに！」そう言うと、渡辺はまるで逃げるように、素早くコート脇の自動販売機へと向かった。
碩也と宮本良俊だけが、その場に残された。
碩也は依然としてあの冷徹な表情を保ち、先ほど無理やり抑え込んだ感情のせいで、胸がわずかに上下していた。
一方、隣の宮本良俊は、黙って鼻筋の眼鏡を押し上げた。レンズの奥の視線が、碩也の硬い横顔をちらりと見て、それから遠くで女子たちと笑い合っている栗子に目をやり、口元に、気づかれないほどの、意味深な笑みを浮かべた。
（ふふ……これは、面白くなってきたじゃないか……）
＊
コートの反対側。
栗子は数人の女子クラスメイトと一緒に、バレーボールのアンダーハンドパスの練習をしていた。
しかし、彼女の心は、明らかにボールの上にはなかった。
彼女の視線は、いつも無意識のうちに、バスケットボールコートの、あの見慣れた姿へと引き寄せられてしまう。
さっき……何があったんだろう？
光くんが、すごく興奮した様子でセキヤと何か話していて、セキヤの肩に手を置いていた。
そしたら……セキヤが突然、光くんの手を振り払った？
そして……彼女は見てしまった。
セキヤが振り返った時の、あの……眼鏡をしていない、冷たい横顔を。
普段の、眼鏡をかけていて、どこか穏やか（というか、普通）に見える彼とは、全く違う。
あの鋭い眼差し、固く結ばれた唇、そしてまるで人を寄せ付けないような冷たいオーラ……。
確かに、ちょっと怖くて、近寄りがたい雰囲気だけど……。
なのに……。
なぜ……。
栗子は自分の頬がまた熱くなり始め、心臓がまるで子ウサギを抱えているかのように、ドキドキと激しく鳴り、胸が痛くなるのを感じた。
（こ、恋……の、ドキドキ……？）
「ばんっ！」
一つのバレーボールが、まっすぐに彼女の頭に命中した。
「いったぁ！」栗子は悲鳴を上げ、頭を押さえた。
「栗子！ 大丈夫！？」隣にいたショートヘアの女子、彼女の親友の一人でもある佐々木さんが、慌てて駆け寄ってきた。「またぼーっとしてたでしょ？」
「う、ううん、なんでもない……」栗子はぶつけられた場所をさすりながら、慌てて首を振った。
「なんでもないってことないでしょ？ さっきからずっとバスケコートの方見てるじゃん！」もう一人のツインテールの友達がツッコミを入れた。「魂、持ってかれちゃってるよ！」
「そ、そんなことないって！」栗子は顔を赤くして反論したが、声には力がなかった。
「まだ言う？」佐々木さんが彼女に顔を近づけ、目配せしながら小声で言った。「黒谷くんと、最近すっごく仲良いじゃない～。お昼もずっと一緒に食べてるし。正直に言いなさいよ、あんたたち、もしかして……こっそり付き合ってるの？」
「はぁ！？ つ、付き合ってなんかない！！」栗子はまるで尻尾を踏まれた猫のように、瞬間的に毛を逆立て、必死に手を振って否定した。「私たちはただの……ただの、普通の幼馴染だってば！」
「普通の幼馴染が毎日一緒にお弁当食べるの？ 普通の幼馴染でそんなに顔赤くなるの？」ツインテールの女子は明らかに信じておらず、疑いの目で彼女を上から下まで見た。
「本当に違うってば！」栗子は地団駄を踏みそうになったが、説明すればするほど、顔の赤みは増していく。
彼女のそんな慌てふためく様子を見て、周りの女子たちは皆、納得したような笑みを浮かべた。
「でもさ、正直」それまであまり話していなかった、比較的おとなしそうな女子が突然口を開いた。「黒谷くんって、眼鏡してないと、よく見たら結構カッコいいよね。なんかクールな感じで」
おとなしい女子の言葉は、まるで湖に投げ込まれた小石のように、瞬間的に女子たちの小さな輪の中にさざ波を立てた。
「え？ そうなの？ 全然気づかなかった」
「言われてみればそうかも！ 普段眼鏡してると普通なのに、まさか……」
「そういえば、成績もいいし、運動もできる方だよね？ ただ普段目立たないだけで」
「もしかして……もう告白されたりしてたりして？」
女子たちはキャッキャと盛り上がり始めた。
そして栗子は、おとなしい女子の「結構カッコいいよね」という言葉と、最後の「告白されたりしてたりして？」という言葉を聞いた時、それまで慌てていた気持ちが、突然何かで塞がれたように、少し……重苦しくなった。
さっき、碩也の冷たい表情を見て加速した心臓の鼓動も、なんだか冷めていくような気がした。
（セキヤが……カッコいい？）
（告白……？）
わけのわからない、彼女自身にも説明できない感情が、静かに心の底に広がっていく。少し酸っぱくて、少し苦い。
「そ、そんなわけないじゃない！」まるで心の中のその奇妙な感覚を追い払うかのように、栗子は突然声を上げ、どこか自信なさげに反論した。
彼女は必死にぎこちない笑顔を作り、できるだけ軽い口調で言おうとした。
「セキヤなんて、あんなに『怖い』顔してるし、性格も悪いし、すっごく鈍感だし！ そんな奴のこと、好きになる子なんているわけないじゃない！ はは……」
彼女の笑い声は乾いていて、自分でも説得力がないと感じるほどだった。
周りの女子たちは互いに目配せし、「まだ強がっちゃって」という表情を浮かべたが、それ以上追求することはなかった。
ただ栗子だけが知っていた。あの「性格も悪いし」という言葉を口にした時、彼女の心が、ちくりと、小さく痛んだことを。
(第六話 完)
この小説の作者は、日本のライトノベルやアニメが大好きな中国の大学生です。この作品は純粋な個人の趣味で書かれており、あくまで娯楽目的です。
作者は日本での生活経験がなく、作中には文化の違いや日本らしさに欠ける部分があるかもしれません。その点、どうかご理解ください。
また、この小説は中国語で執筆された後、AI翻訳ソフトを使って日本語に訳されているため、誤訳や不自然な表現が含まれている可能性があります。申し訳ありません！
最後に、どうか楽しんで読んでいただければ幸いです！
