第四話：今日の弁当……なんか、味、違くない？
授業開始のチャイムが、いつものように時間通りに鳴り響き、教室の喧騒を瞬時に凍らせた。
先生が教室に入ってきて、退屈な数学の公式を説明し始める。チョークが黒板の上を滑り、単調な「カリカリ」という音を立てた。
黒谷碩也は上の空で教科書をめくっていたが、その視線は無意識のうちに、斜め前の席へと吸い寄せられていた。
原田栗子は背筋をぴんと伸ばして座り、両手を膝の上に置き、真面目に授業を聞いている優等生のような姿を見せている。
しかし……。
少し注意深く観察すれば、彼女の微かな不自然さに気づくことができた。
彼女の頬は、先ほどからずっと、熟した桃のような淡いピンク色を保っている。
彼女の視線は、必死に黒板を追っているものの、時折、制御不能になったように揺らぎ、こっそりと……どこかの方向を盗み見ている？
彼女の指は、無意識に丸められ、制服のスカートの生地をそっと握りしめている。
（こいつ……一体どうしちまったんだ……）
碩也は頭痛を覚えた。
眼鏡をかけ忘れただけじゃないか？ そんなに大げさに反応することか？
確かに……学校で眼鏡を外しているのは、かなり久しぶりだ。レンズ越しに視線が和らぎ、どこか平凡で目立たないいつもの自分と比べると、今のこの顔は……もしかしたら、少し「鋭く」見えているのかもしれない？
だが、だからといって、さっきからずっとこんな「オーバーヒート保護」状態を維持するほどのことか？
まさか、あの忌々しい「歓喜の神」の「祝福」は、自分に彼女への強烈な生理反応を引き起こすだけでなく、逆に、彼女にも自分に対して……？
いやいやいや、そこまで馬鹿げた話はないはずだ。
きっと考えすぎだ。
彼女はおそらくただ……うん、寝不足なのか？ あるいは単純に慣れないだけ？
碩也は自分に言い聞かせようとしたが、心の中の微妙で、言葉にし難い感覚は、まるで小さな虫のように、絶えず這い回っていた。
彼自身も、全身が落ち着かない感じがしていた。
あの薄いレンズという「バリア」がないと、自分の視線がなんだか直接的すぎるような気がして、まるで何かを貫通してしまうかのようだ。周りのクラスメイトから時折向けられる好奇の視線も、彼を少し居心地悪くさせた。
（クソッ……次からは絶対に忘れないようにしないと……）
なんとか午前中の最後の授業が終わり、昼休みのチャイムがまるで天からの救いの声のように鳴り響いた。
教室は瞬く間に活気を取り戻した。
「あー、腹減ったー！ 食堂行こうぜ！」
「今日は唐揚げ定食にしよーっと！」
「おい、宿題見せろって！」
様々な声が飛び交い、青春の活気に満ちている。
碩也は引き出しから弁当箱を取り出し、いつものように静かな場所を探して昼食を済ませようとした。
その時……。
「ねーねー、黒谷くーん？」
少し甘えた、それでいてどこか軽薄な声が前から聞こえてきた。
碩也が顔を上げると、彼の前の席の女子生徒――亜麻色の髪を染め、ばっちりメイクを施した、典型的なギャル風のクラスメイト、高橋紗伊が、体を捻ってこちらを向き、片手で頬杖をつきながら、興味深そうに彼を見ていた。
「ん？ 何か用かな、高橋さん？」碩也は礼儀正しく応えた。彼はこの女子生徒とはあまり親しくなく、普段ほとんど接点がない。
「別にぃ～？」高橋さんは彼にウィンクし、キラキラ光るリップグロスを塗った唇をわずかに持ち上げた。「ただ、黒谷くん、眼鏡してないと、結構イケメンじゃん？って思って～。普段と全然雰囲気違うし、ちょっと……クール系？」
「は？」碩也は呆気に取られた。
イケメン？ クール系？
自分のことか？
彼は一瞬反応できず、わけがわからないといった表情で相手を見た。
高橋さんは、彼のそんな少し間の抜けた表情がおかしかったのか、「くすくす」と笑い声を漏らした。
しかし、その時――。
「セーーーキーーーヤー――！」
ぷんぷんに怒った、明らかに不満そうな声が、すぐ隣から飛んできた。
碩也も高橋さんも驚いて、声のした方を見た。
そこには、いつの間にか原田栗子が彼の机の横に立っていた。両手を腰に当て、頬をぷっくりと膨らませ、まるで毛を逆立てた子猫のように、鋭い視線で……高橋さんを睨みつけている？
「行くよ！ 屋上でご飯！」
栗子は有無を言わさず、碩也の手首をぐいっと掴むと、力ずくで彼を席から引きずり起こした。
「え？ ちょっ……」碩也は全く状況が飲み込めないまま、彼女に引っ張られて教室の出口へと向かった。
「じゃあね～、黒谷くーん」高橋さんは何かを察したのか、彼らの後ろ姿に手を振り、面白いものを見るような笑顔を浮かべていた。
「なんなんだよ、栗子……」碩也は彼女に引っ張られながら、仕方なく文句を言った。「急にどうしたんだよ……」
栗子は答えず、ただぷりぷりと怒ったまま彼を引っ張り、速足で屋上へ続く階段を駆け上がっていった。
重い鉄の扉を開けると、いつもの風が吹き込んできた。
午後の屋上は、相変わらず人気がない。
栗子はそこでようやく碩也の手首を離すと、フェンス際まで歩いていき、彼に背を向けた。まだ怒っているようだ。
碩也は彼女に掴まれて少し赤くなった手首をさすりながら、彼女の怒った後ろ姿を見て、仕方ないような、少しおかしいような気持ちになった。
（こいつ……まさか、ヤキモチ妬いてるのか？）
その考えが頭に浮かんだ瞬間、彼は自分でそれを否定した。
ありえない。彼女はただ……うん、単に高橋さんが自分たち（元々一緒に食べるつもりはなかったが）の邪魔をしたと思っただけだろう。
「眼鏡……」碩也は青い空を見上げ、ふと何かを思い出した。
そういえば、自分は一体いつから眼鏡をかけ始めたのだろうか？
たしか……中学二年生の頃だったか？
その年齢は、ちょうど男子も女子も、体や顔つきがはっきりと変わり始める時期だ。
彼は覚えている。その頃、自分の背がぐんぐん伸び始め、顔立ちも次第に子供っぽさが抜け、少し角張ってきた。
そしてある日、栗子が彼の顔をじーっと見つめた後、少し気まずそうに言ったのだ。「ねえ、セキヤ。最近……なんか、ちょっと怖くない？」
「怖い？」彼は当時、意味がわからなかった。
「うん……なんか、笑ってない時、ちょっと怖いっていうか……」栗子は恐る恐る言った。
それから、彼女はどこからかファッション雑誌を取り出してきて、白いシャツを着て、金縁の眼鏡をかけ、優しそうに微笑んでいる男性モデルを指差し、熱心に語り始めた。「見て見て！ こういうの！ こういう優しい系が最高なんだって！ すっごく頼りになりそうで、すっごく癒される感じ！」
当時の自分は、どういうわけか、彼女のその「ちょっと怖い」という言葉と、その「優しい系アイドル」への熱烈な支持に、わけのわからない……不満と対抗心を覚えたのだ。
（俺は怖くなんかない！ それに、あんな色白の軟弱そうな奴のどこがいいんだ！）
口には出さなかったが、心の中ではそんな風にひねくれて考えていた。
そして……。
それから間もなく、彼は「本を読むと少し目が疲れる」という適当な理由をつけて、度の入っていないフレームレス眼鏡を作った。
眼鏡をかけると、確かに視線はかなり和らぎ、生まれつきの鋭さが薄れて、全体的により「普通」に見えるようになった。
それ以来、この眼鏡はほとんど彼の顔の一部となり、家にいる時や風呂、寝る時以外は、外で外すことはほとんどなかった。
（結局、こいつの一言が原因だったんだよな……）
碩也は少し自嘲気味に笑った。
（まあ、今のこいつは、そんなこととっくに忘れてるだろうけど……）
なんといっても、神経の図太い栗子なのだから。
碩也が思い出に浸り、一人で感傷にふけっていると……。
「ふむ～～！」
微かな、どこか陶酔したような、奇妙な声が隣から聞こえてきた。
碩也は訝しげに顔を向けた。
そこには、いつの間にかこちらを向いた栗子が、こっそりと……いや、これはもう、堂々と、キラキラした、まるで何か貴重な宝物でも鑑賞しているかのような目で、瞬きもせずに彼の顔をじっと見つめていた。
彼女の頬は相変わらず赤く染まっており、口角がわずかに上がり、小さなえくぼができていた。
「……何見てるんだよ」碩也は彼女に見つめられて、少し居心地が悪くなった。
「べ、別に！」栗子は慌てて視線を逸らしたが、次の瞬間には、またこっそりとこちらを盗み見てしまう。
しかも……彼女は盗み見ながら、無意識のうちに、少しずつ、少しずつ、彼に近づいてくる。
だんだん近くに……。
だんだん近くに……。
碩也が彼女の顔の細かな産毛まではっきりと見え、彼女の髪から漂う、シャンプーと陽光が混じったような、甘い香りが届くほど近くに。
近すぎて……彼女の呼吸が、彼の頬をそっと掠めるほどに。
「おい！ 近すぎるって！」
碩也ははっと我に返り、ほとんど反射的に、手を伸ばして、彼女をぐいっと押し返した。
「きゃっ！」
栗子は押されてよろめき、危うく転びそうになったが、なんとか踏みとどまった。
彼女は押された肩を押さえ、顔を上げる。その潤んだ大きな瞳には、急速に涙の膜が張り、ひどく悲しそうだ。
「……ひどい！ セキヤ、なんで押すのよ！」
彼女の声は少し涙声だったが、頬はさらに赤くなり、まるで茹で上がったエビのようだった。
彼女の泣きそうな顔を見て、碩也はすぐに後悔した。
（やばい！ また……）
「あ！ 悪い、悪い！ わざとじゃないんだ！」彼は慌てて謝り、少しうろたえた。「ただ、お前がいきなりあんなに近くに来るから……」
「わ……私は、ただ、もっとよく見たかっただけだもん……」栗子の声は蚊の鳴くように小さく、視線はうろうろと泳いでいる。
「……何をよく見るって？」
「だ、だから……眼鏡してないセキヤを……」彼女の声はさらに小さくなった。
碩也：「……」
彼は自分の頬も少し熱くなっているのを感じた。
空気が再び微妙なものになる。
この忌々しい気まずさを打ち破るため、碩也は慌てて話題を変え、昨日のことを再び持ち出した。
「あの……栗子、昨日のことは、本当に悪かった。ちゃんと反省してる」彼は誠実に言った。
謝罪の言葉を聞いて、栗子の表情が少し和らいだ。彼女は鼻をすすり、小さな声で呟いた。「……ふん、わかればいいのよ」
そして、彼女は何かを思い出したかのように顔を上げ、必死に「もう怒ってないわよ」という寛大な態度を装った。「ま……今日、そんなに誠意を見せるなら、この栗子様が特別に許してあげてもいいけど！」
「ありがとう……」碩也はほっと息をついた。
「でも！」栗子は突然、話の矛先を変え、一本指を立てて、彼の手にある弁当箱を指差した。「謝るだけじゃダメ！ ちゃんと行動で示して！」
「行動？」
「うん！」栗子は頷き、目をキラキラさせながら彼を見た。「お詫びとして、今日の昼ご飯は、私を満足させなきゃダメだからね！」
「あ……これなら」碩也は慌てて手の中の弁当箱を持ち上げた。「今日の朝、わざわざ多めに作ってきたんだ……」
彼は弁当箱を開け、中に丁寧に詰められたおかずを見せた。
黄金色の厚焼き玉子、ちょうど良い焼き加減のタコさんウインナー、緑鮮やかなブロッコリー、そして彩りのミニトマト……全部、栗子が普段から大好きなものばかりだ。
「わぁーー！」栗子は弁当を見て、目が一瞬で輝き、さっきまでの小さな悲しみや不機嫌は、どこかへ飛んでいってしまったようだ。
「美味しそう！ セキヤ、最高！」彼女は嬉しそうに歓声を上げた。
「気に入ってくれてよかった」彼女の喜ぶ顔を見て、碩也の気分も晴れやかになった。
しかし、彼が弁当を栗子に渡そうとした、その時……。
栗子は突然、ぱちくりと瞬きし、顔に少し悪戯っぽく、それでいて期待に満ちた表情を浮かべた。
「ねぇ、セキヤ……」彼女は声を長く伸ばした。「誠意を示すためにさ……」
「ん？」
「あーんして食べさせて？」
「はぁあっ！？」碩也は自分の耳を疑った。
「あーんしてよぉ～」栗子は両手を合わせ、お願いのポーズをしながら、キラキラした目で彼を見つめた。「ほら……お詫びの、特別サービスってことで？」
「…………」
碩也は彼女のその甘え、駄々をこねるような姿を見て、一瞬、断る言葉が出てこなかった。
（こいつ……また何を考えてるんだ……）
非常に気まずく、恥ずかしいとは思ったが、彼女の期待に満ちた眼差しと……うん、すぐ目の前にある、相変わらず赤く染まった可愛い顔を見ていると……。
魔が差したように、彼は頷いてしまった。
「……わかったよ。今回だけだぞ」
「やったー！ 最高！」栗子は嬉しさのあまり飛び上がりそうになった。
碩也は箸を取り、慎重に厚焼き玉子を一つ掴んだ。これは彼が最も自信を持っている一品で、甘さもちょうど良く、食感もふんわりしている。
彼は深呼吸し、箸をゆっくりと、わずかに開かれた、食べさせてもらうのを待っている栗子の小さな口元へと運んだ。
栗子も少し緊張しているようで、彼女は無意識に頬にかかった茶色い髪を一房払い、わずかに顔を上げて、その黄金色の玉子焼きを迎え入れた。
時間が、この瞬間、スローモーションになったかのようだった。
屋上の風が、そっと二人の髪を揺らす。
陽光が彼らに降り注ぎ、暖かく包み込む。
周りの全ての音が消え去った。
二人の距離はとても近く、互いの瞳に映る自分の姿まではっきりと見えるほどだ。
ちょうどその瞬間、二人の視線が、不意に交わった。
目が、合った。
栗子の深緑色の大きな瞳には、碩也の……眼鏡を外した、少し鋭いけれど、どこか不器用な優しさを帯びた顔が、はっきりと映し出されていた。
そして碩也も、栗子の、まるで子鹿のように澄んだ瞳の奥に、少し慌てて、どうしていいかわからないでいる自分の姿を見た。
（黎は言った……栗子は、ずっと……俺のことが好きだったって……）
妹の言葉が、まるで呪文のように、突然、碩也の頭の中に響いた。
「かぁっ！」
熱いものが、一気に顔へと込み上げてくるのを感じ、碩也は自分の顔が瞬間的に燃えるように熱くなった！
そして向かいの栗子は……彼女の顔は、実はさっきからずっと赤いままで、まるで熟したリンゴのようだったが、今やもう、血が滴るのではないかと思うほど真っ赤になっていた。
空気中には、言葉にできない、甘ったるく、そして気まずいような雰囲気が漂っていた。
碩也の心臓は、ドクン、ドクンと激しく脈打ち、胸を突き破って飛び出しそうだった。
彼が箸を持つ手は、制御不能に微かに震え始め、まるで次の瞬間には、その玉子焼きを落としてしまいそうだった。
「あむっ！」
まさにその危機一髪の瞬間、栗子はまるで熱いものに触れたかのように、勢いよく顔を前に出し、素早く玉子焼きを一口で飲み込んだ！
そして、彼女はまるで悪いことをした子供のように、碩也の手から弁当箱と箸をひったくった。
「あ、あの……や、やっぱり自分で食べる！ セキヤの手を煩わせるまでもないから！ 自分で！ 自分で食べるから大丈夫！」
彼女はしどろもどろにそう言うと、顔を伏せ、まるで狂ったように高鳴る心臓と熱い頬を、食べ物で無理やり塞ごうとするかのように、猛烈な勢いでご飯を口にかき込み始めた。
「…………」
碩也は彼女のその慌てふためいた、それでいて可愛らしい様子を見て、伸ばした手はまだ宙に浮いたままで、顔の赤みもすぐには引かなかった。
（こいつ……）
奇妙な感覚が、まるで電流のように彼の四肢を駆け巡った。
屋上では、風が吹き続けている。
頬を真っ赤に染めた少年と少女は、それぞれ弁当箱を抱え、黙々とご飯を食べていた。
誰も、もう何も話さなかった。
しかし、空気中に漂う、その微妙な、少し甘くて、少し苦くて、そして言葉では言い表せないときめきは、静かに広がっていくのだった。
今日の弁当……その味は、本当に、いつもと少し違う気がした。
(第四話 完)
この小説の作者は、日本のライトノベルやアニメが大好きな中国の大学生です。この作品は純粋な個人の趣味で書かれており、あくまで娯楽目的です。
作者は日本での生活経験がなく、作中には文化の違いや日本らしさに欠ける部分があるかもしれません。その点、どうかご理解ください。
また、この小説は中国語で執筆された後、AI翻訳ソフトを使って日本語に訳されているため、誤訳や不自然な表現が含まれている可能性があります。申し訳ありません！
最後に、どうか楽しんで読んでいただければ幸いです！
