第三話：え？ セキヤ、なんで眼鏡してないの……？
リビングルームは静まり返り、古びた柱時計の針が時を刻むチクタクという音だけが響いていた。
黒谷碩也は両手で顔を覆ったまま、ソファにぐったりと座り込み、身動き一つしなかった。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
栗子の最後の、泣き声混じりの怒鳴り声と、彼女がドアから飛び出していった時の、決然とした後ろ姿が、ナイフのように繰り返し彼の神経を切り刻んでいた。
（やっちまった……完全に、やっちまった……）
彼は、そんなつもりじゃなかったのだ。
ただ……ただ、あの忌々しい神と、あの馬鹿げたゲームのせいで、不安と焦りに駆られて、口走ってしまっただけだ。
ただ……栗子が自分の酷い行為（胸を触ったこと）や、制御不能な反応（生理的な反応）に対して、あまりにも「平気」そうにしているのを見て、心の奥底からわけのわからない怒りがこみ上げてきたのだ。
嫉妬？ それとも独占欲？
いや、ありえない。俺たちはただの幼馴染だ。
なのに、なぜ、栗子が他の男の子にも同じように「寛大」で「無防備」かもしれない、と想像するだけで、胸が詰まるように苦しくなり、まるで何か大切なものを誰かに狙われているかのように感じるのだろう？
（俺は一体……何を考えてるんだ……）
碩也は苦しげに髪をかきむしった。
彼はもう、わからなくなっていた。昨日、栗子の胸に感じた渇望も、今朝の強烈な生理反応も、一体どれだけが、あの「歓喜の神」の呪いのせいで、そしてどれだけが、自分自身の心の奥底に潜んでいた、自分でも気づかなかった……本当の気持ちなのか？
「ただいま」
冷たく、抑揚のない声が玄関で響き、碩也の混乱した思考を中断させた。
妹の黒谷黎が帰ってきたのだ。
碩也は慌てて手を下ろし、体を起こし、表情を取り繕おうとしたが、顔に残る後悔と落胆の色は、どうやっても隠しきれないようだった。
黎は靴を履き替え、リビングに入ってくると、魂が抜けたような碩也の姿を見て、少し足を止めた。
彼女の、碩也と少し似た黒い瞳が、静かに彼を一瞥する。
「兄さん、顔色悪いよ」彼女は事実を述べた。
「……なんでもない」碩也は視線を逸らした。
黎はすぐには何も言わず、碩也の隣の一人掛けソファに腰を下ろし、スクールバッグを足元に置いた。
しばらくして、彼女はまるで何気なく話題に出すかのように言った。「さっき、交差点で栗子お姉ちゃんに会ったよ」
碩也の心臓が、ドクンと強く跳ねた。
「彼女……どうだった？」彼は恐る恐る尋ねた。
「すごく悲しそうに泣いてた」黎の口調は相変わらず平坦だったが、碩也はその中に隠された、微かな……同情のようなものを感じ取った。「目がウサギみたいに腫れてた。しばらく話を聞いて、なだめて、やっと家に帰らせたところ」
その言葉を聞いて、碩也は心臓を目に見えない手でぎゅっと掴まれたような、痛くて苦しい感覚に襲われた。
（やっぱり……俺は、本当に彼女を深く傷つけてしまったんだ……）
「兄さんが、いじめたの？」黎は顔を上げ、碩也の目をまっすぐに見つめた。その眼差しは鋭く、まるで全てを見透かしているかのようだ。
碩也は口を開き、説明しようとした。誤解だと言いたかった。あの馬鹿げたゲームのことを全て打ち明けたいと思った……だが、結局、彼は力なく肩を落とし、低い声で呟いた。
「……ああ」
認めた。
この状況では、どんな言い訳も虚しく響くだけだ。彼が酷い言葉を吐き、彼が栗子を傷つけた。それが事実だった。
リビングは再び沈黙に包まれた。
碩也が、黎はいつものように、毒舌で彼を皮肉るか、あるいはもう完全に無視するのだろうと思った、その時……。
少し冷たい手が、そっと彼の頭の上に置かれ、優しく撫でられた。
「え？」碩也は呆然とし、驚いて顔を上げた。
黎の顔には、いつもの冷たさはなく、むしろ……姉のような、柔らかな表情が浮かんでいた。その手つきはとても優しく、まるで先ほど栗子を慰めていた時のようだった。
「兄さん、今日、本当に変だよ」黎は静かに言った。「栗子お姉ちゃんだけじゃなくて、私もそう思う」
彼女の手はまだ彼の髪の上にあり、奇妙な、そして安心させるような感覚を与えていた。
「栗子お姉ちゃんね……」黎は少し間を置き、言葉を選んでいるようだった。「実は、ずっと……兄さんのこと、好きだったんだよ」
「……好き？」碩也の心臓が、また一つ鼓動を飛ばした。
どんな種類の「好き」だ？
友達としての好き？ 兄妹のような好き？ それとも……。
「詳しくは、本人に聞かないとわからないけど」黎は手を引っ込め、明確な答えは与えなかった。逆に、話を変え、再び彼の目をまっすぐに見つめた。「じゃあ、兄さんは？」
「兄さんは……栗子お姉ちゃんのこと、好きなの？」
「俺は……」
碩也は再び言葉を失った。
一つには、黎の突然の大人びた態度と鋭さに驚いていた。この子はいつからこんな……恋愛相談のプロみたいになったんだ？
そしてもう一つ、「栗子が好きか」という問いが、まるで鍵のように、彼の混乱した思考の中心に突き刺さったのだ。
好きか？
もし昨日までなら、彼は恐らく何の躊躇もなく答えただろう。「もちろん好きだよ。一番大切な幼馴染で、友達としてな」と。
だが、今は……。
あの馬鹿げた夢を経験し、体が制御不能な反応を示し、あの激しい口論を経て……。
栗子に対する彼の感情は、かつてないほど複雑になっていた。
あの動悸、あの独占欲、彼女が泣いているのを見た時の胸の痛み……それは、あの「ゲーム」の強制的な設定のせいなのか？ それとも、彼自身の心の奥底で、あの太陽のように明るく、少しおっちょこちょいで、それでいて、ありのままの彼女に、とっくの昔に友情以上の感情を抱いていたのに、ただ自分が鈍感で気づかなかっただけなのか？
わからない。
彼は、迷っていた。
碩也が黙り込んでいるのを見て、黎はそれ以上追及しなかった。彼女はただ軽くため息をつくと、突然甘えるような口調に変わり、碩也の腕に抱きついた。
「もー、兄さんの悩みは一旦置いといて！ 私お腹すいた！ 晩ご飯、兄さんの作るハンバーグがいい！ チーズいっぱい乗ってるやつ！」
「……わかったよ」妹の珍しい、少し小悪魔っぽい甘え方を見て、碩也の張り詰めていた心が少しだけ緩んだ。
「決まりね！」黎は満足そうに腕を離し、スクールバッグを手に立ち上がった。「お風呂入ってくるから。兄さん、がんばってね～」
彼女は碩也にウィンクし、意味深な笑顔を残して、リビングを後にした。
（がんばる……か……）
碩也は苦笑しながら首を振った。
道のりは、まだまだ遠い。
＊
夜、ベッドに入っても、碩也はなかなか寝付けず、何度も寝返りを打った。
窓の外の月明かりが隙間から差し込み、床にまだらな光の模様を描いている。
ベッドサイドテーブルの上では、あの金色の砂時計が依然として音もなく流れ続け、微かな光を放っている。まるで沈黙のタイマーのように、彼に残された時間の短さを告げていた。
彼の頭の中では、まるで映画のように、栗子との思い出の場面が次々と再生されていた。
幼稚園の制服を着て、おさげ髪を結び、鼻水を垂らしながら彼の後ろを泣きながらついてきた、あの頃。
小学校の頃、一緒に木に登って鳥の巣を探し、秘密基地でお菓子を分け合い、隣の家の窓ガラスを割ってしまって二人で怯えたこと。
中学校の頃、彼女は少しずつ少女らしくなっていった。相変わらずおてんばだったけれど、たまに男子に告白されて顔を赤らめることもあった。
そして高校……彼らは同じ学校の、同じクラスになった。彼女は当たり前のように彼の腕を組んで飲み物を買いに行き、体育の授業の後には濡れたタオルを彼の頭に乗せ、当然のように彼の部屋に上がり込んできてゲームをした……。
そんな、当たり前だった瞬間が、今思い返すと、なんだか特別な色を帯びて見える。
彼は、自分が読んだ小説や観た映画に出てくる、定番の幼馴染の物語を思い出した。
鈍感な主人公と、ずっとそばで黙って彼を支え、たくさんの想いを寄せてきたヒロイン……。
まさか、自分も、その鈍感な主人公なのだろうか？
栗子は……本当に黎が言ったように、ずっと自分のことを「好き」でいてくれたのだろうか？
あの、何気ないと思っていた親密な振る舞いや、当たり前だと思っていた頼り方には、ただの慣れ親しみだけではなく、もっと深い意味が込められていたのだろうか？
考えれば考えるほど、頭は混乱し、心臓は何かに締め付けられるように、甘酸っぱく痛んだ。
そして、彼はまた、昨日の屋上での、魔が差したように伸ばした手と、あの柔らかな感触を思い出した……。
さらに今日の午後、口走ってしまったあの酷い言葉と、栗子の、怒りと悔し涙でいっぱいの瞳を……。
羞恥、後悔、そして言葉にできない胸の痛みが、潮のように彼を飲み込んでいく。
（どちらにしても……）
碩也は深呼吸し、その眼差しに次第に決意が宿った。
（俺の彼女への気持ちがどうであれ、このクソみたいなゲームがどうであれ……まずは、彼女に謝らなければ）
心から、昨日の自分の行動と、今日の自分の言葉について謝罪する。
それが、今の彼にできる唯一のことであり、絶対にしなければならないことだった。
そう決心すると、張り詰めていた神経がようやく少し緩み、深い眠気が彼を襲ってきた。
＊
翌朝。
「うわっ……やべっ！」
碩也はベッドから飛び起き、目覚まし時計を見て、針がすでに危険な時間を指していることに気づいた。
昨夜、考え事をしすぎて深刻な寝不足に陥り、完全に寝過ごしてしまったのだ。
彼は慌ててベッドから飛び降り、最速で洗面所へと向かった。歯磨き、洗顔、着替え……一連の動作は流れるようで、ほとんど目を閉じたまま行われた。
スクールバッグを掴み、食パンを一枚咥え、彼は一陣の風のように家を飛び出した。
「いってきまーす！」
朝食のテーブルで黎が送る訝しげな視線にも、気づかなかった。
必死に走り、なんとか予鈴が鳴る直前に教室に滑り込んだ。
「はぁ……はぁ……危なかった……」碩也はドアの枠に手をつき、荒い息をついた。
教室中の生徒たちが、奇妙なものを見るような目で彼を見ていた。
「よお、碩也。今日は随分と慌ててるじゃねぇか」渡辺が笑ってからかった。
「寝坊した……」碩也は手を振り、自分の席へと向かった。
栗子の席のそばを通り過ぎる時、彼は無意識に歩みを緩め、心臓がまたしても不甲斐なく高鳴り始めた。
栗子は俯いて、本を読んでいるようだった。長い茶色のまつ毛が瞼の下に小さな影を落としている。彼女の横顔は相変わらず可愛らしいが、どこか……元気がないように見える？ 目もまだ少し腫れているようだ。
（やっぱり……昨日、ひどく泣いたんだろうな……）
碩也の心は罪悪感でいっぱいになった。
彼は深呼吸し、勇気を奮い起こして、彼女の机のそばに立った。
「あの……栗子」
栗子は彼の声に、体がわずかに震えたが、すぐには顔を上げなかった。
「……なに？」彼女の声はくぐもっていて、どこかよそよそしい響きがあった。
「昨日のこと……悪かった」碩也は頭を下げ、できる限り誠実な口調で言った。「あんな酷いことを言うべきじゃなかった。俺が悪かった。本当に……すまなかった」
周りが少し静かになったような気がした。いくつかの好奇の視線がこちらに向けられている。
栗子はまだ俯いたままで、肩がわずかに震えていた。
碩也が、彼女は許してくれないのかもしれないと思い、何か言い足そうとした、その時……。
彼女は、ゆっくりと顔を上げた。
目はまだ少し赤く腫れているが、その深緑色の大きな瞳には、昨日の怒りはもうなく、代わりに複雑な感情が浮かんでいた。少し悲しそうで、少し戸惑っていて、そして……何か他の感情も。
彼女は碩也を見つめ、唇が少し動いた。何かを言おうとしているようだ。
だが、彼女が碩也の顔をはっきりと認識した瞬間、彼女はまるで一時停止ボタンを押されたかのように、固まってしまった。
くりくりとした瞳がわずかに見開かれ、視線は碩也の顔に釘付けになり、微動だにしない。
「……？」碩也は何が何だかわからず、彼女に見つめられて少し気味が悪くなった。「ど……どうしたんだ？」
栗子は答えず、ただ呆然と彼を見ていた。
数秒後。
「かぁーーーーっ！！！」
驚くほどの赤みが、まるで満ち潮のように、彼女の首筋から猛烈な勢いで上へと広がり、瞬く間に顔全体を染め上げた。耳たぶまで、魅力的なピンク色に！
その赤みはあまりにも急激で、あまりにも徹底的で、昨日屋上で胸を触られた時よりも、ずっと激しかった！
「ええっ！？」碩也は驚いて飛びのいた。
栗子はまるで感電したかのように、勢いよく顔を伏せ、両手で真っ赤になった顔を覆った。もう言葉も出せないようで、ただ意味不明な「うぅ」というような声を漏らしているだけだ。
「……？」碩也は完全に混乱した。
な……なんだ、この反応は？
謝罪が効いたのか？ いや、それにしてもこの反応は……激しすぎるだろ？
「栗子？ 大丈夫か？」彼は心配して尋ねた。
「だ、大丈夫！」栗子は顔を覆ったまま、指の隙間からくぐもった声を出した。明らかに慌てていて……そして、照れている？
そして、彼女は何かを思い出したかのように、片目だけを上げ、指の隙間からこっそりと碩也を一瞥すると、素早く付け加えた。その声は蚊の鳴くようにか細かった。
「あ、あの……セキヤ……あ、あなた……なんで眼鏡、してないの……？」
眼鏡？
碩也は無意識に手を伸ばし、鼻筋を触った。
何もない。
（あ……）
彼はその時になってようやく気づいた。
朝、あまりにも急いで、慌てて顔を洗い着替えたせいで、彼はなんと……いつも「擬態」のためにかけているフレームレス眼鏡を、かけ忘れていたのだ！
ということは、栗子がさっき見たのは、眼鏡を外し、普段隠しているやや鋭い目つきと、はっきりとした顔立ちを晒した、いつもの彼とは雰囲気が全く異なる……黒谷碩也？
そして、彼女のこの、かつてないほどの激しい反応は……まさか……そのせい？
目の前で、顔を腕に埋めてしまいそうなほど縮こまり、頭のてっぺんから湯気が出ているのではないかと思うほどの幼馴染を見て、碩也の心の中に、非常に微妙な、驚きと戸惑い、そしてほんの少しの……言葉にできないときめきが、静かに湧き上がってくるのだった。
(第三話 完)
この小説の作者は、日本のライトノベルやアニメが大好きな中国の大学生です。この作品は純粋な個人の趣味で書かれており、あくまで娯楽目的です。
作者は日本での生活経験がなく、作中には文化の違いや日本らしさに欠ける部分があるかもしれません。その点、どうかご理解ください。
また、この小説は中国語で執筆された後、AI翻訳ソフトを使って日本語に訳されているため、誤訳や不自然な表現が含まれている可能性があります。申し訳ありません！
最後に、どうか楽しんで読んでいただければ幸いです！
