蓼食う虫
恋愛や結婚のほとんどは、「蓼食う虫も好き好き」に尽きると里美は思っている。
タロット歴も十年以上経ったが、占い師として関わるクライアントだけではなく、プライベートで関わる人達も、皆そのように見えてしまう。
これは人格否定ではないのだけれど、よくそれで今まで付き合いが続いてきたねという人が結構いるからだ。
こんな人がよく結婚できたなとか、えっ?この人結婚して子どもまでいるんだという驚き、意外性以上に、この人で大丈夫なのかなという不安や心配の方が大きいかもしれない。
友人や知人の恋愛や結婚の相談を受ける時も、彼氏や夫の悪口や不満を、嫌になるほど聞かされるものだ。
「あなたのような人を妻にしてくれる人なんて、そうそういないよ」
婚約者だった女性から相手を奪いでき婚、家事もやらずに子育ても全部親任せの専業主婦、夫と上手くいかなくなると出会い系サイトで不倫相手を探し、好きな人ができたから離婚してと言って夫と揉めたという知人に、私はそう言った。
会えば離婚したい、夫が離婚してくれないという愚痴ばかりを吐く。
「それなら、働けば?」「そんなに離婚したいなら、なぜ自立しようとしないの?」
そういうと、でもだってという言い訳で逃げる。
不倫がバレてからもう何年も経つらしいが、仕事を見つける気もなければ、手に職をつけて自立する準備をすることもなく、新しい男を見つけて乗り換えることばかりを夢見ている人だった。
そうやって自分が働かずに済む再婚相手を探しているわけだ。
結局自分が楽することしか眼中にない。
同居している実母も夫も子どもも全部捨てて、新しい夫を見つけて二人だけで暮らしたいという、実に身勝手な願望、欲望で生きている。
結婚は責任が付きまとうものだけれど、無責任極まりない人でも、容易く結婚し子どもを作ってしまう人が多いような気がする。
似たようなケースのクライアントにも、だってそうなるとは思わなかったからとか、そうなるなんて知らなかったからなど言い訳する人もいる。
そりゃあ、誰でも自分の未来はわからない。自分の選択の結果がどうなるかをすべてわかってやっていることなど少ないものだ。
それでも、自分が良かれと思いやったことの結果や自分がそうしたくてやった結果が自分の思惑や期待したものと違っても、そこに責任を持たないとならないのに。
それができないならば、結婚や出産はしない方が身のためだ。
結婚する気もなければ、子どもを育てる気もないのに結婚するなんて無責任だ。
まだ結婚したくなかったとか、子どもは欲しくなかったのにと言ったところで、してしまうとか、できてしまったら腹をくくってやるしかないのだ。
その辺りの自覚や覚悟もないのに、成り行き任せ、行き当たりばったりで何も考えないでしてしまう人は、文句や不満をいうとか、逃げること怠けることばかり必死でするから、上手くいかなくなるだけだ。
そのような人には悪知恵ばかりで、真の知恵、本当の賢さがないからだと思う。
それがその人の人生が上手くいかないほとんどの原因だと思う。
我が儘で幼稚な大きな子どもが子どもを産んだような親だと、その家庭や家族は災難だ。
問題アリの伴侶と結婚してしまうと、家庭崩壊だけでなくて、一族が滅んでしまうこともあるから。
その家の身代を潰してしまうなケースもそうだと思う。
その人と結婚したばかりに······という惨状になるわけだ。
なぜそんな状態で結婚してしまうのか、本当に謎だけれども、相手はそれでもいいと思ってくれたからに尽きる。
そんなあなたのような人でも妻にしてもいい、夫にしてもいいと受け入れてくれたわけだ。
人格障害のような人や問題アリの人であっても、それでも結婚している人もそうだ。
そこを全くわかっておらず、相手に感謝すら抱かずに、ただ文句や不満ばかりの人は、「あなたみたいな人を妻(夫)にしてくれる人はそうそういないのに」と人に言われたり思われてしまうものなのよね。
男女に関係なくそういうものだと思う。
それは 友人関係でも言えることだ。
よくそんな人と付き合えるね、何であんな人と付き合ってるの?
奇特な人に出会えて良かったねというレベルだ。
しかも全く感謝知らずで、失礼千万、相手の立場も慮ることなく、無体なことばかりを強いて相手の限界が来るまでし倒していることがほとんど。
あなたのような人と友達になってくれる人は、そうそういないというのにね。
本人がそこをわかっていないから、上手くいくことはないのだ。
全くわかっていない、気がつかない、気がつけない、薄々気がついているのに受け入れようとしない人はどごまでも不毛だ。
クズが好き、だめんずが好きとかも、自分がそれでいいと自分に許可しているからこそだ。
普通は、そんな人は選ばない、そんな人は相手にしないという人を恋人や伴侶に選ぶというのは、そういうことなのだ。
程度の差はあっても、皆どんなカップルも夫婦も蓼食う虫も好き好きなのよね。
本当に嫌ならば、さっさと別れたら済むものなのだから。
理由をつけては別れを引き延ばし、先送りにしているだけだ。
自我ばかりが異様に強くて、全く精神的に自立していない人が、自分の人生も伴侶や子どもの人生も傷つけ狂わせるものなのよね。
だから、なるべくそのような人を伴侶に選ばない方がいいわけで。
自分が相手にとっては蓼なのだと自覚していないから、平気で何でも相手のせいにして、文句や不満タラタラなのだ。
被害者ぶった加害者でしかないのよね。
すぐに自分は蓼じゃないと反発反論する人は、自己認識が甘く、客観的視点の乏しい人だ。
誰よりも蓼な人ほど自分が蓼だと認めない傾向がある。
相手も自分も蓼である
という謙虚さを待って、認識や自分の態度や行動パターンを改めることができる人は、占い師に依存的にならずに、自分でも考えて解決してゆくことができるの。
妥当なアドバイスを素直に受け入れてゆける人は、幸せになってゆける人なのよね。
妥当なアドバイスには耳を貸さずに、自分の都合の良いものしか受け入れないで暴走する、逆張りするから不幸になるだけなのに。
大抵は本人が自己中過ぎるか、非常識過ぎるから揉めるわけだからね。
おまけに話しも通じないのであれば、お手上げだ。
占い師をやっていてつくづくそう思う。
里美自身、自分も蓼かもしれないと気がついて、夫に感謝できるようになったら、今までの不満や苛立ちが嘘のように消えた。
私はこの夫でラッキーだったな、この夫で良かったと思えるようになったら、人生が好転した。
夫のこれまでの性格や行動が変わったのでなくて、自分の受け止め方が変わったらそうなった。
夫さえこうだったらとか、こうしてくれればいいのにというもので日々悶々としているだけだと、上手く行くことはなくなる。
里美は自分の経験から、それをアドバイスしてきた。
自分が蓼だと受け入れることは、負けでもなければ、私なんてという自己卑下とは全く違うものだ。
常に「特別な私」「自分は価値のある人間だ」を誇示しないと自分を保てない、満足しない人は、非常に質の悪い人が多い。
自分の自尊心にばかりに翻弄されている人は、相手や周りを平気で傷つけ蔑ろにする負の人になりやすいから。
そして自分の非を認めることができない非常に厄介な人だ。
自分自身を変えること、自分を正すことから全力で逃げるから成長が全く見られない。
ある程度の諦念も、人間関係の潤滑油、問題解決には欠かせないものだと思う。
完璧主義の人は、大抵は「おまゆう」な人、自己都合からのダブルスタンダードな人ばかりだ。
自分はどうなの?というところが恐ろしく抜けているのだから。
自分を棚に上げすぎているから、揉めるし、相手や周りから嫌がられるわけよね。
自分はできないくせに、自分はやっていないくせに、相手や周りばかり口撃したり要求するから上手くいかないのだろうね。
他者からの適切なアドバイスに従わない人は、何もかも逆張りして自滅するルートに向かうものだから、そのような人が占いを活用できるとは思わない。
逆張りをしていい人は、目が利き、状況判断力が正確で、思慮深く、自分の行動や選択に責任を払える人に限られる。
それが微塵もないような人が、アホな逆張りをして自滅を招くだけだ。
そのような人は暴走車両、暴走列車のようなもの。自爆だけならまだいいけど、自分以外を巻き込んで被害者も作るから本当に迷惑なのだ。
自分のやり方こそが自分の首を絞めているのに、そこに気がつかない、それを受け入れない人は、結局は自分で不幸になっているのだから、それだと、もうつける薬もないのよね。
さて、今日も鑑定依頼の仕事を頑張ろう。少しでもクライアントが自分に向き合い、前に進めるように。
里美は愛用のタロットクロスに、タロットデッキを勢いよくシャッフルしはじめた。
(了)
他の作品を集中して書きたいので、しばらくはこのSSはお休みしようと思います。
いつも読みに来てくださってありがとうございます!
寒なくなって来ましたからご自愛くださいね。




