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禁色

私が引っ越した先には「緋色の女帝」がいた。

引っ越し早々、良くわからないうちにこれは順番だからという理由で地域の婦人会に参加することになってしまった。その前任からの引き継ぎ事項に耳を疑った。

「くれぐれも、会長と服の色が被らないようにしてくださいね」

「えっ? どういうことですか?」

「会長は赤い服、赤に近い色味の服をよく着る人でね、会の中で同じ色を着ている人を良く思わなくて目をつけられて面倒なことになるらしいのよ」


何それ?!なんという迷惑?!


「はあ、わかりました」

とりあえずそう返事をした。



それ以外にも月に二度もある、打ち合わせと称する会合に参加しなければならず、仕事をしている人や、子育て中の人とかはその度スケジュールを調整するのは大変だ。若い人は欠席も多い。


これは老人会か?というようなイベント内容にもびっくりしたけれど、リタイヤして暇をもて余している人のための集まりでしかないのでは?


こんなの現役世代にやらせるな!


そのように感じてしまい、毎回憂鬱でしかない。


町内会とかはまだ仕方がないとは思うけれど、婦人会なんて老人会と統合で良くないのかな?

半強制ではなくて、やりたい人だけでやれば良いのでは?



婦人会会長は70代のようで、夫に先立たれた寂しさを晴らすために婦人会に全力投球、何期も会長の座に収まっているのだとか。


会長さんをいい気分にするための会のようなものだ。


そのために会費を徴収され、やりたくもない会に引っ張り出される人のことを全く考えていない。


忘年会やご苦労様会など、参加する人の服装がみな灰色、墨色でまるでお通夜のよう。


会長だけが赤い服で目立っていた。しかも、あまりお洒落ではない。

会長と同年代の人はそれで良くても、まだ若い世代の人達まで地味にとかドレスコードを指定されるなんて理不尽過ぎる。


たかが地域の集まりで何でそこまで要求されないとならないのか?

何でこの人のためだけに周囲がこんなに気を使わないとならないの?


黒やグレーの服を好まない人、普段そんな色を着ないから持っていない人だっているのに。私は喪服以外に黒い服はほぼ持っていない。黒があまり好きではないから。


自分ばかりが派手な色を身につけて女帝のような立ち位置にのさばるなんて、ヤンキーか?! 将軍様か?



交通安全ののぼり持ちと旗振りに駆り出された時に、ついうっかりディープレッドのインナーを着て参加してしまった。羽織ったカーディガンから見えるぐらいでもアウトだったのか、遠くからチラチラ視線を送られ、

「あなたお名前は?」

と会長に聞かれてしまった。


や、やばい?!


他の皆さん達にも緊張がサッと走っているのがわかって、申し訳なくなった。


禁色着た私が悪うございました。


それ以上何もされなかったけれど、でもこのようなことをいつまで続けるのだろうか。


会長さんはお一人様で寂しいからを理由に、何でもありなのはおかしいと思う。


もちろん、寂しい人に配慮する気持ちはわかる。

けれど、寂しさの埋め方を間違えてはいけないのでは?


どうして誰も言わないの?


独り身がつらいなら、再婚するなり、彼氏を待てばいいわけで。


友達がいないなら、自分で作ればいいだけでしょ。

お局様みたいなことをするから、同性の友人もいないのでは?


それを会のようなものを作って、全く関係ない人を巻き込んで、自分の寂しさを紛らわそうとするなんて自己中でしかない。


会を乗っ取って、我が物顔に振る舞うなんて迷惑でしかないのに。


父が以前参加していた県人会でも、そういう人が仕切ってしまい、父をはじめ多数が会を抜けたという話を聞いたことがあった。


会とか組織を私物化してしまう人は厄介だ。トップではなくても、性格に問題ありのナンバー2が全部仕切ってしまうとかで揉めるとか不満が上がるなんてのもそうだ。


自分がちやほやされないと満足できない大人なんて本当に迷惑よね。


そんな人だから、人から避けられてしまうのでは?


自分の居場所を欲しがる人はいるし、居場所を作ること自体は悪くないけど、そのやり方が問題なのよね。


サークルクラッシャーみたいな人とか、人を支配しないといられないようなあり方は、間違ったやり方だと思う。


自分の居場所作りも、自分の寂しさの埋め方も他人に迷惑をかけないようにしないとならないのよね。


それがわかっていない人は、嫌がられてしまうし、他の人が負担や被害を受けることになってしまうわ。



任期が終わるのが近くなって、次の番の人へ連絡しようとすると、毎度居留守を使われ、逃げられた。


きっとその会長のことを近所の人はみな知っているから、避けているのだろうけど、引き継ぎできないと私も困るのに。


三軒断られ、四軒目の品の良いご婦人が承諾してくれたので、ようやく私は解放された。


緋色の女帝ともこれでおさらばだ。


あの会長がお亡くなりになるか、高齢で身体の自由がきかなくなるまで、あの婦人会は存続してゆくのだろうか?


今度番が回って来たら絶対断ろう。


自分の寂しさを埋めるやり方を間違えてはいけないわよね。


『寂しいから』を理由や言い訳に何をしても許されるわけではないのだから。


理由や言い訳さえあれば、何でも許されるということではない。言い訳さえすれば何でも済むと思っている人は相当幼稚な人だ。


それがわからない人が、自分に向けられる他者の愛情や好意をみすみす失って行くのでしょうね。


寂しい思いをしているのは、自分の行動や性格のせいじゃないのかな。


自分の寂しさの埋め方を間違えると孤立してしまうよね。


歳を取れば取るほど、諌めてくれる人もいなくなるから、寂しいのが嫌なら、早いうちに気がつけるといいよね。


自分が裸の王様のようにならないように。



(了)

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