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大泣きした後に来るもの

親しくしていた人と別れることになると、心をえぐられるような悲しみに襲われたりする。好きな人だったら余計に別れの痛みは酷いものになるだろう。


ナタリーは長年の友人から別れを切り出されて、別れ難さに大泣きして、しばらく塞ぎ込んだ。

10歳から30歳になるまで20年も付き合って来たのだ。

突然その友人、親友だと信じて来た相手から「私達は合わない」ことを理由にもう合わない、もう連絡しないということを突き付けられた。

同性の友人との別れがこんなに辛いものだとは思わなかった。


どうして? なぜこんなことになったの?


ナタリーは思い当たる原因がすぐに浮かばなかった。心に吹き荒れる嵐のような様々な感情に振り回されることに耐えながら三年の月日が経った。



今はもう悲しみは去った。友人と過ごした記憶もそれほど思い出すこともなくなった。


そしてナタリーは、ふと気がついた。


「私達は合わない」


彼女が言ったことは真実だったと。


そう、そうだった。いくら無理して頑張っても私達は噛み合っていなかった。

歩み寄ることも、相手に合わせよう、相手について行こうと躍起になっていたのは事実だ。

報われないような虚しさも実際にあったのを、ずっと見ないようにして付き合って来たのだ。

それは私もそうだし、彼女もそうだったのかもしれない。


それに、彼女の在り方を好きにはなれなかったのだ。それが年齢を重ねてゆくうちに大きくなっていた。

彼女とは価値観も考え方も全く違った。思い出せば思い出すほど、無駄な同調をして自分の本心を歪めて来たことに改めて気がつかされた。


子ども時代や学生時代はお互いに未熟だから、これはお互い様だと思う。

でも、思い起こすと彼女は優しい人ではなかった。意地悪もされた。そして謝りもしなかった。そこにモヤモヤをいつも感じて来たのだ。

彼女との関係をキープするために、不快なことや理不尽なことを飲んでいた自分に気がついた。もちろん自分の方にも非があったこともあるかもしれない。

でも、それをストレートにこちらには言わずに遠回しな嫌がらせ、復讐のようなことを受けた。


自分の不快さや怒りをどう相手に表現するのか。


素直に相手に言葉では言わずに、復讐でわからせようとする、そのやり方がたまらなく嫌だった。


わざとそうするような傾向があって、そういうことをされる度に心は離れた。


嫌われたのだろうかと思い、別れる覚悟をしていると、向こうからすり寄り、引き止めようとする、そのような繰り返しが何度かあったように思う。


そう、私達は付き合っていく中で徐々に合わなくなったのではなくて、元々合っていなかったのだ。


今では彼女のどこに惹かれたのかわからない。いえ、惹かれたのではなくて、引きずられたのだと思う。


友人になってと言って来たのは彼女の方だった。


私を気に入らないのに手放すことなく、手元にずっと繋ぎ止められていただけだ。


好意ははじめはあったのかもしれない。でも好意がなくなってしまっていたのに、関係をずるずる引きずって来てしまっただけなのかもしれない。


ナタリーは、これはまるで恋愛みたいだなと苦笑しそうになった。

同性の友人の付き合いって、どこか疑似恋愛ぽいところがあるように感じることもある。全員がそうだとは思わないけれど、友人関係を疑似恋愛みたいな感じにする人は、対人トラブルや恋愛トラブルも多いように思えた。

ベタベタする割に、独占欲が強いのに愛が無いというか、自己中に振り回す人は、男女に関係なくそうなのかもしれないけれど。


思い起こせば、彼女って、結構面倒くさい人だった······。


そりゃあ、合わないわよね。


うん、私達は全然合っていなかったな。



ナタリーはふっ切れたように心が軽くなった。



その後ナタリーは同僚からの紹介で知り合った男性と結婚した。


夫のような性格の女性だったら、生涯親友でいられただろうなと、自分の伴侶の性格の良さに満足しているナタリーだった。


私はもう無理して付き合うとか、無理しないと関われないような人は友人にならないわ。



(了)

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