13歳の地図
俺は子どもの頃から、親兄弟、同級生達とは合わなかった。
何でこんなことで悩むんだ?
どうしてこんなことで揉めるのか全く意味がわからない、どこが問題なのかさっぱりわからなかった。
ほんと、つまんねぇな。
見下しているとか、差別とかじゃなくて、上手く説明できないけれど、自分とは相容れないと感じることばかりだった。
だから、よくわからない奴らと群れたりするのは嫌だった。ぼっち上等。
自分を理解できる奴がいないからって、グレたりはしない。
決められた集団行動ができないわけでもなく、勉強もできないわけでもないから、問題児扱いされることもなかった。
俺は1人の時間を満喫した。
1人でいる奴を嘲笑うとか、お前何いきがってるんだと絡んで来る奴もいたが、そういうことをするのは大抵ガキだった。そして自分の子分、金魚の糞を持ちたがって、自分1人では何もできない、何も言えない情けない奴らだ。
そんな奴はどうでもいい。
最近歴史小説をいくつか読んで思ったのは、うつけなんて呼ばれていた織田信長とか破天荒な王様とかさえも、結局ぼっちじゃないんだよな。
小姓や護衛が常に付いていて、何かあれば助けてくれるし、やって欲しいことはそいつらに頼めばやってもらえたわけだ。財力も地位もあるから、いい環境だよな。
漫画や小説のヒーローは、普通そうで決して普通じゃないんだよ。
下級貴族、下級武士だって普通じゃないんだ。農民上がり、平民だったという秀吉だってそう物語では伝えられているだけで、本当に農民だったわけではなくて、親が元々織田家の家臣だったりする。
わざと設定を変えているんだよ。「下級」「平民」という設定は、読者の受けをよくするためでしょ?
そこそこいい位置にいた人が成功する話よりも、下級層から成り上がる話の方がウケるからだよね。
小説とかドラマって加工され過ぎて嘘ばっかりなんだよな。偉人伝、伝記物もそうだ。
それを知って、最近はなんだか萎えてしまっている。嘘だらけの歴史小説には辟易しているんだ。
歴史検証本に今は夢中だ。
事実や本当のことを知りたいから。
リアルなものが俺は欲しいだけ。
こんな俺は、中二病だって言われてしまうのか?
自分の進路なんてまだハッキリしないし、予想できない。
自分のやりたいことは······、あるにはある。夢だってあるさ。
でも、まだ自分は13歳、身体はだいたい大人に近くなったけど、自分の力じゃまだ何も形にできない。
早く大人になりたい。自分のやりたいことを自分で形にできるようになりたい。
親にまだ庇護されている自分が嫌だ。経験不足で世間知らずな自分も情けない。
この家や学校の狭い環境から抜け出したい。
嘘ばかりの世界からも抜け出したい。
そんな世界を変えてみたい···って、これこそ中二病だな。
今の自分にとっての一番リアルなこと、それは俺の隣の席の女の子が気になってしょうがないってこと。
その子が教室のどこにいるのか目で追ってしまうこと。
見ていないふりして見てしまうこと。
その子の声がする方に反射的に振り返ってしまうこと···。
これが今の俺、まだ13歳。
(了)