表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/115

巡る

もう随分前のことだけれど、「父親が倒れて入院して今大変なの······」という嘘を何年もついていた知人がいた。

その父親は既に亡くなっていたのに、それでも入院していてという設定で周囲に話をしていた。

父の検査があるのでお休みをとか、転院につぐ転院で大変なんですとか、ここのところ容態が悪くなってしまってという嘘を繰り返していた。


「お父様にお見舞いさせてもらっても?」


そう尋ねると、「いいえ、悪いですから」とか、「父は見辛い格好をしてますから遠慮して下さい」とか、入院先には人を来させないような言い訳をしていた。


入院自体が嘘だったから、見舞いに来られると困ってしまうからだったのだろう。


その人は他にも嘘を色々ついていたけれど、その「父が入院している」という嘘がもっとも長期的なものだった。


だからボロが出て来て、ああ、この人とはもう今後はないなという判断材料になったのも事実だ。


嘘をついて他者を振り回す人は、何が原因であれ、エナジーバンパイアだ。

罪悪感なくやるならば重傷だ。


不幸な人や気の毒な人のふりをして他者から同情や関心、あるいは物品等を引き出そうとする人は、精神を病んでいるか、元々魂レベルが低くて生まれつきのものだ。


自己防衛的な嘘や見栄からの嘘を頻繁についていると、魂はより穢れてゆくと言われていたりする。

そのような人はそれを理解できないし、嫌いだからとかムカつく相手だから嘘をついて困らせてやろうということをすれば、一層魂レベルは落ちてしまう。


バレなければいいというつもりなのかもしれないけれど、大抵の嘘はバレているものだ。

それって嘘だよね?という指摘は受けなくても、相手や周囲からは、ああこれは嘘なんだろうなと思われているものだ。


不倫とかもそうだと思うけどね?


バレていないと思っているのは本人達だけでね。


思わぬところから情報が漏れて、知られちゃ困る相手の耳に入ってしまうものだよね。



それで、私もきっとその人の話は嘘なんだろうなと気がついた。


嘘を信じてくれる反応を相手がしている時、その人は笑っていたりするから。


嘘が通じていると感じると嬉しそうなのだ。


そこにみな違和感を抱くものだけど、本人だけは気がついていないのだろうね。


自分は嘘をつくのが上手いとか勘違いしてるのではないかな。


一時私も鬱で精神的にも身体的にも辛い時期があって、スピリチュアル的な癒しを求めた時期があった。

その中で「祈りのサークル」というものを主宰されている人を知った。

依頼のあった人に祈りを無償で会員が捧げて行くというものだった。

そこに一時期会員として私も参加していた。


体や精神の不調を抱える人に対して、会員が依頼を受けると快復快癒の祈りを日時を決めて、その祈りに参加できる人達で一斉に祈りを捧げるという会だった。


そこで私は、その嘘つきな人の父親が容態が悪化して危険な状態だと聞いたので、会員の皆様に祈りのお願いをした。

友人や知人、親族に限らず、快復治癒を願う対象があるならば、スターや推しのためでも、ペットであっても、誰に対してもそれは等しく祈りを捧げる要請ができた。


その頃はまだ嘘という確証がなかったので、本気でその人の父親が良くなればいいなという願いから、祈りの依頼をしてみた。


その指定の日時になり、祈りが開始された。


依頼の内容にもよるけれど、大抵二三十分ほどで完了する。


けれどこの日は、数分もすると、するりとすり抜けて、祈りの対象が見えず、そこには何も無いような空虚さがあった。


皆が送る祈りの暖かいエネルギーがすり抜けて舞っていた。



こんなことははじめてだった。



それで私は確信した。彼女は嘘をついていると。


それから私は彼女の話すことはもう信じなくなって、振り回されることもなくなった。


そのうち疎遠になり連絡も取っていないけれど、彼女を知る人からは、「父が···」とかの嘘をまだ懲りずについていると聞かされた。


「私もなんか変だな、嘘っぽいなあとずっと思っていたんだよね」

「真に受けずに、話し半分に聞いてスルーでいいと思うよ」

薄々とでもみなまわりは、それは嘘だよねって感じていたわけだ。


構って欲しくてしているのか、単に現実逃避なのかはわからないけれど、それだと人から遠ざけられてしまうだけだよね。



私は祈りのサークルに、虚偽の情報を鵜呑みにして、祈りの依頼をしたことを詫びた。

貴重な皆さんの善意と時間とエネルギーを無駄にさせて申し訳ありませんでしたと謝罪した。

「エネルギーは巡るものですから、仮に嘘のものに対して送った祈りのエネルギーだとしても、そのエネルギーは他に真に必要とする人のところへ届いていると思いますよ」

会長のその言葉に心が洗われるような気がした。


祈りのサークルは今はもう解散してしまっているけれど、祈りのエネルギーは巡るというあの言葉は、今でも私の心を暖めてくれ

ている。


そして、頻繁に嘘をつくということは、結局誰かからのエネルギーを本当には受け取ることがないんだなと思っている。


無意識かどうかに関係なく虚言を吐き続ければ、マイナスが増えて行くのは間違いない。


自分自身が受け取れなくしているのだからね。

年季の入った嘘つきな人は、大抵不幸、満たされない人生になっているように思う。


病的に嘘をつく人が空っぽに見えるのも、エナジーバンパイアが常に満たされず飢えているのは、きっとそのせいなのだろう。



(了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ