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万年モブですが問題はありません

シリーズ十作目にしてモブからヒロインへ昇格することが決まったと、ゲームの神様から通達が来た。


「まず、そなたの名前を決めなくてはな」


シリーズ九作を通してモブだった私には名前すらなかった。


「無名のままが良いのですが······。モブのままでも全く構いません。むしろモブのままでいさせていただけませんか?」

「とりあえず、名前だけでも決めなさい」

「えっ?自分でつけてもいいのですか?」

「もちろんだとも」


私は悩み過ぎてしまい、一週間経っても名前を決めることができず神様からお叱りを受けた。


「す、すみません。私やっぱりヒロインなんて無理です。どうかモブでいることを許していただけませんか?」

「ならぬ」

「な、なぜなのでしょうか?」

「皆必ず一度はヒロインも脇役、悪役もモブも一通り経験しなければならないのだ」

「い、いきなりヒロインではなくて脇役ではダメなのでしょうか?」


私がヒロインに攻略されるのはともかく、私が誰かを攻略するなんて······無理すぎる!


それに、好きなキャラ一直線だとゲームが早々終わってしまい、つまらなくなってしまう。

何股とか、ハーレムなんてとてもじゃないけどできないよ。


ヒロインじゃなくて、ヒドインならまだいけそうかな?


乙女ゲームなんて、そもそも私には不似合いなのに。


名もなきモブでこそ、私は存在価値があるのよ。



「全く欲の無い奴だのう。ではこういうのはどうだ?物語の世界自体を浮気や不倫が誰でも当たり前の世界で、その事で誰も揉めたりしないから、罪悪感無く楽しめる設定にしてやろう」

「······そ、それはもはや乙女ゲームではないのでは?」

「実験的作品だ」


それだとドキドキはらはらが減りそうな気がするけど、いいのかな?

何人と浮気するか、何人と不倫するかを競うゲームなの?

結婚がゴールではないってことよね?


「ええい、ぐずぐずするな!もうそれで行け」

「な、名前は······」


オロオロするだけの私に業を煮やした神様が長い杖を振った。


「お前の名前はナマエ·ナッシーじゃ」


そ、それはどこの国風?ナーロッパ風というよりもダシャレ国風味が······。


「さあ行くのじゃ!」


······この神様って大丈夫なのかな?


「······わかりました、行ってまいります」



♢♢♢



私が送り込まれた世界では、王族は親子で結婚、兄弟姉妹とも結婚する近親婚が普通にある、古代エジプトのような世界だった。


王や王子の妃や側妃になった場合は、もう浮気や不倫はできないということだけが縛りのようだ


現在この国の王には五人の妃がおり、三十八人の側室と五十五人の王子に四十五人の王女がいる。

女官や奴隷、踊り子などが産んだ子はカウントされていないから、王の子の正確な数は不明だ。


私はその四十番目の王女ナマエ·ナッシー十六歳だ。


なんだかもう、こんなに親族が大勢いると既に私はモブじゃないかという気がする。

王女だけどモブというのは悪くないかも。


ナッシー二世である父は現在五十九歳、このゲームでは①父の新しい妃になるルート②兄か弟の正妃になるルート③他国の王や王子の元に嫁ぐルート④家臣と駆け落ち平民落ちルート⑤誰にも嫁がずに浮気と不倫三昧ルートの五つが用意されている。


私は既に二人の兄に愛されている。


そのうちの一人である十一番目の王子である兄には正妃がおり、側室も二人いる。その側室の一人は私達の姉だ。

もう一人の兄はまだ正妃はいない三十六番目の王子。そのお兄様にも側室が今のところ一人だけいる。


大勢いる王子達は、王位争いで消えていく。

そうやって亡くなった顔も知らないお兄様達が何人もいるわ。


私が産まれた時にはもう他国に嫁いでいる姉達の顔も私は知らない。


兄弟姉妹で伴侶や恋人となる私達は家族ではあっても家族では無いみたい。


この世界では純潔は重要視されない。


他国に嫁いだとしても、そこでも何番目かの妻や側室なのだから、ヒロインという気があまりしない。


この世界では、結局私はモブなのだ。


だから私はモブとしての人生を謳歌したい。成り上がろうなんて思っていないし、父や兄と結婚するのはやっぱり嫌だ。


確かにこの世界では浮気や不倫をしてもされても誰も怒らないし、責めたりはしない。


それが普通の世界では当たり前のようだ。


それはハッピーな世界なのかな?それともメリバなのだろうか。


唯一のという存在がいない世界だものね。


自分にとっても、相手にとっても唯一なんていないのだ。


だから私は誰かの唯一にはなれないの。


恋愛における縛りの無い世界とは、そういうことよね。



私は自分の従者と恋に落ちて、兄達から離れた。


駆け落ちした私達を追う者はいない。だって私は、ヒロインという名のモブなのだから。



(了)


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