第六話 第7回秘密会議
「ではこれより第7回シックル投資会議を始める」
俺は某ゲ○ドースタイル、机の上で手を組み口元を隠すポーズをキメながら厳かに宣言した。
「同志・冬憑よ、投資の勉強は進んでいるか?」
「いや冬憑って誰だよ。俺は健太だっての。まあボチボチだな。少しずつは覚えてきたし、大輔が意外と丁寧に教えてくれるからな」
「ふむ……なら良し。基本は押さえたな。それと、今回康二兄さんにも協力してもらえたこと、感謝しているぞ」
康二さん。健太の兄貴であり、昔から何かと世話になってきた頼れる存在だ。今回の競馬作戦でも彼の協力は不可欠だった。
「ていうかさ、大輔。喋り方が妙に偉そうなのはなんでだよ? それに兄ちゃん、あの後かなり驚いてたぞ。預かった金額が大金すぎて、めちゃくちゃ真顔だったからな」
「ははは……まあ運が良かったんだよ。あの馬が強いのは“情報収集”で知ってたしな(本当は未来知識チートのお陰だけどな!)」
「お陰でNTDの株も、想定よりも多く買えそうだ。康二兄にも『ありがとう』って伝えておいてくれ」
「おー、それは良かったな。でもなんでNTDなんだ? 電力関連の株も勧めてたし、実際に儲かってただろ?」
「理由は二つだ。ひとつ、電力会社の株がそろそろ上限だった事、もう一つは狙ってる情報通信関連において日本ではNTDがほぼ独占状態にある事、それに公募時点での募集金額も想定より安かったからな」
「って事は……かなり上がると見てる?」
「倍は固い。他の投資家もみんな狙ってるみたいだからな」
「半端ねえな……お前、中学生なのにどれだけ稼ぐ気だよ」
健太の呆れ顔。そりゃそうだ。
俺は少しだけ真剣な表情に戻り、声を落として言った。
「正直、いくら稼げるかは分からん。だが、できる限りのことはするつもりだ。ただひとつ勘違いするなよ。今の俺のやり方は、基本の投資スタイルからすれば完全に邪道だ。半ばギャンブルみたいなもんだ」
「ギャンブル……」
「本来の投資ってのはな、余裕資金を使って長い目で運用するのが基本なんだよ。せいぜい『貯金よりちょっとマシ』って感覚でやるべきものだ。だから間違っても真似するなよ?」
健太は腕を組み、唸るように聞き入っていた。そして当然の疑問を投げかけてくる。
「じゃあ……なんでそんな無茶なやり方してるんだ?」
俺は少し身を乗り出し、周囲を気にして声を潜めた。
「――誰にも喋るなよ。来年以降、日本は空前絶後の好景気になる。俺はそう“読んでる”」
「好景気……?」
「ああ。だからこそ、その波に乗るための種銭がどうしても必要だった。急がざるを得なかったんだ」
俺の脳裏に浮かぶのは狂乱と熱狂、そして破滅をも孕んだ光景。
そう、あのバブル景気の到来である。
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