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未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す  作者: Edf
第十二章 アメリカにて大勝負
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第七十二話 アナハイム国際会議にて

「子供用のスーツってのもあるんだな」


「大輔も意外に似合ってるよ」


 まあスーツ姿には長年着慣れていたせいか、そこまで違和感はない。だがこうして健太に褒められると、ちょっとむず痒い。


「あら、本当に格好いいわよ、大輔君」


「馬子にも衣装じゃな」


 美和子さんは完璧にビジネススーツを着こなし、まるで海外ドラマに出てくるキャリアウーマンのようだ。


 爺さんは、当初甚平姿で行こうとした様だがドレスコードに引っ掛かると説得されやむなくスーツスタイルへ変更


「ふん、甚平で通すつもりじゃったのに、ドレスコードだ何だとうるさいの〜」


 ぶつぶつ文句を言いながらも、結局スーツを着せられている。しかも鏡の前でやたら姿勢を直したり、ネクタイの角度を確認したり。……乙女か。


「まあまあ爺さん、意外と似合ってるから安心しなよ」


「息苦しくて叶わんわい」


 口ではそう言いつつ、顔はまんざらでもなさそうだ。


「では参りますか、戦場へ」


 美和子さんが短く告げ、俺たちは国際会議場へと足を踏み入れた。今日の目的はただひとつ――マイクロンソフトCEO、ビル・ゲイツとの接触だ。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆


『このように、未来のネットワーク社会の到来において、我が社が担うべき役割は――』


 壇上から響くスピーチに、会場中が引き込まれていた。これが数年後、世界を動かすカリスマの言葉か。通訳を介さず聞き取れるよう努力してきてよかったと心底思う。


『――ご清聴、ありがとうございました』


 拍手が会場を包む。俺達も思わず手を打ち鳴らした。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 壇上から降りてきたビルへ、美和子さんが一直線に歩み寄る。警備が立ちはだかるが、ビル本人が片手で制した。


『初めまして、ビル。私は日本で投資コンサルタント会社を経営しております、ネクスト代表ミワコ=カザマと申します。先ほどのスピーチ、大変感銘を受けましたわ』


『おお、君が例の日本企業のCEOか。まさかこんな艶やかな女性とは知らなかったよ。いやはや、失礼したね。私はマイクロンソフトCEO、ビル=ゲイツだ。どうぞよろしく』


 掴みは上々。ビルの目尻が愉快そうに細められる。


『先ほどのスピーチで語られた未来のネットワーク社会、その構想に深く興味を抱きました。もし差し支えなければ、詳しくお話を伺えませんか? 本日この後のご予定は?』


 ビルは一瞬考え、隣の秘書に予定を確認する。


『ううむ、残念ながらスケジュールが詰まっているようだ。Mrs.美和子、こんな美人の誘いを断らねばならんとは……残念な事だよ』


 そう残念そうに肩を竦め、会話を切り上げようとした――その時。


『開発コード、NTカーネルについて興味があるのですが、如何ですか?』


 俺が口を挟むと、ビルの足がぴたりと止まった。驚愕の表情で振り返り、俺を真っ直ぐに見つめる。


『……失礼したねボーイ、今君は何と言ったのかね?』


『此方こそ失礼しました。私、ネクストにて投資アドバイザー(仮)を務める、ダイスケ=カザマと申します。代表であるミワコ=カザマの息子です』


 そう言って差し出した名刺を、ビルはしげしげと眺め、そして大きく目を見開いた。


 ――よし、釣れた。ここからが正念場だ。

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