間話八 年始はゲーム三昧
1989年元日の初詣。康二兄と晴彦さんの間に電流が走り、由佳さんが「まだチャンスはあるな!」と隠れて宣言する場面を見た俺は、心の底からこう思った。
(……俺の正月、波乱含みすぎだろ!)
その後岡崎兄弟達と別れ、家に戻る頃にはあの緊張感はようやく影を潜め――代わりに、今度は年始らしいバカ騒ぎが始まるのである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ーー ティウン・ティウン・ティウン ーー
現在32回目の挑戦にして、またもや無惨に散った俺だ。
「カプンコ◯ねーーーー!」
年始から「ポップマン2 ウィリーの野望」のクウキマンに捻り潰される俺。いや、言い訳させてもらおう。これには深い事情があるのだ。
ーー1時間前。
「あ〜、またやられた! 兄貴〜助けて〜!」
「任せろ、小次郎! 初代をクリアした俺に隙など無い!」
ここまで答えたからには弟からの助けに対して答えるしかないのである。そうして挑戦を繰り返すこと33戦。
「兄貴……そろそろ相手を変えたほうが……」
「ま、待て小次郎。あと一戦……あと一戦だけ……!」
そして34戦目も儚く散り、俺の魂は天へ召されたのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あ〜、兄貴の意識が飛んだみたいだから、別のゲームにしようか」
「それが良さそうだね」
「なら永遠、あれが良い!」
永遠ちゃんの提案で選ばれたのは「熱血高校ドッチボール部」。
「ふふ、小次郎君。我が祖国ソ連の壁に立ちはだかろうと言うのかね?」
「誠司兄、主人公はいつだって正義の味方なのだよ!」
バキバキと火花を散らす両者。しばらくして意識を取り戻した俺の目に映ったのは――誠司が勝利し、小次郎が悔し泣きする場面だった。
ようやく挽回のチャンスが来た!
「誠司……よくも弟をやってくれたな。今度こそ小次郎の仇は俺が取る!」
そう宣言してコントローラーを握り、当然ある国を選択する。
「USA! USA!」
「ほう、大輔。冷戦の決着をここでつける気か?」
「HAHAHA! 君の未来はYou loseだ!」
気合十分で挑んだが激戦にもならず――あっさり惨敗。
「ば、馬鹿な……誠司、貴様このゲームやり込んでるな!」
「答える必要はない!」
劇画タッチでキメやがった。余りの悔しさに歯軋りする俺、くそぉ……!
「じゃあ次は永遠ね。大輔兄、よろしく」
永遠ちゃんが相手か。小学生相手だ、多少は手加減しないとな。
「ククク! 花園とは……永遠ちゃん、もっと良いチームでもいいんだよ?」
「いいの。リキが好きなの!」
「ふふふ、では、対戦よろしくお願いします!」
おっ、永遠ちゃん中々やるね〜。しかし花園ではな〜、序盤から余裕のはずだったのだが……エース・ウィリアムの必殺加速シュートを放ったその瞬間――
『ぱすん』
……は? キャッチされた?
返ってきたリキの必殺シュートでウィリアムが沈み、あとは一瞬で袋叩きにされた。
「と、永遠さん……まさか、永遠さんもこのゲームをやり込んでいるとか……?」
「答える必要はない!」
劇画調で決めセリフを決める永遠ちゃん。俺は再び魂を抜かれ、忘却の彼方へ。
「あ〜あ。永遠、俺より強いのに……」
「僕もなかなか勝てないんだよね〜」
そんな誠司と小次郎の声を最後に、年始の夜はゲーム漬けで過ぎていった。
――なお、ポップマン2は結局、誠司に先を越されクリアされてしまい、俺の面子はさらに潰されたのである。トホホ……。
「貴様このゲームやりこんでいるな!」
「答える必要はない!」
ご存知ジョジョ第3部での花京院とダービー弟とのやりとり
熱血高校ドッジボール部
ファミコンの対戦ゲームとしては最高峰のゲームだと思います