第六十六話 経過報告及び奴等の帰還
年の瀬も押し迫る頃合いとなりましたね、大輔です。
竜星会やレジスタンスとの対決も終息し、ようやく街も自分の周囲も落ち着きを取り戻してきました。
あれだけ暴れ回った藤林の爺さんも、税金の件で一時は「詐欺じゃ〜!」と泣き喚いていましたが、道場の立て直し計画が進み始めたことで、ようやく機嫌を直した模様。最近は“節税対策”と称してネクストにちょくちょく顔を出すようになったとか。……奈々さん情報によれば、経理担当に妙に食い込んでいるらしい。やめろジジイ、会社を私物化するな。
さて、年末恒例の資産チェックを行いましょう。四国電社やSomyなど、手持ちの株が年末にかけて爆上がりしたため、一度現金化しました。結果、手元資金は八億三千四百万ほどに。もっとも来年三月の大勝負に向け、一気に資金を集約するため、その八億は丸ごとネクストに預けることにしました。美和子さんも銀行筋に分散投資を仕掛けているようで、来年の動きが楽しみです。いよいよ「プランB」の本番です。
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「よろしいならば演奏だ! ここは既に我らのナワバリ、雌犬共、宴の時間だァ!」
「「「「YAーーーHAーーー!」」」」
現在、俺は地元のライブハウスに来ています。そう、来年から放送開始の伝説的音楽番組「イケるバンド天国」、通称イケ天。その参戦を目指し、年末に帰還したアンダードッグのステージを見に来ました。さすが地方ドサ周りで鍛えた経験は伊達じゃない。対バンを完全に圧倒しています。
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数時間後。
「いや〜圧勝圧勝! 今日も元気だお酒が美味いってね〜!」
「ちょっと昴! あんた運転あるでしょ。お酒禁止!」
「安心しろって。今日は由佳さんが運転するって言ってたから」
「……昴さん、調子乗り過ぎ、ギターも走りすぎでしたよ。微妙にテンポ乱れてました」
「うっ……マジか?」
メンバーは相変わらず元気一杯。言い合いながらも笑顔で、それぞれの個性がにじみ出ている。
「大輔、小次郎、健太! 久しぶり! 元気してたか?」
「元気は有り余ってるって。みんなも相変わらずそうで安心したよ」
後ろで控えていた誠司と早苗を紹介する。
「よろしくお願いします、大輔の友人の誠司です」
「初めまして。私、天童早苗と申します。演奏、本当に素晴らしかったです。すごく感動しました!」
実はさっきから一番テンション高いのがこの早苗。演奏中もキャーキャー叫びっぱなしで、俺と健太の鼓膜に大ダメージが。
そこで俺はニヤニヤしながら、小指を立てて一言。
「健太のコレだよ」
「ちょっ、大輔!」
「「「「「えーーーーっ!?」」」」」
アンダードッグの面々が揃って叫び声を上げた瞬間、早苗に容赦なくどつかれる。……いや、ちょっとしたジョークじゃん。
その後は女性陣同士が意気投合して大盛り上がり。俺と健太、それに誠司と小次郎は、完全に蚊帳の外だった。
……まあいいか。年末にようやく連中が戻ってきたんだ。