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未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す  作者: Edf
第八章 沖縄死闘編
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第五十四話 沖縄決戦②

 騒ぎの渦中、俺は裏口の配電盤へと走り込んだ。

 決戦前に練った作戦――ブレーカーを落とし、店内を暗闇に沈める。

 俺が一番“戦えない”からこそ任された役目だ。場所を下見して、サインを送るだけ。だが、こういう役割でも果たせるのは悪くない。


 カシャン、とブレーカーを下ろした瞬間、バーの中が一気に闇に沈んだ。


『?! 何が起こった!』

『電気が切れたぞ、誰か確認を――ぐっ!』

『ウェインの奴がやられ……っ』


 目を凝らしても店内は真っ暗だ。だが俺の耳には、かすかな衣擦れや風を切る音、肉を打つ鈍い衝撃音が響いてくる。

 一つ音が鳴るごとに、敵の声が一つ消えていく。


 健太か早苗か、それとも爺さんか。暗闇に片目を慣らしていたうちの連中が、次々と敵を狩りとっているのだ。


 ……俺はただ、喉を鳴らしながらその音が静まるの待つのだった。


 わずか一分弱。

 店内は嘘のように静まり返った。


 やがて店員が慌ててブレーカーを戻し、明かりが甦った時。

 そこに残っていたのは――椅子にしがみつくようにして立つジェフただ一人だけだった。


『やあジェフ。これでゆっくり話ができるな』


 剛田さんが、まるで旧友に声をかけるみたいな笑顔で近づく。

 ジェフは脂汗を流しながら、必死に威嚇を装った


『いい気になるなよ、これで勝ったつもりか? 仲間はまだ居るんだ、またいずれやり返すぜ!』


『なんだ、まだやるつもりだったんだ? 仕方ないな〜』


 剛田さんは言うやいなや、近くに転がっていた男の肩を容赦なく踏み潰した。


『ギャアアーーッ!』


 悲鳴が響く。その隣では、爺さんが淡々と、無表情で他の連中の手足を無表情で踏み折っていく。


 骨の軋む音。肉が潰れる音。

健太と早苗が思わず顔をしかめているのが視界に入った。俺も胃がひっくり返りそうだが、目は逸らさない。


 ジェフの顔からどんどん血の気が引いていく。だが、その瞬間その手が不意に懐へ――


『……死ね、ジャップ!』


 拳銃。銃口が剛田さんに向けられようとした、その刹那。


『ウギャッ!』


 ジェフの手に銀色のフォークが突き刺さっていた。

 振り返ると、爺さんが子供のような笑みを浮かべていた。


「儲けたのう。ええ土産ができたわ」


 そう呟きながら、ジェフが落とした銃を懐にしまい込む姿に、背筋がぞわりとした。


『なあジェフ』


 剛田さんの声が低く響く。

『面倒だがいつ来ても返り討ちにしてやる準備はしてあるんだ、再戦する気ならいつでも受けてやる、ひとまず景気付けだお前の四肢は全部折って行く事にするよ』


 バキィッ。


 ジェフの左腕が逆方向に折れ曲がる。

 絶叫が店に響き渡った。


 さらに右腕へ足をかけたその時――


『待て! も、もうやらない! 二度と舞子にも店にも手出ししない! 頼む、助けてくれ……!』


 その目に、初めて“本物の怯え”が宿った。

 爺さんと剛田さんは目を合わせ、わずかに頷き合う。ここで手仕舞い、ということらしい。



 剛田さんがジェフと話を続ける間、俺たちは倒れた連中を一纏めにし、懐から財布を抜き取った。身分証、現金、刃物や拳銃――物騒なものが次々と出てくる。


「おお、また二丁あったぞ。ええ土産じゃわい」


 爺さんが楽しそうに拳銃を掲げる。


「師匠、マジでやめてくださいよ! これ強盗じゃないですか!」


 健太と早苗が慌てて突っ込むが、爺さんは鼻で笑った。


「何、向こうも後ろ暗い身分じゃ表沙汰には出来んよ、それにそのまま奴等に使わせとくのも不味いじゃろ、ワシらで有効活用せんとの」


 そう言い切り理論武装した爺さんは、戦利品を風呂敷に包む、その姿はまるで山賊のようだった。


 ……こうして、沖縄二日目の夜は幕を閉じた。

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