第四十ニ話 シックル会議100回記念!
新学期も落ち着きを見せ、桜も色づき、暖かな季節となった。大輔です。
会社ネクストも上場直後の慌ただしさから抜け出し、今は新人教育に力を注いでいる。少し余裕が生まれたおかげで、俺もようやく念願の“例の会議”を再開できそうだ。
「ようやく周りが落ち着いたので、シックル第百回記念会議を始めたいと思う!」
教室に響く俺の宣言に、健太がすかさず突っ込む。
「いやいや! 第四十三回までやったはずだろ? その後どこ行ったんだよ」
「おめでたい新学年ということで、キリのいい数字に切り替えただけだ。細かいことは置いとけ」
「置いとくな!」
まあそんな細かい設定はどうでもいい。今日の目玉は別にある。俺は隣に座る二人へ目を向けた。
「というわけで、そこの二人。自己紹介をどうぞ」
「新入部員としてよろしくお願いするわ!」
「僕もよろしく〜」
なんと、新メンバーは早苗と誠司の二人。
「マジかよ……二人とも投資に興味あるのか?」
「財テクってやつでしょ? 興味がないわけじゃないわ」
「僕も最近お金のことで色々あってね。少し学んでみたいんだ」
「ふむ、興味があるなら歓迎しよう!」
俺は即答した。早苗が家計のやり繰り上手なのは未来で知っている。誠司まで加わるとは意外だが、それなら一発派手にやってやるか。
「では、まず現在の資産状況の確認をしよう。現在、俺の自由に使える資金は二千万ちょっと。持ち株の評価額はようやく四億を超えたってところだな」
「「「ぶーーーーっ!!!」」」
三人同時に吹き出した。机も濡れるし、きちゃない。
「ていうか、健太! お前は去年から知ってただろ?」
「ば、馬鹿言うな! 去年は九千万って聞いたんだぞ!? そこから四億? もう桁が違いすぎて意味わからん!」
「九千万でも十分おかしいわよ! 貴方たちの金銭感覚どうなってんの!」
「僕もそう思う……」
まあ普通に考えれば、中学生が扱う金額じゃないわな。
「冗談じゃなく、本当にそんな資金を動かしてるの?」
俺は鞄から収支報告書を取り出し、机に置いた。
「「「…………」」」
三人とも穴が開くほど紙を見つめ、言葉を失っている。
「というわけで、現在の俺の資産状況はこんな感じだ。もちろん、ここまでやれとは言わない。だがこういった投資の勉強はいい経験になるはずだぞ」
「でも、どうやって中学生の身分で投資してるの?」
「母さんの会社が投資コンサルをやっててな。名義上は母さんが資産を管理してくれてる。もし本気でやりたいなら、皆の分もお願いできるよ」
「そうね、いずれお願いするわ」
「うん、今は無理だけど、いつか頼むよ」
そうやって皆で交流を深めているそんな時
「ねえ、ちょっと待って」
早苗が紙を指差す。
「ここに“健太への貸出二百万”ってあるんだけど?」
「ああ、それな。貸出じゃなくて投資に切り替えとかないとな。そうそう健太、例の先生への月謝百万円、ちゃんと領収書もらってこいよ?」
「あっ、馬鹿! 余計なこと言うな!」
「……な、何ですってぇえええ!!!」
教室に早苗の怒声が轟いた。しまった、藪蛇だ。