第四十話 仲間?が増えたよ
寒風吹き荒ぶ季節もようやく過ぎ去り、柔らかな陽射しが差し込む春となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか、大輔です。
さて、この前の円福寺事件の後。早苗と誠司の二人とは色々と話をする機会がありました。最初は互いにぎこちなかったのですが、不思議なもので、事件を共にした仲というのは思った以上に強い縁を生むようです。気が付けば一緒に昼を食べたり、休日に顔を合わせて遊んだりと、いつの間にか仲間の一員といった雰囲気になっていました。
……まあ、早苗の本当の目的は少し違うようですが。
「いい加減に藤林先生を紹介しなさいよ!」
「勘弁してくれよ、俺が師匠にどやされちまう!」
校庭の片隅で、早苗と健太が軽い組み手をしながら口論している。軽いと言いつつ、その動きは常人の目にはまるで舞うようで、目で追うのも難しいほどの速度と鋭さだ。
藤林先生――それが健太の師匠の名前らしい。武道界隈では実戦派として伝説的な存在で、数々の修羅場を切り抜けてきた人物だとか。
早苗は、自分が習っている合気道の師範からその名を聞き、どうしても弟子入りしたいと健太に詰め寄っているのだ。だがこの藤林先生、弟子を取らないことで有名で、健太がどうやって弟子になったのかを知りたがるあまり、こうして日常的に絡むようになってしまったのである。
「はぁ〜、二人ともすごい動きだねぇ」
「ふん! 俺には子猫同士がじゃれ合ってるようにしか見えんがな!」
横で見ていた誠司が茶化す。彼はというと、事件以来なぜか俺に懐き、暇さえあればこうして顔を出すようになった。
ちなみに彼を裏切った元仲間二人組、どうやら彼への報復を考えていたらしいのだが――。
「今後も誠司に絡むようなら、また“隠密”を連れて挨拶に行くのでよろしく!」
健太から忠告を受けていた俺が、こう脅しつけてやると、効果は覿面。二人は相当ビビったらしく、その後誠司にちょっかいを出すようなことはなくなった。
どうやら誠司はどこからかこの話を聞きつけたらしく、それ以来さらに俺達に懐くようになってしまったのだ。
……まあ、俺としてはそこまで悪い気はしない。こうして仲間が増えていくのは素直に嬉しいからな。
「おい二人とも、その辺にしとけよ。そろそろ昼休み終わるぞ」
俺が声を掛けると、健太と早苗は同時に動きを止めた。
「ふぅ……でも絶対、藤林先生には会わせてもらうから!」
「だから絶対相性最悪だって……」
「じゃ、また後でね」
そう言って三人はそれぞれ教室へと戻っていく。
こうして俺たちの日常は少しずつだが賑やかになっていく。事件で繋がった縁が、今では日々の笑い合いに変わっている。
これが、最近の俺たちの“日常”かな。