第三話 タフネゴシエーション
「逆行知識でウハウハ左団扇生活〜」
この時代、雑誌のおまけページにはよく、こんな誇大広告があった。
「誕生石の金運パゥワーや、オーラが篭った霊石の力で、俺はここまでお金持ちになりました!」
物凄く胡散臭く眉唾物で、俺自身全く信じていなかった訳だが、よくよく考えると今の俺なら、あれをリアルに再現することも不可能じゃない。
夢のような状況に気付き、内心で高笑いしてほくそ笑む俺。
「俺自身がモデルとして広告に載るのもアリか……」
などと考えていたのだが……しかし考えが甘い、甘すぎた。最初の地点で、いきなり躓いたのだ。
そもそも、現役中学生が株式投資を行うのは、不可能ではないとは言え。しかし現実的には厳しい。
12歳の俺が資金や株式の手続きを自由に扱えるわけもなく、母の協力が必要不可欠となる為だ。
母、風間美和子。31歳、母子家庭で兄弟二人を立派に育て上げた、保険のセールスレディにして、現役のトップ営業ウーマン。
説得するのは、容易ではないタフネゴシエーターなのである。
それでも俺は意を決し、全力で交渉に挑む事に。
「美和子さん、本当申し訳ないけど、俺のために貯めてくれていた定期預金を解約して、株式の投資資金として使わせてください! それと株式の購入とかも、当面の間代理でやってくれませんか!?」
……想像してみてほしい。中学入学間もない12歳の少年が、母親に向かってこんなことを言っているのだ。無茶苦茶である。
母は一瞬、ポカンと目を丸くして「え? 株? ……大輔君、何か悪いものでも食べたの?」と心配顔である。
だがここで俺氏、過去の営業テクニックを駆使する。
あの手この手で煙に撒きながら、積極的に未来の投資の可能性を指し示す。過去の知識と経験をフル活用して、母に協力を要請し
そしてようやく……
「そもそも定期は大輔君のためのお金だから、何に使っても構わないわ。協力もする、でも、高校に行くときは、バイトでも何でもして私と小次郎を助けること、それが条件よ。」
母のその言葉を聞いた瞬間、12歳の俺は感動のあまり涙が溢れそうになった。
こんなにも信頼して応援してくれる母ちゃんの懐の広さと切符の良さに、心から感謝せざるを得なかったのだ。
こうなった以上、母の期待には全力で応えねばなるまい。
胸に熱い決意を秘め、俺はようやく新たな人生のスタートラインに立ったのだった。
未来の知識と、母の支援――これで夢の「逆行投資ライフ」は現実のものとなる。
……まずは、どの株を買うか、じっくりと吟味しなければ。
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