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未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す  作者: Edf
第四章 叛逆のunderdog
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第二十八話 噛ませ犬武者修行の旅へ

 暦も八月を過ぎ、蝉の声が遠のき、夕暮れの風にわずかな涼しさが混じり始めた。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。こちら大輔です。


 さて、あれからのアンダードッグですが、相変わらず絶好調、というか、地元一帯のライブハウスを片っ端から荒らし回っております。前座での出演ばかりなのに、毎度毎度観客の記憶に爪痕を残し、気がつけば「伝説の前座」などと呼ばれるようになってしまっています。


 その結果どうなったかと言えば……「アンダードッグ前座お断り」の回覧が近隣のライブハウスに出回る事態に。

 要は、メインを食い散らかし過ぎて他のバンドが泣きを入れたらしい。正直笑えない話ではあるが、彼らにとっては最高の勲章なのかもしれない。


 面白いことに、メインでの出演依頼も来ているのに、なぜか本人たちは頑なに断っている。理由を聞けば、「対バンで噛みつけないのは気合が乗らない」とのこと。……いや、それもう前座の意地とかそういう次元じゃないだろう。


 ちなみに演奏前、メンバーを鼓舞するために何かいい方法はないかと相談されたことがあったので軽い気持ちで、あの有名な“ハードマン軍曹”式の檄を真似してみては、と冗談半分で答えたのですが――これが予想以上にハマってしまいまして。


 以来、ライブ前のリハでは軍隊仕込みの号令が飛び交い、気づけばバンド全体が妙に軍隊ナイズされてきている。舞台袖で立ち会うたび、俺は正直ちょっと怖いんですけど。


 そ、それはさておき、俺自身のプロデュース業もようやく一息ついた訳で、これでとりあえずアンダードッグを「走り出させる」ところまでは役目を果たせたんじゃないかな。


 で彼女等はこの先どうするのかと尋ねてみたんですが、なんと『逆境』のテープ売上と各メンバーの貯金をかき集め、中古のバンを購入したという事らしいです。


 そしてこれから全国行脚の武者修行に出るとのこと。南回りのルートで全国のライブハウスを巡り、対バン相手を片っ端から食い荒らしていくつもりの様です。まさに咬ませ犬の逆襲だ。


 ただ、旅に出るなら曲のレパートリーはどうするんだろうと心配になって尋ねてみたんだけど、どうやらそこも心配は無いらしい。


 何故ならミーコさんが由佳さんの新しい声に触発され、これまでの楽曲を大胆に“魔改造”し、ほぼ新曲といっていいレベルに仕立て直したのだという。


 しかも「弟子に負けられない」と寝食を忘れて作業してたらしく、最近俺を見る目が妙に燃えていたのはこのせいだったのか。殺気と勘違いして恐怖してたのは内緒にしとこう。


 そして三日後――俺と健太、美和子さん、小次郎の四人で、旅立つ彼らを見送りに集まった。


「それじゃあ由佳さん達、メンバーの安全と、将来ビッグバンドになることを期待してますよ」

「おう、みんなには世話になったな!」

「健太に大輔、借りは必ず返すからな」

「みんな、またね〜!」

「いずれ、再びお会いしましょう」

「弟子……また会おう」


「し、師匠がしゃべったーー!!」


 最後の最後に思わぬ爆弾が落ちてきて、一同がずっこける。けれど笑顔に包まれた別れは、きっと最高の門出だろう。


 こうして、ドタバタと慌ただしかったバンドプロデュースの日々も幕を下ろしました。俺にとってはひとまずのお役御免。だが同時に――アンダードッグが本当の意味で「自分たちの旅」を始めた瞬間でもあった。


 後年、このバンドには何度か助けられることになるのですが……それは、もう少し先のお話。

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