第二十一話 大輔P爆誕!
とりあえず少し考えた結果、少々無謀と判断し由佳さんを説得することに全力を注ぐ。
「とりあえず駄目、そんなのバンドメンバー全員に影響を与える話じゃん。それにズルはいかんよ、ズルは」
うっ、散々未来知識を利用している俺が言っても、自分でも白々しい気がする。美和子さんも笑ってないで助けて!
「1曲、1曲だけでいいんだ。元々この辺でどうにかならなきゃ解散も考えてたし、一度だけでいい、みんなで華やかなステージに立ちたい!」
「……この後の人生に影響が出るとしても?」
実際、この後バンドは解散する。だがバンド時代に培ったメイクアップの腕を活かし、由佳はメイクアップアーティストとして大成する。引っ張りだこになる未来を俺は知っている。
由佳さんは一瞬だけ目を閉じ、考え込む。しかしその答えはすぐに出たらしい。
「構わない。例えどんな未来だったとしても、選択して進むのに変わりはない。チャンスがあるのなら、私はそれを掴みたい!」
うわぁ、相変わらずの男前っぷりだ。思い切りが良すぎる……。先程の人生に影響の話で、未来の成功は理解しているだろうに、迷わず前に進むのか。
「あ〜あ、由佳ちゃんは一度決めたらテコでも考えを曲げないわよ。よく知ってるでしょう?」
知ってるよ……だから困ってるんだって! 説得は困難どころじゃない、無理だ。
……しゃーない。由佳さんなら歌って流行りそうな曲の目星はある。やるからには中途半端はなし、全力でやるしかない。
「ふ〜、とりあえず由佳さん、バンドのメンバーに強化合宿の許可を取りに行ってくれ。美和子さん、音楽スタジオの予約を2ヶ月分お願い」
「了解よ」
「あ〜、追加でボーカルレッスンの先生も2ヶ月分予約お願いします。費用は全額私が負担します」
「あら、由佳ちゃんは私の妹よ! 予算は広告費として会社側で負担するわ。お金のことは気にしないで。大輔君は全力で由佳ちゃんのサポートをお願いね!」
由佳さんが唖然として口をパクパクさせる間に、すべての手続きや準備が決まっていく。スタジオ、講師、合宿……美和子さんの協力もあり、物事は驚くほどスムーズに進むのだった。
「しゃーない、バンドプロデュース、いっちょやったりますか」
由佳さんの目がキラリと光る。小次郎も期待に目を輝かせている。
こうして未来に影響を与えるかも知れない「たった一度の挑戦」が、全員の協力のもと、徐々に現実の計画として形を成していく事となる。
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