第十九話 ネタバレの季節
現在、ネクストでの俺の役割は、未来知識を駆使した投資銘柄の策定である。
選定した銘柄は四つ。投機枠として火立とパラソニック、堅実な投資枠としてトヨンタ、そして――本命のSomy。投資にも投機にも使えるハイブリッド株で、今後長く主力として運用していく予定だ。
作戦は単純明快。四月の最安値付近で買い揃え、トヨンタ以外の三銘柄は九月末までに利確する。
十月に何が起こるかを知る俺だけが、何故このタイミングでの利確するのかを把握している。スタッフにはまだ言えない。だからこそ、九月に色々と補足説明を加える必要がありそうだ。
……そう、きたる暗黒の月曜日に備えて。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
帰宅すると、今日は由佳さんが遊びに来るらしい。美和子さんが戻る前に夕飯の準備を済ませねば。中学生ながら、未来の投資家は家事もこなすのだ。
その夜――
「もう美和子さん、テレビを見ながら食事はダメでしょ!」
「由佳だからいいのよ」
「小次郎、口の周りにご飯がついてる。取ってあげるね」
「お願い〜!」
「仕方ないな〜」
すると由佳さんが突然俺を指差した。
「いや、誰だお前?」
「誰って、現在ピカピカの中学二年生、風間大輔君だよ?」
「私の知ってる風間大輔はな〜、家の手伝いなんか目もくれず、外で暴れ回って道端で◯ンコ突いてるようなガキだ!」
「男子、三日会わざれば刮目して見よって言うだろ? 一年も経てばそれは蛹から蝶になるよう変革もするさ」
「いや、中学入ってすぐからおかしかったじゃないか! あの頃から違和感バリバリだったが、もう黙ってらんねぇ、正体を表せ、怪人め!」
怪人呼ばわりとは随分な言い草だ。横を見ると、美和子さんと小次郎君はそっぽを向き、鳴りもしない口笛を吹いている。
「あれ? 姉貴は兎も角、小次郎もこの前までこっち側だっただろ? 何隠してやがる」
そう、例の作文の後、小次郎にはこれからのことも考え“逆行転生してきた”ことを明かしてある。納得させるまで骨が折れたが。
「大輔君、由佳ちゃんに隠し事は無謀よ。もう観念しなさい」
美和子さんが笑いを堪えつつ、鋭く指摘する。そうだった……この人の直感は超能力レベルだったのを忘れていたわ。
「やっぱり何か秘密があるんだな? さあキリキリ吐きやがれ」
やれやれ、仕方ない。俺は立ち上がり、ポーズを決めて宣言する。
「たった一つの真実見抜く! 見た目は子供、頭脳は大人――その名は、名探偵大輔!」
ドヤ顔で決めた瞬間、周囲はぽかーん。しまったコレ未来のネタだったわ――。
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