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未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す  作者: Edf
第三章 備えよ常に
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第十八話 相棒の条件

 時を少し遡ること、三月中旬。俺は美和子さんと、ちょっとした口論になっていた。


「駄目だって、これは使えないよ!」


「いいのよ。このお金は大輔君が自由に使っていいお金なんだから」


 問題はNTD株を三百万円で利確した際の資金の使い道だ。俺としては当然、会社の資産として再投資に回すべきだと考えた。だが、美和子さんの意見は違った。


「当座の資金は借入で十分賄えるわ。大輔君のお陰でネクスト設立の目処は立ったんだもの。このお金は自由に使いなさい。領収書だけ出してくれれば税金関係は私が処理するわ」


「会社のためにも資金は余分にあった方がいいだろ!」


「大輔君の未来知識があれば、バブル崩壊まで会社を大きくするのは問題ないはずよ」


「それにしたって……!」


「私はね、大輔君がこのお金をどう使うのか、それを一番楽しみにしてるの!」


 強く言い切られ、俺は返す言葉を失った。結局、その九千万は俺の自由裁量に任されることになったのである。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「というわけで、ここに自由に使えるお小遣いが約九千万あります!」


 通帳をテーブルに置き、第十五回シックル会議の開幕を宣言する。


「お前大概にしろよ! 中学生のお小遣いってレベルじゃねーぞ!」


 健太がテーブルを叩いて怒鳴る。そりゃそうだ。だが驚くのはまだ早い。


「既に八千万については投資先を決めてある。残り一千万についてだが……そのうちの二百万を健太に貸し出すことにした」


「ぶはぁっ!? げほっ、ごほっ……おまっ、鼻に入ったっ!」


 健太が吹き出して咳き込む。


「完全にフリーハンドだ。どう使うかはお前が決めろ」


「な……なに言ってんだお前……」


 目を白黒させる健太。アヒルみたいに口をパクパクしている。


「実戦テストだ。これまで学んだ知識を使ってみろ。もちろん俺に相談してもいい」


 しばらく呆然としていた健太だが、やがてゆっくりと首を振った。


「……いや、それはしない。それは大輔の行為を無にするものだから」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は笑みを浮かべた。


 やっぱりこいつを相棒に選んだのは間違いじゃなかった。康二さんほど突出した才能はないかもしれない。


 でも、他人から無条件に信頼を勝ち取れる力がある。金の話なんて普通は生臭くて人にしづらいものだ。だが健太となら、こうして自然に話せる。


「よし。なら中学卒業のときにでも結果だけ教えてくれ」


「わかった。やってみるよ!」


「ヨシ! これにて第十五回シックル会議は閉幕!」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 その夜、自宅に戻った俺は、炊事場で夕飯の支度をしている美和子さんに声をかけた。


「とりあえず、無期限で二百万ほど健太に貸すことにしたよ」


 包丁を動かしていた美和子さんはピタリと手を止め、驚愕の表情で俺を振り返った。次の瞬間、腹を押さえて肩を震わせる。


「ふ、ふふっ……あははははっ!」


 笑いを堪えようと必死に震えている。しかも刃物を握ったまま。


「ちょっ、危ないからやめてっ! ホラー映画みたいになってるから!」


 その姿を見た俺は思わず苦笑しながらも、危なっかしい手つきの美和子さんの心配をしていた。

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