表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来知識で逆行した現代でスローライフを目指す  作者: Edf
第三章 備えよ常に
20/195

第十五話 難敵現る②

 中学生の俺が「投資アドバイザー」と名乗り、名刺まで差し出したものだから、さすがの康二さんも椅子からずり落ちそうな顔をしていた。だが話を進めるうちに徐々に冷静さを取り戻したらしく、パンフレットをじっと見つめて唸る。


「……しかし月額三十万ってのは、さすがにぼったくり過ぎじゃねぇか?」


「これは四月に《ネクスト》が法人化してからの正式サービスの予定なんですが、顧客ごとに資産運用の方針をまとめたポートフォリオを提示しますし、うちが自社で運用している資産の状況も、証拠をつけて開示するつもりですよ」


「なるほどな。景気のいいこと言って金だけ集めて、あとは放置……そういう連中とは違うって訳か」


「はい。そう認識していただければ。まぁ、どれだけ気をつけても詐欺は起こるときゃ起こるんですけどね」


「お前が自分でオチをつけるな!」


 康二さんが呆れ顔をする。俺と健太は笑いながら、追加で頼んだコーヒーを啜った。


 しばらく沈黙。康二さんは手元のパンフレットを指でトントンと叩き、思案している。やがて静かに口を開いた。


「……いいだろう。この条件なら三十万でも安い」


「え、大丈夫? うち、一応は資産家向けサービスだよ?」


「問題ない。NTD株を担保に銀行から借り入れる。資産運用が上手くいけば確実に増やせる算段はある」


「まいどあり。契約に関しては、うちの社長とやり取りしてくださいね」


「お前が社長じゃないのか?」


「おいおい、俺まだ中学生っすよ?」


「ああ……」康二さんが額に手を当てる。


「余りにも自然に投資の話をするから、大人と喋ってる気分になってた。完全に錯覚してたわ」


 勘弁してくれ。中身はともかく、外見はどう見ても瑞々しい美少年だろ、俺。キリッとした目線を送るが、誰も突っ込んでくれない。


「大輔のお母さん……いや、美和子さんが社長なんだよね!」健太が笑顔で補足する。


 ――その瞬間だった。


 康二さんの表情がガラリと変わった。


 さっきまで冷静に数字を弾いていたビジネスマンの顔が、驚きと焦りを混ぜた“男の顔”に切り替わる。


「……それを先に言え!」


 立ち上がるや否や、伝票をひったくり、レジへ直行。支払いを済ませると同時に、俺と健太の言葉など無視して外へ飛び出していった。


「な、何だ今の……」


 俺と健太は唖然とし、残されたコーヒーカップを見つめ合う。


 ――あ、ああっ!? 思い出した!


 未来で康二さんと二人で新宿の居酒屋で飲んだとき、あの人が泥酔してポロッと漏らしたことがある。


 そういえば……あの人、美和子さんにベタ惚れだったじゃねぇか!


 冷徹なインテリヤクザ顔負けの男が、あんなに慌てて飛び出していった理由。

 それは間違いなく「社長=美和子さん」という一点に尽きる。


 ――しまった、これは早まったかもしれん。


 契約を取り付けたどころの話じゃない。これ、下手すりゃ康二兄が“別の意味”で会社に張り付いてくる未来が待ってるんじゃ……?


 俺は思わず頭を抱えた。

お読み頂きありがとうございます、皆さんの閲覧励みになっております


 後もしよろしければいつでも結構ですのでブックマークの登録や↓欄の☆☆☆☆☆にご評価して下さると大変嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ