黒玉事件・解決編②
翌日、ようやく大学に戻る目処もたったので、帰り支度をし花蓮といつものネクスト東京支部にて会話をしている。
「ようやく、これにて一件落着って感じね?」
「そだね、帰りに大吾さんの様子を伺ってから帰るよ」
コンコン!
「失礼します、お茶をお持ちしました」
「ありがとうマリちゃん、貴方も一休みしなさいな?」
「ありがとうございます、ですが業務が立て込んでいますので、失礼します」
そう言って彼女は頭を下げて出ていく。
「やれやれ、彼女ももう少し楽にしても良いのに」
実は、彼女こそ例のT大応援団壊滅事件で被害のあった花蓮の後輩だったりする
その後花蓮に心酔した彼女は、大学を辞めてまで花蓮に着いて来て東京支部の室長付秘書として収まった形となる。
偶に花蓮にこそ見せないが、鬼の形相で俺を睨んでる時がある
…このお茶雑巾汁とか混入してないよね?
その後、数十分駄弁った後、じゃお暇するかとなった時だった
コンコンコン!
「失礼します、あの、大輔さんにお客様です」
「俺?また?」
「誰かしら?」
東京支部はまだ俺の本拠じゃないってのに、誰だ?
「それが、張俊瑋と名乗っておられまして、風間大輔に話があると…」
「「?!」」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
対面に座る張俊瑋と、その後ろに控える崙老師の姿に、俺は緊迫感をもって相対している
不味いな、爺いは帰っちまったから力尽くで来られると対処のしようがないぞ?
『随分とやってくれたな、お陰で日本とT国に仕込んでいた根がほぼ壊滅だ』
中国語は俺が理解できない為、花蓮に通訳して貰ってるがヤバいか?
『あ〜、申し訳ないです』
『ふん、安心しろ、今回は荒事は抜きだ』
ふゅ〜助かった、でもなら何の用だ?
『…それで、今回はなんのご用で?』
『風間大輔、貴様の事は調べさせて貰った、Mrセブン、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの、あのマイクロンソフトの個人筆頭株主だそうだな?』
げっ、もう調べてきたのかよ!
『企業株主が持つ株に比べれば、まだ少ない方ですよ』
『だが、ネクストが持つ株も加えれば16%で貴様らが筆頭株主になるのであろう?』
ちっ、本当に詳しく調べてきたようだな
『それで、なんのご用ですかね?』
『ビジネスの話だ、貴様の持つMS社の株、我ら華僑に譲れ』
こいつはまた……
『いや、譲れと申されましてもね〜』
『ビジネスの話と言ったはずだ、今のMSの株価換算からすると、大体500億程度か、なら倍の1000億で良いだろう文句はあるまい?』
1000億ね〜
隣で聞いていた花蓮もその金額に驚いているが
「くすくすくす!」
『貴様!何がおかしい! 倍の額を払うと言ってるのだぞ!』
『いや、それは笑いますって、貴方がた華僑が想定する10年先のMSの資産価値はいかほどですか?5倍?いや10倍かな?』
『……』
『そいつを高々2倍程度で買収しようなんて、随分と強欲じゃありませんか』
『…力尽くという手もあるんだぞ?』
『そいつは無理ですね』
『我らを舐めるつもりか?』
殺気立つ張俊瑋を前にしても、逆に冷静になってしまう
『いえいえ貴方がた華僑を舐めるなんてとんでもない、ただ物理的に不可能なんですよ契約上の都合でね』
『どう言う事だ?』
『俺達がMSと株式譲渡の契約を交わした際、株式の売買に関しては、MS社としか売買をしない契約を交わしたんですよ、自由取引は出来ないんです』
『何だと!』
『なので、例え我らネクストを軒並み物理的に潰したとしても、その際は日米どちらかの国庫に収められるだけでしょうね〜』
『それに、あなた方の想定するMSの資産想定額ですが、仮に10倍だとして…それは』
余りの想定の甘さに段々可笑しくなってきたぞ
「あはっ、あははは、あ〜っはっはっはっは!」
俺は狂ったかのように哄笑し、周囲を唖然とさせるのであった。