第71話 秘密会談
暗がりの通路を抜けその先にあるドアを開くと
「やあ、驚いたかい大輔君?」
そこに居たのは我が叔父である信康さんであった。
「ちょっと信康さんマジで勘弁してくださいよ〜、一体誰に呼び出されたのかと戦々恐々でしたよ!」
「ワハハ、ドッキリ大成功!って奴だな、まあそこにかけたまえ」
そう言ってソファーを提示した信康さんは向かいのソファーに座る、その信康さんの隣には好々爺な笑顔を向ける1人の人物がいた
「大輔君は初めてだったね、此方が……」
「いえ存じております、初めまして風間大輔と申します、金角仁先生でいらっしゃいますね?」
私が挨拶をすると、好々爺な雰囲気を醸し出していた老人はにっこりと微笑み
「先生は止めてくれ、今は政界から足を洗ってシャバの生活を満喫しておるジジイじゃよ」
よく言うよ、確かに政界からは離れたんだろうが、この人の持つ人脈は半端ではない
この人の薫陶を受けた政治家の後の活躍はよく耳にしたし、時の総理大臣達に対しても自分が納得出来なかった場合、何度も衝突を繰り返したって武勇伝の持ち主なのだ
「恐れ入りますが、その発言を鵜呑みに出来る程、貴方を知らない訳ではありませんので」
「ホッホッホ、やれやれ中々一般人として過ごすには骨が折れるわい、のう信康君よ」
「あ〜、すいませんがコメントは差し控えさせて頂きます」
目の前の師弟コンビの漫才を聞き流しつつ
「それにしても、よく飛び込みでエグゼクティブVIPルームなんて予約出来ましたね、さっき日商関係の人間以外無理って聞きましたよ?」
「な〜に、日商岩田の会長とは囲碁仲間での、先月囲碁をしてた時に場所を借りたいと話したら快くココを貸してくれたんじゃよ」
ほら見ろ、引退したと言いつつ影響力は残してるじゃね〜か、この狒々ジジイめ、ん事前に借りてたって事は……
「信康さん、大吾先輩を使って俺の事ハメましたね!」
「すまんが勘弁してくれ、君の先輩に優待券を渡して後輩でも誘ってくれと人を使って誘導したのは事実だが、料亭とかへの呼び出しだと君は不審がって来ないと思ったんだよ」
「それ以降はワシが話そう、君が政界を毛嫌いしてるのは聞いておったが、ワシが君と一度あって話がしたかったのもあっての、無理を言って信康君にセッティングして貰ったんじゃ、政界に無理に引っ張るような真似はさせんから安心しなさい」
それを聞き、俺はようやく一息つく
「ふーっ、わかりました、話を聞きましょう」
「あ〜、すまないがそこで安心するのはちょっと待ってくれ、実は今回の件で後乗りで割り込んできた人物が居てな、どちらかというと主犯はその人なんだ」
そう信康さんが言うと、途端に金角さんの表情が不機嫌となり、信康さんも恐縮した感じになる
えっ、どういう事? 俺が不審がっていると、ドアがノックされ
「お待たせしました、お客様がご到着されましたのでご案内いたしました」
黒服の案内で中に入って来た人物を見て、俺は思わず呆然として口をあんぐりと開けてしまった
「やあやあ、お待たせしてしまいましたかな?」
そこに居たのは、第78代 現内閣総理大臣 宮沢貴一の姿であった
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