閑話休題 とある科学者の手記
我々は本日より拠点としていたユメノマチを発ち、目的地であるトミシママチに向けて出発。同行者はユメノマチまでの旅を共にした夢想人である××××のみである。
彼女の症状、又私自身の症状に関しは大きな変化は無し。詳細については××頁の前述を参照する物とする。
これは私達の最期の旅になるだろう。××××もそれを承知で旅に同行してくれた。
唯一の心残りは彼女の事だと、××××は語っている。私が同意を示すと「あの子はきっと分かってくれる。皆んなを導いてくれるよ」と××××は微笑んでいた。
この旅が果てへと辿り着いてしまえば、この笑顔も失われる。彼女もただでは済まなかろう。
そう思うと胸が痛んだ。それでも、旅を下りると言う選択肢は私には無い。私は行かねばならないのだ。この世界の未来の為に、あの場所に帰らなくてはならない。
私自身、彼女に申し訳ない事をしたと言う気持ちはあるものの、長年続いたこの贖罪への幕引きを何処か心待ちにしている自分がいる事も否定出来ない。
我々の決断が未来の糧になる事を願い、此処に加えて彼女についての記録を残す。私は彼女にとある細工を行った。その詳細についてもこの場に記録を行うものとする。
彼女は私の研究の集大成だ。この先の未来、この世界が混沌に飲まれようとも、彼女が皆を導いてくれるだろう。そのための協力者を得るために、私はこの手記をトミシマに運ぶ旅に出るのだ。
彼女の名前はフローラ。まだ齢九つの少女である。
その美しい紫色の瞳は、私があの日出会った、人智を越える力と同じ輝きをしていた。
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星暦四百四十二年、三月十八日。
気温摂氏十八度。湿度二十四パーセント。天候、晴れ。
同行者と共にバイタル、正常。
記録、ペルミアコーポレーション第一研究所室長、原田×××。
以上【原田の手記】より抜粋。
記録媒体の激しい損傷により、一部解読不能。




