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1-5 フクロウマチとテツノキ



 翌日、チロルは朝食後に一人マチへと繰り出していた。

 今日は衣裳の手直し用の糸や、新しい新規衣裳作成のための装飾品を見繕みつくろう予定だ。なので今日は荷物持ちとして男手を借りてくる必要も無い。


 ……と言うのは建前で、たまには一人でマチをブラブラ歩きたくて付き添いを断ってきた。


 現在、シルクスが興業のために滞在しているフクロウマチは、東都の北西の外れに位置する比較的大きなマチだ。

 東都での安定した暮らしを求めて西側からやって来たヒト達も多いのか、マチを歩いていると比較的若者が多い印象を受ける。


 マチ内のあちらこちらに梟を模った石像やアートなどが置かれているため、てっきりこの辺りでの信仰の対象か何かなのかと思っていたのだが、どうもそういう事でもないらしい。マチと梟には縁もゆかりもなければ、その生息地からも外れているそうだ。


 じゃあなんでフクロウなんだよ。どっから出てきたんだフクロウは、と。

 恐らく歴史をさかのぼればマチの名付けに関わる何かもあったのだろう。それが時代と共に風化して、フクロウという単語だけが残されて今に至る……と、チロルは勝手に予想している。

 真意の程は不明だが、根無し草の自分達には余り関係の無い話だ。関係は無いが、こうして想像を膨らませながらマチを散策する時間はとても楽しい。


 サーカス団が滞在しているマチ外れの野原を出て、マチの中心地までやって来た。大きな広い通りにはヒト通りも多く、マチに溢れる活気が伝わってくる。


 フクロウマチも外れとは言え東都の一部。今もかつての、ここら一体がクニの中心地である事に変わりはない。

 そこかしこに見える旧時代の建造物、テツノキの多さからもそれは見て取れた。


 天に向かってそびええ立つ、どうやって立てたのかも分からない数十メートル級の巨大な鉄筋、テツノキ。錆付さびつき風化しながらも、あれらは長い時間そこに立ち続けている。


(あんなもの、どうやってヒトの手で建設したんだろ……)


 勉強は好きでは無いが、ギムから聞かされた昔話位ならばチロルも知っている。


 先の時代、世界戦争によってこの星は炎と光に包まれた。


 戦禍せんかにより大勢の人の命と、それまでに築き上げられていった文明が失われた暗黒の時代の中でヒトも、クニも、世界も、とうの昔にそれまでの形を失った。

 生き延びた人々は旧時代の文明の遺物が残る場所に身を寄せ合い、知識のある者が遺物の修繕しゅうぜんを行いながら、ヒトの生活と命を繋いで行っている。


 それが今の社会。点在したマチの実態なのだそうだ。


 そしてこのフクロウマチもその一つ。

 錆び付いたテツノキが残る場所に人が住み着き集まり、マチとなった場所だった。


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