38 久しぶり
新しいトイエリさんの教会は元カオル教会だったようで、外観はほぼ変わらず、ただカオル教の象徴を取り外し、トイエリさんの絵に差し替えただけのようだ。
教会の内装も大きな変更はなく、そのまま使われているようなので、だから半年だけで新しい教会が完成したらしい。
今、教会の外には多くの人が集まっている。小耳に挟んだ話によると、俺が元教会で暴れていたときの様子を語る自慢話や、トイエリさんの神像の美しさ、シスターたちのユニークな制服、新しい教会で提供される回復魔法や薬の価格が安くて助かるなど、さまざまな話題で賑わっている。どうやら、新しい教会はかなり好評のようだ。少なくとも、カオル教会の関係者が妨害をしている様子はない。
少し並ぶと、教会の中へ入ることができた。
内装は典型的な西洋風の教会で、中央には神像が建てられ、その背後には大きな窓が配置されている。神像の前には長椅子が並んでおり、礼拝ができるようになっている。
目の前にある神像は、まるで元の世界で金持ちしか購入できない“神聖な椿ちゃん—巫女服バージョン—”の等身大以上のフィギュアのようだ!これは2メートルほどあるのではないか?大きい!おう〜尊い!クオリティは元の世界ほどではないが、それでも目の前に嫁の石像をこんなに美しい形で拝めるのは感慨深い。カオル教会の喧嘩を買ったのは、本当に良い選択だったと思う。
神像の前で他の人々と同じように目を閉じて祈る。
(トイエリさん!見て見て!あなたの像を建てましたよ!すげぇーかわいいよ!それと安心していい、こっちは何の問題もないです。暇な時に連絡してくださいね。)
目をゆっくり開き、椿ちゃんの像の尊い姿をしっかりと目に焼き付ける。職員の制服を見ると、細かい部分は気にせずとも、ちゃんと神職装束と巫女装束になっている。良いね。カオルが学園の制服にこだわる理由が何となく理解できた。自分の性癖に忠実であることはすごく大事だ……うん、ワシ的にはたまに良いことを言う。
少しばかり寄付金を渡し、トイエリ教会を後にした。アクセサリーとメガネのフレーム用の鉱石を武器屋のドワーフさんの店で購入し、最後に食材と生活用品を補給して、マイホームへ戻った。
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その夜は寒かったので、神竜様の背中ではなく、マイホームで寝ることにした。
白い空間で、目の前には懐かしい二次元の木製校長室の扉が現れる。俺はその扉をノックした。
ゴンゴン
「ど、どうぞ。」
扉を開けると、そこには懐かしい二次元の校長室が広がっていた。しかし、トイエリさんの姿は見当たらない。
「あれ?トイエリさーーん?いないの?」
「こ、ここよ……。」
正面の執務机の下から、恥ずかしそうにトイエリさんがゆっくりと立ち上がる。そこには、赤い着物にひらひらの紺色シュートスカート、白いエプロン、そして黒いニーソで絶対領域を作り出した……和風メイド服姿の椿ちゃんが!ダメだ!興奮して鼻血が!
「なん……だと……」
「何よ、次に会うときは和風メイド服で、と注文したのはあなたじゃない!」
「え?いつ?」
「あなたね……召喚されたあと気絶していたときよ。」
「ご、ごめん、色々あって忘れてた。そんなことより、クルッと回って~!」
「もう!そのためにわざわざそっち担当の方に資料をお願いしたのよ!」
トイエリさんは机の前に出て、クルッと回ってみせた。
「ありがとうございます!!かわいい~~!トイエリさんかわいいよ!最高!カメラが欲しい!!」
「ま、まあ……あなたが喜ぶならそれでいいけど……それと雄二くん、久しぶりね。巻き込んでごめんね。そして、おかえり。」
「久しぶり。トイエリさんのせいじゃないでしょう。逆に助けてくれてありがとう……それと、ただいま。」
「でもね、雄二くん。あなた、自分の姿について何の違和感も感じないの?」
「え?なに?いつも来るときと同じくゲーム内の制ふ……?」
「違和感……ない?」
「うん?……うん?……うん?」
トイエリさんが急に全身鏡を俺の目の前に出した。俺は自分の姿を確認する。緑の着物にひらひらの紺色シュートスカート、白いエプロン、黒いニーソで絶対領域……あれ、かわいいなデジャブ。ほっぺたをつねる……痛くない。鏡の中には、長い虹色を反射する銀髪と金髪を持つ、かわいい二次元の女の子が映っていた……かわいい。どこのゲームのヒロイン?……うん?
「え?なんで?!なんでアイリスのままなのですか?しかもトイエリさんとお揃いです!二次元な俺でかわいいじゃねぇか!」
「あんた、すごく冷静ね……どうやらあなたの体の変化は予定より早かったみたい。お互い話したいことがたくさんあるわよね……コーヒー飲む?」
「飲む!!……この体にはもう結構慣れたからね、仕方ない。」
「あなた、ここに入ったときはその女の体で、いつものギャルゲーの男子生徒の白い制服だったのよ。私を見た瞬間、和風メイドになったの。」
「……もう、褒めないで、照れる。」
「……。」
俺たちはソファーに座り、いつの間にかテーブルの上に現れたコーヒーとケーキを前にした。今では疑問すら抱かず、そのままコーヒーを一口飲む。
「やっぱりコーヒーは旨い!」
「それで、あの日一体何があったのか、知りたい?」
「ええ、知りたい。」
トイエリさんもコーヒーを一口飲んで、ゆっくり話し始めた。
「雄二くん、38歳の誕生日のあの日。私はあなたの瘴気浄化のプランに沿って、雄二用の体を用意しましたよね。それで、あなたの魂はこの“ヒュウツジア”の影響範囲内にいた。」
「うん。」
「私たちが話しているとき、帝国は召喚魔法を使った。そして、あなたを強制的に“ヒュウツジア”へ召喚しました。」
「はい、それは分かります。でも……すみません、ちょっと聞きたいことがあります。」
「どうぞ。」
「トイエリさんの話では、派遣したのはカオルひとりだけですよね?でも、召喚魔法があるなら、もっと大勢の異世界人をヒュウツジアへ召喚してもおかしくないのでは?」
「雄二くんの言う通り。その召喚魔法では別の世界の人間を召喚することは不可能なの。」
「……まさか……偶然俺の体が用意され、偶然俺の魂もこの世界の範囲に入って、偶然その瞬間に帝国が召喚魔法を使った……」
「はい~!大正解~!ご褒美にケーキをあ~んしてあげますね。はい~、あ~ん。」
トイエリさんがケーキを差し出す。そのあ~ん、いただこう。
「あ~ん!美味しい~!……って、そんな偶然あるかい!」
「ツッコまれたのは雄二くんの顔ではなく、何か違和感があるわね。でも残念だけど、本当に偶然が連発して、あなたがヒュウツジアに巻き込まれてしまったのよ。」
「もう過ぎたことだし、別に怒ってない。でも、なんでその後ずっとここに来れなかったの?」
「雄二くんの体が交換されたからよ。」
「えぇ……。」
「アイビーの体ではここに繋がらないの。」
「うーん、ごめん、もっと簡単に。」
「ここと繋がるのは雄二くんの魂。もし私が用意した体なら、いつも通りここへ来れたわ。でも、あなたはアイビーの体に入ってしまったから……。簡単に言えば、その体がパリアのように、あなたの魂とここの繋がりを遮断してしまったの。」
「なるほど……。だから、気絶したときや神竜様を助けようとしたときは、単語しか送れなかったのか。」
「ええ、神の声を聞こえない人には、その単語が精一杯よ。そして、体が交換された後、あなたは魔力暴走したでしょう?」
「あれは……もう二度と味わいたくない地獄ね……。」
あの魔力暴走……ずっと炎に焼かれ続けるような感覚、血管の中で水玉が徐々に大きくなっていく痛み。もう二度と味わいたくない。まさに地獄だった。
「あの魔力暴走の件ですが、正確には魔力暴走ではなく、雄二くんの世界の言葉では不具合に近いものです。」
「不具合?」
「雄二くんの世界の設定上、人間の魂は非常に大きいのですが、それを無理やり小さな体に入れたため、不具合が起こったのです。」
「あ!この全身圧迫スーツを着ているような感じは、魂がこの小さな体に押し込められたせいなのか?」
「はい、まさしくそれです。元々ヒュウツジア内部では、人間の体と魂のリソースの大きさはすべて同じに設定されています。だから、帝国の連中が頻繁に行っていた体交換実験では、こういった不具合は発生していないのです。」
「なるほど……では俺が考察した、魔力上限を超えて回復し続ける現象については?」
「ほぼあなたの考察通りですよ。雄二くんの魂は元々魔力値が設定されていませんでした。ところが、召喚された際に私が用意した体に入ったとき、その体の魔力上限の設定が魂に刻まれました。つまり、交換後アイビーの体になっても、魂は刻まれた魔力上限まで回復し続けるのです。」
「つまり……気絶したときは、過剰な魔力のせいで体が悲鳴をあげたのか。」
「あなたの推論は正しいですよ。」
「おのれ……帝国め!許さない!帝国め!」
俺は残りのケーキを一気に食べた。
「あの時、私もあなたに連絡する手段がなく、結局ギリギリアウトな方法で単語しか送れませんでした。正直なところ、雄二くんの生きる意志次第だったのです。もし諦めたり、耐えられなかった場合、体は魔力に焼かれて亡くなるでしょう。まあ、その時は帝国も消滅していたでしょうけれどね。その関係者の魂は、永遠にゴブリンにしか転生できなくなるくらいの罰を受けることになったでしょうね。だって、私を怒らせたのだから。」
「あの時は本当にありがとう。気絶したときのあの単語が、俺に生きる意思を与えてくれた。俺が死んだら、トイエリさんは絶対に罪悪感を感じると思ったから、一生懸命生き残る方法を考えた。でも、未だに余った魔力を放出しないと、体が痛くなるよ。」
「でも、まさか半気絶状態で、その灼熱感を水温に変えて、そのまま魔力を放出し続けることで解決するとは……偉いわね。」
トイエリさんが俺の頭をなでなでしてくれた。気持ちいい~……人をダメにする。このことを他人に話すのは初めてだったが、その苦労を褒めてもらえて嬉しかった。
「それで、あなたが目を覚ましたら、私はドラゴンを呼んで雄二くんを助けるつもりでした……あ~今は神竜ですよね。あの子はユニットキャラで、基本的には私の代理として動けるのですが、長年魔獣を倒し続けるうちに瘴気を吸いすぎて弱体化してしまいました。」
「だから、あの傲慢姫は俺の体を使って撃退できたのか?」
「いいえ、あの程度の魔法では神竜に傷一つつけることすらできません。」
「え?でも、一回目は撤退しましたね。」
「神竜は、あの集中砲火の中であなたを乗せたまま安全に離脱できないと判断しただけですよ。」
「なるほど。では、その翌日は?」
「あの時はうまくあなたの部屋に到着しましたね。あの子はあなたを乗せて真上へ逃げるつもりでした。」
「俺も起きたばかりで体が自由に動かないし、メイドたちに捕まって神竜様に近づけなかったしね。」
「そこで、アイビーは呪いの魔剣を神竜の背中に突き刺しました。大した怪我ではなかったものの、周囲の瘴気が魔剣を経由して急速に神竜を侵食しましたよ。」
「だから、今度は俺が脱出できるタイミングで、救援サインをくれたんですね。なるほど……神竜様を助けられて、本当に良かった。」
「あの子……コミュ障だから、自分の感情を伝えるのがすごく苦手なの。でも、あの子もあなたに感謝しているわ。」
「……まさか、コミュ障って……ずっと一人だから?」
「はい、そうです。あの子はヒュウツジア内で強すぎる生き物が暴れたとき、それを倒し、その魂をリソースとして還すのが仕事です。身体に溜まった瘴気も、彼らの魂の残骸なのですね。」
「ホントに、世界の守護神じゃないか。」
「いいえ。もしあなたがあの時帝国で死んでいたら、その王城を灰一つ残さず破壊するよう命令したわ。あとは洪水を起こして、完全に綺麗に掃除する予定でした。」
「エグいね。」
「当然の報いです。ちなみに、あなたが帝国を離れた後、すぐに帝国へ天罰を与えましたよ。うふふっ。」
今度はトイエリさんがケーキの最後の一口を口に入れ、その後テーブルに追加のお菓子が現れた。
「え?天罰って、あの傲慢姫に?それとも神の雷的なやつ?でも俺の体には、未だに傲慢姫の魂が入ってるんですよ。大丈夫?」
「雄二くんはヒュウツジアで生きている以上、私が直接帝国を破壊することはしないわ。だから、一番簡単な方法を選びました。」
「……ゴクリ……」
「それはね………。ところで、コーヒーのおかわりします?」
「おかわり!」




