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調和と体と21グラム  作者: 深沼バルキ
序章 Daybreak world front line
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8話

 「それで? 僕に何かこの人について話すこと、いや。頼みたいことも、あったから家に連れてきてくれたんでしょ?」


 「ああ。まぁそうなんだがな……」


 例の部屋で詳しく調べたいからと今にもエゴの服を脱がし始めそうな勢いで、隅々までアンドロイドを調べ上げようとしているノックを見て俺は少し引いていた。


 オカルトよりも実は機械系の方に興味が変わっていたのか? ずっと一緒にいたのに全く気付かなかった。


 「ずっと気になっていたんだけど、この箱は何?」


 「さぁ。俺もわかんない。初めて会った時から持ってたし聞いても知らないほうが良いって、言われてそれ以降訊いてない」


 ノックが「ふーん」と覇気のない返事をしていると、四人目が声を出した。


 『マスターの浮気者―! 不潔! ハレンチ! あと……バカ―!』


音声情報か、画面に打ち込まれた文字でしか外部に情報を伝えられないとはいえワルキューレがノックに対して怒っているのはわかる。おそらくワルキューレにもしボディーがあったすればノックに今すぐ全力のビンタを食らわせてノックダウンさせているだろう。


 良かったなノック。命拾いして。


 『ソルさんも止めてくださいよ』


「ノック。やりすぎはよくないと思うぞ。ほら、エゴだって嫌そうに……」


 ここでエゴの顔を見るが、嫌がる顔すらせずに真顔だった。


 「……しては、ないなぁ」


 そういえばいきなり男の前で服脱ぎだすようなやつだったな。だったら手を触れられようが、服の上から体を凝視されようがなんとも思わないか。


 『わたしはそちらに直接干渉できないんですよぉ。私の代わりに鉄拳制裁をお願いします!』


 わかってる。けどこれから頼みごとをする対価みたいなものだからなぁ……元々俺のアンドロイドじゃないけど。


 止めろと言うワルキューレをまた何度かなだめているとエゴの足首をあたりを見ていたノックが急に立ち上がり、椅子に座る。


 「ワルキューレ、早急に調べてもらいたいことがある」


 『放置だった私に何か用ですか?』


 ノックはゾーンのようなものに入っているのかワルキューレの声に一切反応すらしていない。

「プライベートAIラボの最新研究情報について」


 『無視ですか……わかりましたマスター。指示に従って検索をかけます。すぐに出てくる情報はネットワークに開示されているものになりますがよろしいですか?』


 「それで構わない」


 ノックがそう言うと一瞬で画面を埋め尽くすほどのウインドウが表示された。書かれているのは皆同じこの国の言語だった。


 「なんかすごいけど、これがエゴとどうかかわりあるんだ?」


 「通常、アンドロイドは必ず一体ずつ固有の型番があるんだけど、その型番が記載されているのはミヤマ式もカガミ式も必ず左足首に書かれているんだよ。なのにこのボディーにはそれが書かれていなかった」


 確認しようと俺もエゴの足首を確認してみるが、ノックの言った通り何も書かれていなかった。


 「じゃあつまり一個人が企業の手も借りずに一体作ったってことか? そんなことできるのか?」


 「ボディーのないワルキューレのようなAIの頭脳だったら体を動かすというプロセスを踏む必要がないから個人で作れるけど、それを処理できるようなAIとなると頭でっかちになって立つことすらもままならないんじゃないかな。それにそんな頭脳とリンクできるボディーだってやっぱり企業ではできても個人ではできないと思う。それに言ってなかったからここで言うけどアンドロイドの名前って型番から名前を付けたりするもので、最初から決まっているなんてことないんだよ」


 しかしこれらは仮設でしかないからこうしてノックは個人でAIの研究をしている人たちの研究情報を調べているのだろう。


 なおさらエゴがどこから来たのか気になる。そしてこれを一人で作り上げてしまうほどの技術の優れた人というのも気になってしまう。


 うーん。と俺が考え事をしながら唸っていると記事を読んでいたノックがふと気づいたようにこちらを向いた。


 「そうだよ。とりあえずそのご本人に直接訊いてみればいいんじゃない? 何か変わるかも」


 そうだ。どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだ。当事者に訊けばいいじゃないか。


 「エゴ。お前はどこから来たんだ? 俺を管理者にした理由は何だ?」


 俺がそう訊くと、エゴはこちらを向き、無表情で真っ直ぐ俺の目を見てくる。


 「それは管理者命令でしょうか。まだ話すべきではないかと思っていたのですが」


 「ああ、話してくれるなら管理者命令だ」


「ご友人の方には秘匿することを推奨します。いかがしますか?」


 それなりの話が来るとは思っていたけれど、俺以外は聞くべきではないこととなるとノックに聞くか訊かなければならない。


 そう思い、ノックに訊いたが秒で「絶対聞きたい」と返ってきた。


 俺自身も管理者命令を使わなければ聞けない話というのに興味がわいていた。



 「というわけだ」


 「承知しました。ではまずマスターらが秘匿、又は洗脳を受けていることについての情報開示をします」


 俺もノックもその洗脳という言葉に反応したが間髪入れずにエゴは話を始めた。


 「マスターらはかつてこの国の東にあった国のことをご存知でしょうか」


 「ここよりも東? 太平洋と立ち入り禁止の大きな無人島があるくらいだし……そんな国あったか? わからん」


 「歴史とか地理でもそんなの出てきた覚えないけど」


 「そうです。これに答えられないことこそマスターらが洗脳されている動かぬ証拠なのです」


 エゴは思い出すように一度目を閉じ、ゆっくりと開いた。


 「これから話すことはその今は亡き国、日本を中心に起きた世界を巻き込んだとある事件についてです」

こんにちは、深沼バルキです。

次回、日本についてです。そして過去に何があって、世界はどうなってしまったのかです。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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