7話
昨日の一件についてそっちのほうに詳しいノックに相談しようと昼休みのうちに何があったのか全て話した。
話してすぐにノックには本当の話なのか、犯罪ではないのかと疑われもしたが、何とか誤解を解くことができた。
しかし誤解が解けると同時にそのアンドロイドが見てみたいとノックは言い出し、最初は放課後になったら警察にすぐに連絡しようと思っていたこともあったため拒否しようとも思ったが、もしかしたらノックに管理者登録解除ができるかもしれないと思い承諾した。
そのため一度帰ったのちエゴを連れてノックの家に集合というかたちとなった。
そして下校のチャイムが鳴った瞬間、ノックは教室の誰よりも速く立ち上がり、俺に話しかけてくる。
「先生に呼ばれてるとかなかったよね。じゃあこの後うちね。よしじゃあ早く帰ろう」
いつもよりノックのテンションが高いと一瞬思ったが、いつもオカルト話をする時とあまりかわらないと思った。
俺は急かすノックに対抗していつもよりも敢えて遅く下校の準備をし、教室を出た。
二人で昇降口から出ると、校門で何やら人だかりができていて、そこからは、やれかわいいとか、綺麗だと騒いでいた。
「なんだ? あれ」
「さぁ。わかんない」
いつもはこんな人だかりなんてないため不思議に思ったが、今はそんなことよりもエゴの件のほうが先決。なので、通り過ぎる直前にその人だかりの隙間から覗くだけにしてみた。
すると見知った顔がその中心でどの生徒の言葉にも反応せずにすました顔でいるのが見え、足が止まった。
「……エゴ? 何でここに?」
つぶやくように名前を呼ぶと人の壁をかき分けて俺のもとへ真っ直ぐに近づいてくる。その後ろには何故かあの大きな箱が付いてきていた。
そしてエゴはこう言った。
「マスター。お呼びですか?」
「お呼びじゃないから! てか何で学校にお前がいるんだよ。今朝家でおとなしくしてろって言っただろ」
昨日といい、アンドロイドってこんなに命令無視するものなのか? だとするとアンドロイドを持っているお金持ちの人たちも苦労してるだろうなぁ……ってもしかしてそれで捨てられてうちの前にいたのか? だとするとなぜうちなのか気になるところではあるな。
「大丈夫ですか?」
少し考え事をしていたからかエゴが心配して声をかけてきた。
「ああ、今は大丈夫だ」
「それにしてもこの子がソルの言ってた例のアンドロイドかぁ。型番とかって知ってるの? エゴってソルが名付けたの?」
「いやいや。俺が名付けなんてするわけないだろう……が?」
ノックと悠長に話をしていると他からすごく視線を浴び、背筋がぞわっとした。
「何事?」
その視線はエゴの後ろからきていた。
もちろん箱ではない。
そのまた後ろのたくさんの生徒たちだった。
「え、この人アンドロイドだったの?」
「……そんな高価なものを持ってるやつがうちの学校にいたなんて」
おそらく今は興味よりも、驚愕のほうが勝っているのだろう。誰も動こうともしていなかった。
「おいノック。今の内だ。このままお前の家に直行だ」
「ああ。わかったよ」
「それじゃあ、刺激しないうちに急ぐぞ」
エゴの手を取り、小走りで走り出す。
最初の曲がり角を曲がる際に後ろを見て、彼らが追ってくる気配はないことを確認すると歩みを緩め、ノックの家に向かう。
しばらくの間黙って歩いていたが、歩いているうちに俺とノックは我慢していた笑いを吹き出すように出した。
「君、そんな高価なものを持ってるやつだってさ。そんな金持ちだったらこの学校に通ってないよね」
「あはは! 何がこの人アンドロイドだったの? だ。どう見ても堅物で無機質みたいな奴で、絵に描いたようなアンドロイドじゃないか」
「え? でもソルは初めて見たときすぐにわかったの?」
「いやぁ……」
「ソルも人のこと言えないじゃないか。あー可笑しい」
しばらく俺らは笑っていた。
その間、エゴは不思議そうにこちらを見ていたが、さすがのこいつもここで水を差すことはしてこなかった。
笑い終わるころにはノックの家も近くなっていた。
こんにちは、深沼バルキです。
もうそろそろ話が1章へと向かっていきます。
長かったです……。
ここまで読んでいただきありがとうございます。