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調和と体と21グラム  作者: 深沼バルキ
序章 Daybreak world front line
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5話

 「あの……。今なんて?」


 困惑した俺は聞き間違いだろうと思い聞き直すが、その答えに一文字として先ほどと変わりはなかった。


 目の前にいるのが自動車よりもはるかに高額のものだと考えると会話するのも怖い。


 そうだ。さっさと管理者登録を解除して 元の持ち主に返さないと。


 「そうゆう冗談はあんまり笑えないぞ。ははは。これから管理者登録を解除して元の持ち主に返してあげるから待っててくれ……ってあれ?」


 俺が話している途中に彼女は急に動き出すと、さっき登録に使ったものと思われる端末を握り、高く振り上げた。


 「ちょっと待て! お願いだからそのまま動かないで。落ち着こうか」


 「わたしはいたって冷静ですよ?」


 「ならそんな君に質問。その端末をどうする気なんだ」


 「それはこうするのです」


 バキッ、ガシャン。


 もちろんこの音は察しの通り、彼女が地面にたたきつけた端末が壊れる音だ。


 「意味が分からない……。理解できない」


 「ア。テガ、スベッテシマイマシタ。スミマセン」


 「するって言ってた奴が今さら事故ですみたいなこと言ってんだ!」


 「こうすると許していただけると聞きましたので」


 「それ間違ってるから! まぁ確かに察していたけど……」


 「やはり意図的に止めなかったのではないですか」


 「お前なぁ……。まさか管理者登録解除に必要もの、ましてや仮にも管理者の俺の欲しているものをアンドロイドが壊すと思わないだろ。どうすんだよこれ。今日中に解除できなくなったじゃねぇかよ……」


 落ち込む俺に彼女は微笑み、頭をなでた。


 俺はため息をすると今日中にどうにかするのは諦めた。


 「取り敢えず今日はうちにいていい」


 明日の放課後警察に連絡するか……面倒くさいことになった。


 「マスターありがとうございます」


 「勘違いすんな。あくまでも一時的にだ! 明日警察に管理者登録を解除してもらったら渡すから」


 「どうでしょう。そんな簡単に解除できますかね」


 「言ったな。警察なめんなよ?」


 彼女は「そうですか」と返事をして家に上がろうとすると、あの箱が彼女の後を自動的についていく。


 「その箱。いったい何が入っているんだ?」


 ずっと疑問に思っていたことだったので聞いておこうと思い訊くが、彼女は妙に冷めた声で「これは知らないほうがいいですよ」と言ってごまかした。


 知られたくないことってことなのか? なら無理に訊かないほうがいいか。てか変な詮索よりも今は彼女が変なことしないか監視しないと。


 そう思い、一緒に俺も家に入った……まではよかった。


 もちろんこうなることは妹には言ってないわけで、その状態で家に入れば妹が警戒して部屋から出てこないことも分かっていた。


 玄関のドアを閉めると二階から妹の声が響いてきた。


 「どうしてその人家に入ってきてるのー! 意味わかんないんだけど!」


「事情があってな。すまないが今日はうちに泊まることになったから」


 「はぁ?」


 妹はご立腹のようだ。これは今日中に部屋から出てきそうにない。


 まぁ仕方のないか。得体の知れない人が当たり前のような顔で自分の家に上がり込んでいるんだから。しかも俺が帰ってくるまでの時間分恐怖心が加算されてるだろうし。


 「事情は後で説明するから」


 これに対する妹からの返事はない。


 しょうがないから晩御飯部屋に持っていってやろう。そしてそれでどうにか許してもらおう。

とりあえず今は彼女を玄関から移動させることが先決だ。


 「入ってくれ、えっと……」


 そういえば彼女の名前きいてないけど、確かアンドロイドの名前って管理者が決めるって聞いたことあるけど実際どうなんだろう。


 ちなみにこれもノックからの情報だ。


 「俺、まだ君の名前知らないんだけど、何て呼べばいい?」


 そう訊くと彼女は「では、エゴと」と振り向きざまに言った。


 「へー。じゃあ前の管理者いたんだ」


 「いえ。わたしのマスターは後にも先にもあなただけですよ」


 つまり……どういうこと? 俺は名付けなんてしていないけど、俺しか管理者にしたことがない……ということは元々エゴという名前がついていたってことにならないか? なんかさらに謎が深まった気がするんだけど。


 そう思いつつ、リビングに先に向かうエゴの後を追った。


 泊めるといってもエゴはアンドロイドだから人の客人を招いたときみたいに食事を用意したり、寝床の用意をするわけじゃないから、その点については楽で助かる。にしてもこの箱邪魔だな。


 と、ここで一つの疑問が浮上した。それは、アンドロイドは風呂に入るのかということだ。


 イメージで言えば入らない、と思っていた。だがしかしこうして実物を前にすると、やはりアンドロイドだって外気に触れているのだからボディが汚れないわけがない。ならこの場合風呂に入らせるべきか? それとも自分は機械だからと言って入らないのか? うーん。悩む。


 やっぱりこういう時は本人に訊くのが一番手っ取り早い。


 「なぁ、エゴ。君ってお……」


 ちょっと待て。これって直接訊いていいものなのか? いくらアンドロイドだとはいえ、デリカシー無さすぎでは?


 リビングに入るところでエゴに訊いてみようとしたが、もうよくわからなくなってきたため、同じ家にいるであろう唯一の女性にエゴにばれないように通話で訊いてみるが、「おにぃが勝手にわけのわからない人家に上がらせてるんだから、勝手にすればいいじゃん」と妹はご立腹のようだった。


 残された救済の手段はネットだけ。


 でもネットで調べたとしてもいい回答が見つかるかどうか……。


 悩んでいると、エゴが心配そうに、何かあったのか訊いてくる。


 これ以上悩んでいても仕方ない気もしてきた。


 開き直った俺はやはり直接訊いてみることにした。


 「単刀直入に訊くけど、エゴは風呂入るの?」


 「わたしはアンドロイドに名前が付いただけの物です。ですので、そこに意思はありません。全て行動計画と物理演算等に基づき動いているにすぎないのです」


 「えっと……。つまり?」


 「つまり、マスターがわたしのボディーが汚れているようだとお思いでしたら洗浄するため、浴室をお借りすることになります。どういたしますか?」


 そこは演算出来ないのか? それとも設定された汚れているという範疇にないからなのかわからない。


 「だったら入ったほうが良いと思うけど」


 エゴは俺にそう言われると準備をしだした。


 さて、じゃあ俺は晩飯でも作るか。


 そう思い台所に行き準備をするが、一向にエゴが浴室に向かう気配がない。相当古いアンドロイドじゃなければ既にこの家の間取り情報なんて手に入れているだろうから浴室がどこだかわからないはずない。


 不思議に思った俺はエゴののほうへ視線を向けるとエゴは俺のいるリビングでスーツを脱ぎだしていた。


 「おい! 何やってんだよ!」


 咄嗟に俺は後ろを向き視界からエゴを外した。


 「何とは何のことでしょうか。わたしはただ浴室でボディーを洗う準備を――」


 「だったらなおさらここで脱ぎだしてんじゃねぇ」


 「理解できません。しかし、もしマスターがわたしがボディを露出させようとしていることについて怒っているようでしたら問題ありません。わたしは物です気にする必要はないです」


 「問題大有りだし、お前が気にしなくても俺が気にすんだよ!」


 と、ここでドアが開いた。


 「ごめん、おにぃ。わたし冷静になって考えたらまだちゃんとわけをまだ聞いてなかった。だからちゃんと説明し……て……」


 妹は、俺は後ろを向き、エゴが服を脱いでいるというこの状況を見て止まった。


 この状況で何を言われるかなんて察しが付く。


 俺は急いで弁解しようと妹のほうへ振り返った。


 「メグ、落ち着け。これには深いわけがあって――」


 「おにぃ……最低」


 そのまま妹はドアを勢い良く閉めて再び自分の部屋に戻っていった。


 「マスター。よろしかったのですか?」


 「良いわけないだろうが! お前のせいで変な誤解されただろうが!」


 頭を抱える俺を不思議そうに見てくるエゴにイラっときた。

こんにちは、深沼バルキです。

未だ序章……。長いですかね。長いですよねぇ~。文字数多ければいいてことではないことは承知しているのですがどうしても文字数が多くなったり、伏線作りたくなっちゃうんですよね。なのでもうしばらくお待ちください。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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