2話
「だぁー! 疲れたー」
俺はノックの家に着くなりベットにダイブした。
ノックの家はいつも誰もいない。もちろん死んでしまっているとか、蒸発したのがいない理由ではない。
ただ単に仕事でいないのだ。
昔からそうだった。何度遊びに行っても俺はノックの両親に会ったことがない。一度探しに行こうとしたことがあったけど結果は想像通り子供二人だけでは無理だった。
だから俺はノックの両親に、やらないといけないリストの中に、ノックの両親にあったら一言いうと書いてあるほどにはあまりいい印象がない。
「おい。人のベットにダイブしないでよ。というかソルは午後の授業中ずっと寝てたじゃん」
「え。俺のことそんなに見てたの? もしかしてノックって……そっちなの?」
起き上がりながら俺はノックをからかう。
「違うから僕は女の子が好きだから!」
「ええ! じゃあ男の俺は嫌いなの?」
「いや別にそうゆう意味じゃ」
「じゃあ好きなの? 嫌いなの?」
「だから。そういうのわかってて言ってるだろ」
「言ってくれなきゃわからないだろ。好きなの? 嫌いなの?」
このタイミングで俺は立ち上がり、真剣な顔でノックに迫る。
するとノックは目をそらして言いにくそうな顔をした。
「それはもちろん。す……」
「す?」
「す―――」
「まぁ。んなことわかってるけどねー。ノックが俺のこと嫌いなわけないもんな。なっ! ノック。俺もお前のこと好きだぞ~」
ドッキリの種明かしのように態度を元の状態に戻しても、ノックは無言で固まったままになっている。
「ノック? どうしたの? そんな固まって。もしかして好きっていうことも恥ずかしかった?」
更にからかってみてもノックは固まったまま。
流石にやりすぎたかもと思い「ごめんってからかい過ぎた俺が悪かったって」というと、ノックは動き出した。
やっと動き出したかと思ったら近くにあった椅子に静かに座り、口元を隠しながら顔を上げた。
「あ、ありがと……」
ノックの隠そうにも隠せていない恥じらいに俺は驚いた。
「それは……どういたしまして?」
俺も返事がわからなくなってしまった。
何とも言えない気まずさに見舞われた俺は流石にずっとこのままにしておくわけにもいかず、話を切り出す。
「あ~、えっと。そういえば昼休みの話の続き。超能力者とかって言ってたっけ? それがどうしたって?」
するとノックの肩がピクリと動いた。
こう俺がノックの好きな話を振ると必ず乗ってくるのだ。ちょうどこんな風に。
「そうだった! ソルもう一度いうから聞いてくれ。超能力を持った人が現れたらしいんだよ!」
部屋の電気のスイッチ並みに切り替えるのが早いことに関して言えば、俺はとてもいい性格していると思っている。けど、そこを嫌いな奴もいるって話。まぁこれ以上はノックのためにも、考えることも遠慮しておこう。趣味も俺はそれほど興味を惹かれないだけで、男は面白がって寄ってきそうなものだと思うけど。
食い気味のノックについ顔が引きつる。でもノックはそんな俺にかまわず話を続ける。
「その人の超能力っていうのがあのアンドロイドの次の予知ができるってことなんだよ。でも予知できるのはミヤマ式のアンドロイドだけらしいんだけどね」
「え、ちょっと待て」
「どうしたの?」
「ミヤマ式ってなに? 初めて聞いたんだけど」
「えっ!」
ノックはそれほどまでに衝撃的だったからなのか、十秒ほど動かなかった。
「えっ? なに? そんなに俺って世間知らず? ニュース見なさすぎ?」
「ミヤマ式を知らないとは……。流石にそれは知らなすぎだよ」
「そもそもアンドロイドに種類があるなんて知らなかったんだけどな」
ここで俺は開いた口が塞がらないというのをはじめてみた。
その後はノックから一方的に一般人でも知っていることから絶対ニュースじゃやらない専門的なことまで聞くはめになった。
要約すると、この国のアンドロイドにはミヤマ式とカガミ式があり、先に世に出てきたのは深山という人が開発したミヤマ式なのだと。
なんにせよ製造方法は企業秘密で、特にAIは上層部の数人しか知らないのだとか。
ノックは一通り話し終わるとめちゃめちゃ満足そうにしている。そして何故か話す前に比べて肌にはりつやが出たようにも見えて少しイラっとした。
「なるほど。それでそのアンドロイドがどうしたんだよ」
「だ、か、ら! ミヤマ式のアンドロイドの行動の未来予知ができる人が現れたんだって!」
「そんなのこのコンタクトつけてたら出来そうだけど? アンドロイドの予め記録されている行動パターンから読み取ってさ」
「それが。これはカガミ式にも言えることなんだけど、彼らアンドロイドはロボットよりも人に近いAIだから行動パターンなんてそもそも存在しない。つまり人の行動を予知していることと同じようなものだよ」
ノックの言っていることが本当だとすれば、ではなぜ人は予知出来ないのか。人はできないにしたって、同じアンドロイドのカガミ式は予知できないのはおかしい。と、言い出したらまたノックの口が止まらなくなり、そうなので黙って、話の流れに乗っておくことにする。
「じゃあ、そいつは本物の超能力者かもしれないな。そんなすごい奴なら一度会ってみたいなぁ」
「会えるかもよ?」
「え?」
「だってその人うちの卒業生で、そのまま大学に上がった人だから」
こんにちは、深沼バルキです。
今回はこの世界のAIの種類の話が一番印象的ですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。