12話
俺はすぐにしゃがみ、妹の腹部にある手が焼けそうなほど熱い傷をおさえた。
「おい! 死ぬな! 絶対俺が助けてやるから」
「おにぃ……痛いよ。そんなに強くおさえないでよ……」
救急車を呼ぼうと端末から連絡するが、意味の分からないことをしゃべるばかりでこちらの話を全く受け付けなかった。
「まさかこれもテロの影響かよ。くそっ! 一秒でもおしいのに!」
妹は傷をおさえる俺の手を握る。
「もう、いいよ。救急車呼べなかったんでしょ? それに……っつ! 自分の体のことくらい……わかる、から。逃げていいよ」
「よく……ねぇよ……。いいわけないだろうが。自分の妹が目の前で苦しんでんのに助けない兄はいねぇよ」
わかってる。俺の力じゃこの状況を変えることはできないことくらい。
でもしてやりたいんだ。だからせめて一緒にいてやることくらいいいじゃねぇか。
「俺の、兄として妹に最後にしてやれることぐらい……させてくれよ」
「うんわかった……シスコンおにぃ……」
妹の痛みに耐え、歪んだ笑顔を見て、自然と涙がこぼれてくる。
「ごめん……ごめん。俺のせいで」
「ちがう……じゃん。おにぃのせいじゃっ……ないでしょ?」
そう言って妹は力の入らない手で、俺の頭を優しくなでる。
けれどその手は力の抜けたように床に落ち、横に倒れそうになったところを俺が抱くように支えた。
「あっ、そうだ。また目が覚めたら昔みたいに遊ぼう。部活はすぐに始まらないだろうからその期間にだけでもさ」
「……うん」
「それか家でゲームするか。俺は最近全然やってないから対戦ゲームなんてしたら試合にならないくらいボコボコにやられるだろうけど、感覚思い出したらまた昔みたいにいい試合できると思うんだよな」
「……う、ん」
「買い物にも行きたいな。その時、似合ってた服は俺が全部買ってやるよ。でもメグは顔もスタイルもいいからどんな服も似合って財布の中からになっちゃいそうだな」
「……う、ん……」
「だから……だからさ。今はゆっくり休んどけ。朝になったら俺が起こしてやるから」
「……」
「きっと明日はいい日になるぞ」
無理やり俺は笑顔を作った。
こんにちは、深沼バルキです。
メグー! とまぁ叫んでも時間は戻らないことをわかってソルは静かに見送ったのでした。
ここまで読んでくださりありがとうございます。