精霊さん
結局最後に精霊の儀を受ける栄誉に預かったのは私だった。
部屋に一人残されてから暫くして、カチャリと猫が通れる位のサイズだけ勝手に開かれた扉。
私の友人が精霊の儀を終えたことをそれが教えてくれる。
皆どんな真職を精霊さんから賜ったんだろう。
どんな真職であろうとも、宣言された時当の本人は何となく納得してしまう、というのはよく聞く話。
少し考えてみたけれど、私の友人たちは結果がどうあっても気にも止めてないんだろうなーと思う。
だって皆、将来のことをずっと前から真摯に考えていたのだから。
この精霊の儀だって学園行事の一つ位にしか彼らの人生にとっては意味を持っていないのだ。
私はどうだろう。
望む真職を手に入れることが出来るのだろうか。
仮に手に入れられなかったら、どうするのだろう?
セフィア様のように、セフィア様だったらこうすると、常に彼女を踏襲して来たけれど彼女のように騎士の真職が貰えなかったら?
例え望む結果にならなくても、騎士になりたいからリスティアに行くのだろうか?
ううん、だめだ。
こんな気持ちで精霊の儀を受けた所それこそ騎士なんて賜れない。
ゆっくりと息を吐く。
同時に意を決して扉に手をかける。
人によっては卒業生の人生にも影響すると言う儀式。
私にとってもきっと、人生の転機になるだろう儀式。
そんな扉なのに聖堂への扉は思った以上に軽くて、簡単に開いてしまった。
目の前に聖堂に続くのみの廊下が現れ、奥の方から薄ぼんやりと淡い青色の光が漏れていた。
いかにもな神秘的な光。
もともと引き返すことなんて考えてはいなかったけど、この扉をくぐったら今までの生活が終わるように思う。
学生で居られるのはもう少しだけなのだ。
学校側が用意する道はもう終わりに差し掛かっている。
生まれた直後に終わるはずだった私の人生は、セフィア様のおかげで形を持った。
セフィア様のようにありたい、今になって改めて思う。
暖かいようなそれでいて研ぎ澄まされるような青い光を目指して歩いて、卒業を凄く現実的に感じた。
何となく、わかる。
強大な何かが進む先に居るのを感じるのだ。
通路の奥から漏れている光は、精霊の光なのだ。
居るのだ、精霊は。
この光のなかを歩いているともう確信してそう思える。
まるで誘われるように、光を求めて奥へと歩みを進める。
少しだけ長く感じる廊下を私の足は迷いを見せること無く進み続ける。
歩を進めるのは自分の意思なのか、それとも何かの力に依るものなのか判断出来ない。
ただ、足取りはしっかりと歩調も崩すこと無く私は進んでいく。
さっきまでの不安や迷いが嘘かのように、歩調は軽い。
開けた空間に出たところで、目の前一杯に光が差して、目を細める。
ゆっくりと目を開けて息を飲んだ。
聖堂内の光景に目を奪われたからだった。
「わあ…」
そこにはボールのように球体状にくりぬかれている大きな空間が広がっていて、私の足元からは部屋の中心まで下る階段が一直線に続いていた。
かなりの広さで、球技などの運動だって行える広さの聖堂だ。
外からこの聖堂を見たときにはこんな広大な空間が広がっているだなんて思ってもいなかった。
それだけでも息を飲むには十分な理由になるのだけれど、私が圧倒された理由はそれが原因ではなかった。
聖堂を内側から照らす青白い光。
歩いているときから光が漏れていると思っていたのだけれど、漏れていたのではなく見えていたのが、光源そのものだったのだ。
聖堂の中心、下側にも上側にも広がり高くなっている天井に届くほど巨大な水晶が目の前で厳かに輝いていた。
青く透き通っているようで消して向こう側を透かすことのないクリスタル。
精霊石の巨大な結晶。
セントラミア王国において、精霊石の結晶は別段珍しいものではない。
お土産やさんでも比較的安価で手に出来るこの国の特産品の一つなのだ。
だけれどそれは、指の第一間接までくらいのサイズが標準で、拳大の結晶であったとしても驚かれる位なのだ。
まさかこれほどに巨大な精霊石の結晶が存在しているだなんて考えたこともなかった。
途方もなく大きい。
それだけで尊く神聖な物に感じてしまう。
中心にある一際巨大な精霊石の回りにも大小様々な精霊石がゴロゴロとおまけのように転がっている。
もちろんそのどれもが、常識では考えられないようなサイズだった。
「………」
いつの間に階段を降りきっていたのだろう。
気がつけば私は手を伸ばせば精霊石にさわれるほどの距離まで歩を進めていた。
触れてみたい。
頭に霞がかかり、塞き止めることの出来ないほどの強烈な欲求が私の頭のなかを支配していた。
私はかなり臆病な方で、警戒心はかなり強いはずなのに。
それなのにもうずっと自分の意思とは裏腹に勝手する身体に対して頭の中で危機感は生まれずに、どうしても精霊石を警戒の対象として見ることが出来ない。
勝手に右手が精霊石に向かって伸びていく。
指先が精霊石にあと少しで届く
「はい、ストップね」
本当にあと少しで触れるか触れないかのところで、むんずと手首を捕まれた。
触りたい欲求は一瞬で消し飛び、霞がかかっていた思考がクリアになる。
おびただしいほどの鳥肌が立ち、それとほぼ同時に気付く。
自分の手首を掴んでいる青白く発光する腕が、あろうことか精霊石の中から伸びていることに。
「も!?」
今まで一切機能していなかった危機感が最大限まで跳ね上がり、飛びのく。
「は?」
と言う男の人の声が聞こえるのと、「あ…」と、状況を考えだした私の頭がこの腕もしかしなくとも精霊石から生えてるし、精霊関係のと言うかむしろ精霊石と同じで青白いし精霊の腕なんじゃと声をあげたのと、右手で抜き放った剣が精霊?の腕を切り飛ばしたのがほぼ同時だった。
「…………」
「…………」
時間にして数秒、生まれてからはじめて体験するような、物凄く気まずい沈黙だった。
助長するように切り飛ばされた腕が視界の隅で無音で地面に落ち直後にフっと音もなく消える。
頭の中は大パニックだ。
まだ腕しか見えていないけれど、いやその見えていた腕も今まさに消えてしまったのだけれど、精霊らしきものが目視できる存在として本当に居たことや、ほんの一瞬前までこの巨大な精霊石の結晶を精霊と皆が言うのだろうと思っていたし!今自分がしてしまったことや、肘から先は消滅したが肩までしか見えていない精霊らしきものが微動だにしないことや、精霊石に傷つけなくてよかったと安堵したことや、精霊石より明らかに傷つけたら不味いものを傷つけてるじゃないか!と自責の念に駆られたことや、まさか精霊なんだからこれくらいで死んだりしないよね?とか自己擁護を思ったことや、いや、そもそもこんなタイミングで急に腕にぎるとかあり得なくない?斬られても文句なんて言えないよ!!とか相手のせいにしてみたりとか、血とか出ないんだなぁと断面をまじまじと見てしまったこととか、人じゃなくて良かったとか考えてしまったこととか、すでに鞘に戻った剣を右手で感じて訓練の賜物だなあと自信に思ったこととか、そう言うもの全部無視して、何か喋らなきゃと考える。
「ええと、ごめ…」
最後まで言わせてもらえず、いつの間にか復元された腕で頭をチョップされたのだった。
一体どれ程の時間がたったのだろう、とぼーっとした頭で考える。
聖堂内には窓という窓が見える範囲には無いから、外の明るさは一切内部に差し込んでこない。
光源は精霊石の結晶のみで、無機質な材質の床や壁がその光を受け止めている。
「で、わかったか?ん??」
と、やや怒りめで精霊さんが私を頭のだいぶ上から覗くようにそういった。
「すみませんでしたあ」
真上を見上げ、涙目でそう答える。
精霊さんがとっても大きいわけではなくて、私は現在固い床の上で正座をさせられているのだ。
もう、だいぶ長いこと怒られているせいで、足の感覚はとっくになくなってしまった。
「たくさあ。女の子だからってなにしても涙流せば許されるとか思ってんじゃないだろうな?」
滅相もございませんとも、と、頭を横に振り許しを乞う。
舌打ちしながら精霊さんは私を軽々抱き上げると、手頃な精霊石の上に下ろした。
血の流れが止まって真っ白になった私の膝から下を見ながら、ばつが悪そうに顔を背ける精霊さん。
ここに座れ、と言っているらしい。
いいのかな、一番大きいのに比べれば小さいけれどこれも市場には出回らないサイズだからとんでもなく高価なものなんじゃ…
と遠慮して立とうとしたけれど、痺れた足は体重を支えきれず転びそうになる。
精霊さんの好意に甘えることにした。
改めて精霊さんを見る。
最初見たときから思っていたけれど、息を飲むほど綺麗な方だった。
そもそも、今もなお眼前で精霊石と同じように輝き続けるこの方を人としての基準で考えるのも失礼な話なのかもしれない。
長い髪や切れ長の瞳一つ一つが引き込まれるような魅力を出していて不意に目が合うと恥ずかしくなってこっちが目をそらしてしまう。
その身はもちろん、身体を隠しているマントすら淡く発光していてすべての要素が彼の存在感を際立たせている。
正座をしていなかったとしてもきっと私の頭より二つ分くらい上に目線があるだろうし、街中を歩いたらとんでもない大騒ぎになるんじゃないかと思う。
それに、時たま見せる人間味ある気遣いだとか、私でなくてもきっとドキッとしているはずだ。
「あのぉ…」
と恐る恐る声をかけてみる。
ギロリと睨まれた。
はい、黙っております。
「本当さ、なんなの?今年の卒業生。
特に君含めた最後!
一人目の眼鏡、アイツも腹立つわ!
待ちが長かったから暇でちょっと演出考えて厳かに出ていったってのに驚きもせずニヤニヤニヤニヤ、思い出しても腹立たしいわ!
2人目のあの軽いやつもなんなんだ??こっちが話すより先に口説きやがって!
俺が口開いたら、舌打ちしやがって、そのあとの露骨な態度の悪さ!
おかしいだろ!
こっちは精霊様だっての!
なんなんだよ!」
うわぁ、とこればっかりは精霊さんに同情してしまう。
二人と精霊さんのそれぞれのやり取りが物凄くリアルの想像できてしまう。
またヒートアップして始まりそうになる精霊さんの愚痴大会。
考えようによってはかなりレアな体験なのかもしれないけれど、いい加減私が聖堂から出ないと過保護な親友たちがここに戻ってきてしまうかもしれない。
「あのぅ…そろそろ精霊の儀とか」
精霊さんも吐き出すだけ吐き出して少しは満足できたのか、大きくため息をはいてから私の目の前で姿勢を正した。
「もうさ、格好つけるのもだりぃし、適当に説明すんぞ?」
適当は嫌だな、とか思いながらも、精霊さんの性格ってかなり人間っぽいなぁ
と思う。
出会い方さえ問題なければ、サイモン辺りと案外気が会うんじゃないかな。
もちろん、目の前の巨大な存在感は人間のそれとは全然違うのだけれど、なんかこう、なんというか、こう。
この人は喋らない方がいいタイプの人だと思う。
「失礼なこと考えてない?」
いいえ、と両手を振って続きを促す。
「まずいいか?精霊鉱で出来た剣あんだろ?それを回収する。」
私の左腰から下がっている剣を指差しながら精霊さんは続ける。
「その剣はな、要するに一種の魔法道具みたいなもんだ。持ち主の生活を記憶し続けている。その情報を精霊石に読み込ませると、真職が占われ、さらに運が良ければー…まぁいいか」
なるほどと思う。
私たちの生活や習慣をみて、その上で適正な職を決めているのだ。
学校側が常に持ち歩くように念を押していたのはこのためだったんだなーと他人事のように思う。
7年の間自分の様子を記憶していて、それを元に占われるというのなら真職がしっくり来るといわれるのなるほどと納得できた。
「それでおしまい。さよならバイバイってわけだ。」
絶対この人説明面倒くさくなっていろいろはしょってる。
運が良ければ、何なのだろう。
ただ聞いたところで君には関係ないだろうから、とか断られそうだけれど。
結構重要なことに違いないと思う。
「真職って何種類くらいあるんですか?」
「たくさんあるぞ。100や200じゃ効かないくらいだ」
そんなにあるんだ。
もともと騎士は毎年一人しか選ばれないから、私が貰える可能性は低いのだ。
むしろよく考えると精霊の儀を受けるのは私が最後だからすでに『騎士』が排出されていたらどう足掻いたってダメじゃないか、と今更ながら気がつく。
「なんだ、欲しい真職があるのか?」
意外だ、と言わんばかりの精霊さん。
私をいったいなんだと思っていたのだろう。
「希望を聞いてやらんこともないぞ?
ダメもとでいいじゃないか、言ってみ?
ん??
恥ずかしいか?
大丈夫みんな不安な顔してソワソワしてるもんだ。
ホレ、言ってみ」
いやもう本当さ、綺麗な顔して雰囲気も抜群にあるんだから精霊さんには心底黙ってて欲しい。
「希望、聞いてくれるんですか??」
「聞いてやろう。
さぁ言え」
「………騎」
「聞くだけで決めるのは石だが」
首を落としても何事もないように復活するのか試してみよう。
立ち上がろうとした私のおでこを人差し指で押さえながら精霊さんはごめんごめんと笑いながら、言う。
「真職を決めるのは精霊でも精霊石でもない。
君の今までが決めるんだ」
と、急に真面目なトーン。
諭す声にそれ以上なにも言えなくなってしまう。
ずるいなぁ、こういうところは流石精霊と言う所なんだろうな。
「さぁ、儀式を始めよう。もう立てるかい?」
そういわれて足の痺れが消えていることに気づき今のやりとりが精霊さんの気遣いだった事に気がつく。
促されるまま腰かけていた精霊石から立ち上がる。
「腰の剣を鞘ごとはずして掲げて」
精霊さんを見ると、優しく笑ってくれている。
その笑顔に凄く安心する。
騎士が賜れなかったらだとかの不安が溶けていく。
やっぱり精霊さんは凄い存在なんだろう。
私の想像が及ばないくらいの高次元の存在だから、人間の範疇では所々間抜けに見えるのかもしれない。
精霊さんに言われた通り、両手で剣を目線の高さまで上げる。
「目を閉じて」
「…………」
「剣をもっと上に」
額まで上げるとさらに上にと促す声。
「ん……」
爪先で立ち背伸びしながら両手で万歳している不思議な格好。
目を閉じたままちょっと待ったがなにも起こらない。
薄目で見てみると、精霊さんが前屈みで私のスカートを覗いていた。
「へへへ」
「…………」
姿勢一杯を利用して剣を抜き放ち下品な笑いの脳天に降り下ろす。
当たる直前に脳天は掻き消え一瞬後に精霊石の結晶の上の方に顕現する。
「い、今殺す気でやったろ?!」
「大丈夫です。
峰打ちですから」
「それ両刃だろお!」
焦った声を上げる精霊さん。
この人ずっとこのテンションで何年もここでやって来たのだろうか。
威厳とか威厳とか威厳とか、無いのだろうか。
精霊さんの情報がこの学園に流れないのも分かる気がする。
家柄とか関係のない私でも口を閉じたくなるような事実だから。
プライドの高い貴族の彼らは決してこの事を外で話したりしないだろうなと、思う。
無言が怖いんですけど!
とか頭上で叫んでる精霊さんに向かって鞘ごと剣を投げる。
油断してたのか精霊さんは顔面でそれを受け止めると、倒れるように剣ごと精霊石に吸い込まれていった。
ちょっといい気味だ。
これで少しは反省したらいい。
精霊さんが消えてから少しして耳障りではない位の音量で細かいガラスがぶつかり合う用な音が規則的に聞こえてきた。
そしてすぐに、聖堂内がまばゆいほどに赤く、赤く光輝いた。
光源は勿論精霊石の巨大結晶で、綺麗な赤色の光の線が聖堂の内部でまるで踊るように動き回る。
規則性は全くなく、止めどなく溢れる光のラインは縦横無尽に壁を走り回って駆け巡る。
「すご…」
「凄かろう!」
あまりにも現実味が無く、とても綺麗な光景に自然と口から漏れだした呟きは、精霊さんの被せるようなどや顔と声によって止められた。
「……」
本当にこの人精霊としての自覚をもっともって欲しい。
今この目の前に映し出されている光景は今までのやり取りで感じてしまった精霊さんへのマイナスイメージを払拭するのに余りあるほどに見るものを感動させるのに、精霊さんが口を開いて行動する度に畏敬とか畏怖とか霧散してしまう。
「精霊石は君と共に長い時間を過ごした剣の声を読み解き目に見えない形を作る」
精霊さんが指揮者のように空中で腕を振ると、それ似合わせて光のラインが規則的に動き出し、内側から弾けるように見えた光は棲みかにもどるようにして精霊石に吸収されていく。
「それを理解し人の言葉で伝えるのが精霊だ。」
真面目モードに切り替わった精霊さんの声に合わせるように、光の舞踏はその筋を薄くし、やがて穏やかに終わった。
鮮明に光輝いていた赤色は大分落ち着いた薄い赤色に変わって、精霊さんは色の変化が終わった精霊石に手を伸ばす。
ドクンと自分の中で心臓が脈打つ。
真職が告げられるのだ。
もう結果は出ているのだろう。
ううん。
精霊さんは最初に言っていた。
精霊石が決めるのではなく今までの私が結果を決めたのだ。
精霊さんのかざした手に吸い取られるように赤色がどんどん薄くなっていく。
聖堂内がもとの青色の光で照らされるようになったときに、精霊さんは私のほうに振り返った。
「あー、もしかして欲しかったのって」
「騎士です。騎士!」
おお、と手をポンと叩いて精霊さんが何度も頷く。
これはもしかするともしかしたかもしれない。
「おめでとう」
その言葉で思わずガッツポーズをとってしまう。
一瞬、精霊さんの前で失礼かとも思ったのだけれど、セフィア様に憧れ長年求め続けた真職に溢れる感情は抑えようが無いと思う。
そうだ。
そもそも真職を定める精霊剣その物がずっと私と共に過ごしてきたのだから、私がどれ程騎士を望んでいたか誰よりも一番理解してくれているのも精霊剣だ。
そんな剣が選ぶのだから、私が騎士になるのはもう儀式を受ける前から決まっていたようなものなのだ。
短い時間の中で、騎士を喜び踊り出す自分と、冷静に判断基準を考える自分と、それでもやはり喜ぶ自分とがごちゃごちゃになりながら頭の中を駆け巡る。
「やっ……!!」
「…の様に場合、国によってはそう直訳しなくもない、いや最近はしないか。まぁ、騎士のようなものだよ」
!?
二の句が続けられず、気づかないうちに口がパクパクと開閉を続ける。
「改めておめでとう。君は騎士に並ぶ真職『武士』だ」
デデン、と無駄に胸を張る精霊さんに私はあらんかぎりの力を込めて叫んだ。
「き、きゃあああああああああああああ!!やり直し!やり直しを要求します!!」
もちろんだけれど、私の願いは聞き届けられなかった。
明日も0時に更新させていただきます。よろしければ引き続くご愛読ください。