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第93話 地下室での攻防②


~神殿騎士第七師団駐屯地 地下~

 ベルデと名乗る謎の老人はランジネット公国の公爵家の者だった。ベルデの話によるとランジネットは隣のブロワ王国と百年近く戦争をしており、お互いに国力が衰退しかけていた。そんな折、このベルデは北の聖王国、教会に所属している神殿騎士に己の研究成果と資産を引き換えに神殿騎士の武力を得ていたのであった。

 元々ランジネット公国は、魔法の研究が盛んに行われいていた国であり、ファルマール家でもその例外ではなかった。ベルデはその中でも禁忌とされる死霊術に手を出していた。死霊術は死者の魂を現世に呼び戻し、その者を使役するという術である。



 地下室の中でベルデが饒舌に神殿騎士との関係を話していた時、突然地下室内が地鳴りのようにゴゴゴと鳴り響いた。

 

 「上の方で何やら騒がしいようデスね」

 ベルデは地上の方に興味を持つ。

 

 「きっとススム君だ!」

 

 「まだ侵入者がいるんデスカ」

 「きっと戦っているのはガリア君デスね」


 「早く行って加勢しないとな...」

 ススム君待っていてくれ。そうフラムが行動を決める。早くこのベルデを何とかしないとそして、囚われている人たちを救出しないといけない。しかし、このベルデという老人思った以上の強敵だ。そんな考えにフラムは至っていた。

 

 「マリー君さっきの作戦は変更だ!」

 「俺と君の二人でこのベルデを倒すぞ!」

 「分かりました!私この人のこと嫌いです!」

 「死んだ人を弄ぶような人は許せません!」

ロレーヌの村で自らの母親を亡くしたマリーにとって、死者の尊厳を踏みにじるこのベルデと言う男に対して心底腹を立てていた。


 「どうやらあなたたちはやる気のようデスね」

 「さっさと殺して、私の実験材料にしてあげマスヨ」

 

 「スキル:加速!」

 マリーは戦乙女ヴァルキリーのスキルで自らのスピードを上げ、ベルデに斬りかかる。

 

 「おー早いデスねお嬢さん」

 

 「サモンダークネス 現れよデスナイト達よ!」

 突如として、3体の黒塗りの騎士たちが現れ、その騎士たちはマリーの攻撃を全て受け切った。その騎士の顔は皆、骸骨であり黒い鎧を身に纏い異様なオーラを放っていた。

 

 「サモンダークネスだと...」

 「また厄介な術を使うな...」

 フラムは心底嫌そうな顔をしてマリーに対して言う。

 

 「フラムさん!何か知っているんですか!?」

 

 「ああ、サモンダークネスは魔界から悪魔や死霊を呼び出す術だ」

 「何がヤバいってあの術は術者の実力によって呼び出される魔物は変わっていき、魔力を一切消費しないって点だ」

 「そして、アレが使えるってことはもう奴は人間を辞めている」

 

 「そ、そんな!何か弱点とかないんですか!?」

 マリーは焦るように聞いた。

 

 「フフフ...無駄デスよ」

 「サモンダークネスは、最強の召喚術!」

 「弱点なんかありませんヨ」

 

 「とにかく奴を殺すしかない!」

 「それしかないんだ!」

 フラムはデスナイト達に攻撃を開始する。

 お互いの剣がぶつかり合い、火花が散る。

 

 「赤魔法:フルブレイズ!」

 フラムの渾身の赤魔法フルブレイズをデスナイトに放つ。

 

 しかし、デスナイトの盾によってその攻撃を防がれてしまう。デスナイト達はほとんど無傷に近かった。

 

 「クッ、かなり魔法防御力の高い盾だな...」

 

 「こんな時にススムさんがいてくれたら...」

 マリーは上で戦っている進がいてくれたらどれほど強いかと一瞬考えてしまう。

 

 (イヤ!違うでしょ!私はロレーヌ村を出て何を学んだ?ススムさんから戦い方を学んだハズ!誰かを守るために力を求めた。こんな時に諦めてどうするんだ!)

 

 「私は戦う!どんな逆境でももう戦うと決めたんだ!」

 「あの時の無力感、絶望をもう二度と味わいたくないから!」

 マリーの目はロレーヌの村を出た時と同様何か決意したそんな力強い目をしていた。

 

 「マリー君...そうだな君みたいな女の子が頑張ろうとしているんだ!」

 「冒険者の先輩として奴らは絶対に倒そう!」

 二人はそう決めてから早かった。

 

 「うおおおお!」

 フラムは地面を駆け、マリーは宙を舞い攻撃をした。

 

 「緑魔法:魔の大樹マジックプラント!」

 「青魔法:ハイドロランチャー!」

 

 「何!?多重詠唱だと!?」

 「ただの小娘だと思ったら相当な魔法使いのようデスね」

 ベルデは同時に大型の魔法を唱えたマリーに驚く。

 

 マリーの魔の大樹マジックプラントはデスナイト達の動きを止め、ハイドロランチャーがデスナイト一体の胸を貫く。

 

 「グオオオオ!」

 デスナイトの低く不気味な叫びが地下室内に響く。

 

 「骸骨なのに自分の体に傷つけられて怒っているのか...」

 「ならこいつは食らっても無事でいられるかな!」

 

 「マリー君!あれをやるぞ!」

 「ここでですか!?」

 「ああ、ここに捕らわれている人たちは君の転移石を使って地上に出てくれ!」

 

 「分かりました気を付けてください!」

 「青魔法:ハイドロジェネレーション!」

 地下室内にサァーと冷たい空気が満ちる。

 

 「何をしているのデスカ!?」

 

 「ふふ、実はこれ進君に教えてもらったんだけど、マリー君の青魔法は水素と言う気体を生み出すことができるみたいなんだ!」

 「水素ってのは火を加えると爆発を起こすらしい!」

 「そして、俺の得意魔法は黄魔法、爆発系魔法さ」

 

 「な、貴様!自分もろとも地下室を吹き飛ばす気デスカ!」

 

 「ハハハ!分かっていないなじいさん!俺のスキルは熱完全無効を持つどんな爆発が起こったとしても耐えることができる!死ぬのはお前たちだ!」

 

 「クッ、止めるのデス!」

 「囚われている人たちを見殺す気デスカ」

 

 「囚われている人は既にマリー君が救出して転移石で移動したよ!」

 ベルデは辺りを見回して、ハッと気づく、さっきまで近くで眠っていたリオン姫、そして他の囚われていた人たちが一人もいなくなっていることに。

 「な、あの一瞬で何という少女デスカ」

 

 「ホント凄い奴らだよ...マリー君もススム君も...」

 「彼らとなら何でもできそうな気にさせてくれる」

 

 「さぁもう終わりにしようお前のような外道はこの世にいるべきじゃないだ!」

 

 「まだ私は死ぬわけには行けないンデス!」

 「まだやらなければいけないことがあるんですヨ!」

 

 「死霊術...」

 

 「もう遅い!」

 「黄魔法:インクローブエクスプロージョン!」

 その瞬間、神殿騎士第七師団駐屯地の地下は大爆発が巻き起こり、跡形もなく吹き飛んだ。

 基地の半分以上の面積は瓦礫の山となり崩壊した。

 

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