第778話 【エピローグ】あなたを殺すのは私だけ、お前を殺すのはオレだけだ
~アダムス エデンの園~
シンと云う脅威は去り、世界の平和は守られた。
進達はエデンの園で暫く休む。
自然と未央との融合も解除され、元の二人に戻った。
「おろ・・・?」
「どうやら、元に戻ったらしいな―――」
「そみたいだね―――」
「そろそろオレ達も帰らないとな。」
「うん!!」
そんなやり取りをしてたら、逆に新達が戻ってきた。
「おーい、天童~~!!未央ちゃん~~!!」
「新君・・・!?」
「みんな・・・!?」
どうやら中々戻ってこないオレ達を心配して見に来たらしい。
「帰るって約束したのにな―――」
「そんなにオレは信用されてないのか?」
進はそうぼやくが、そんなことよりも平和になったことをみんなで喜び合う。
「その者は・・・シン!?」
徳川が満身創痍のシンを見つけ、声を上げる。
エレナが必死にみんなへと説明する。
既に改心しており、脅威ではないと。
オレや未央もそれには手伝った。
徳川、セルフィを説得するのに一番苦労した。
この二人は相当恨みを持っている。
それでも何とか宥めることができた。
徳川にはオレの顔に免じ貰い、セルフィはエレナとシンでガラドミア復興に全力を注ぐと約束した所でやっと話が纏まる。
「やっと平和が取り戻せたね―――」
「あぁ―――」
「でも、まだやり残したことがある。」
「えっ―――!?」
「オレ達が元の世界に戻るってことだよ。」
現実世界から来た者達は思い出したような顔になる。
「戻れるのか!?」
「あぁ―――」
「あのエレベーターが女神アークの元に繋がっている。」
世界中の王権が集まり、光のエレベーターが天高く伸びている。
「コレに乗れば、ヤツの元へと行けるはずだ。」
「で、誰が行くんだ?」
「みんなで行くのか?」
「あいにく一人用みたいだ。」
「オレが行っていいか?」
進が立候補する。
「アイツとはオレが一番関わりが深い。」
「それに前にアイツはオレに言ってきた。」
「オレを殺すのは自分だけだと―――」
「あの言葉の意味、今なら分かる。」
「アイツはこうなることが分かっていたんだ。」
「最後に自分の前に現れるのはこのオレだと―――」
「天童、行くのか?」
「お前・・・大丈夫なのか?」
新が心配している。
無理もない。
相手は絶対の女神で、オレのことを殺すとまで言っている。
「天童君、行きなさい―――」
「あの人はそれを望んでいる。」
鏡花が進にそう云ってきた。
鏡花にとって、女神アークは母親も同然。
「オレがヤツを殺すとは考えないのか?」
「そうなったらそうなったの話よ―――」
「でも、あの人は簡単には倒せない。」
「それに・・・私は貴方を信じてるから。」
鏡花はそう云って、後ろを向いた。
もしかしたら泣いていたのかもしれない。
進はみんなの方を向き、最後に顔を見ていく。
「進っ―――!!」
「絶対生きて帰って来るの!!」
「そしてたら、私が貴方を殺してあげるの!!」
キル・・・。
冗談だろうけど、オレを元気づけているのか。
「ススムさん、お気を付けて。」
「あぁ、マリー、行ってくるよ。」
「進っ!!」
「絶対に死ぬなよ!!」
リオンが笑顔でそう云ってくれる。
いつもその笑顔に勇気を貰えていた。
「進様―――」
「貴方は大切な天童家の跡取り―――」
「絶対に戻ってこないということ、無きように。」
「徳川、お前は本当によく働いてくれている。」
「父さんが生きていたら、なんと云っただろうな―――」
「天童!!絶対またあっちでやり合おう!!」
「だから、死ぬんじゃねェーぞ!!」
新・・・お前は本当に変わらんな。
「進ちゃん・・・楽しんで♪」
未央はそう云ってきた。
これから最後の命懸けのバトルをしようってヤツに楽しむって・・・。
まぁ、そうだな―――
間違っちゃいない。
シン・・・お前云ったよな。
退屈な世界には飽きるって。
あぁ、その通りだよ。
オレはこの世界に来てから毎日、命懸けで楽しかった。
辛いこともあった、悲しいこともあったが、それでも退屈はしなかった。
今だってそうさ―――
オレは今メチャクチャ楽しい!!!
だから、オレは最後まで楽しむぜ!!
「じゃあ、みんな―――」
「行ってきます!!」
進は光のエレベーターへと乗り込む。
光のエレベーターはボタンを押すことなく、自動で扉が閉まり、上へと移動する。
どれくらい経っただろうか。
地上が豆粒くらいまで小さくなる。
もう、みんなの姿は視えない。
大気圏を抜け出し、宇宙空間へと至る。
この宇宙みたいな空間でも自然と呼吸はできた。
そして、光のエレベーターはついに真っ暗な空間を終点として、動きを止めた。
「ここにヤツが・・・。」
そんな進を迎え入れたのは、十二天使達だった。
彼女達強い・・・。
全員が朝霧鏡花と同じクラスの実力者だと分かる。。
「こちらです―――」
彼女らに導かれ、ドンドン奥へと進む。
「お前達いいのか?」
「こんなに丁寧に迎え入れて―――」
「オレはあの女を殺しに来たのかもしれないんだぞ?」
「・・・あの御方は貴方を迎え入れることをお望みですから。」
「私達はそれに従うだけです。」
こうして、ついに辿り着く。
女神アークのいる場所へ。
「ここか・・・。」
進は開く扉の奥へと進んだ。
そこにいたのは紛れもなく女神アーク。
「ようこそ―――」
「進ちゃん―――」
「聖王国以来かしら?」
「オレがここに来た理由分かっているだろ?」
「みんなを現実世界に帰す―――」
「そうでしょ?」
「話が早くて助かる。」
「いいわよ―――」
「王権を集めたんだからその権利はあるわ。」
良かった・・・ここまでとんとん拍子に話が進んでいる。
「で、それだけでいいのかしら?」
女神アークはそう聞いてきた。
これだけでいいのか・・・?
その言葉を待っていたのかもしれない。
「女神アーク・・・アンタ退屈してないか?」
「・・・・・・・。」
「サンドルに殺されたオレを蘇らせてくれた時、アンタ云ったよな。」
「オレを殺すのはアンタだけだと。」
「ええ、云ったわ。」
「あなたを殺すのは私だけ―――」
「だったら、お前を殺すのはオレだけだ!!」
「それの意味するところ分かっているのかしら?」
「誰も勝てなかった私に挑もうっていうのよ!!」
「あぁ、分かっているさ。」
「オレがアンタの退屈をぶっ壊してやるッ!!」