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第771話 【デルタ∴サイン】すべてはここからはじまった⑨


~聖王国 処刑場~

 

 マリアが死んだ。

 

 受け入れがたい事実。

 

 一体誰が悪い?

 

 コイツ等か?

 

 それとも、護り切れなかった余か?

 

 「エトワールウゥゥーーーッッ!!」

 

 ビリビリ・・・!!

 

 アリスの怒号で、周囲の者達は激しい鳥肌が走る。

 

 者によってはその殺気だけで卒倒した。

 

 それだけの殺気―――

 

 「コレが魔王の本気か―――!?」

 

 エトワールは真っ向から迎え撃つ。

 

 初めからそのつもりだった。

 

 魔族は忌み嫌い、全て根絶やしにする。

 

 世界は人間だけで充分。

 

 それがエトワールの思想であり、聖王国の意思。

 

 「貴様さえ倒せば―――」

 「後の魔族は我々が力を合わせれば何とでもなるッ!!」

 

 真祖―――!!

 

 進化の極意ッ!!

 

 アリスの形態が変わる。

 

 「な、なんだ・・・その姿は!?」

 

 「アリス様―――」

 

 リカントの心配する声―――

 

 「パパ・・・!?」

 

 エレナやシンもアリスの変わり果てた姿を目撃する。

 

 怒りで我を忘れたアリスは、その後のことをほとんど覚えていなかったという。

 

 それは異形の悪魔―――

 

 全ての災厄を振りまく魔王。

 

 気が付いた時には周りには死体の山だった。

 

 「ぐゥ・・・ま、さか・・・これほどのバケモノとは・・・!?」

 

 エトワールは全身が傷だらけになり、片腕を失い、這って逃げようとしている。

 

 天気は曇り出し、雨がポツポツと降ってきた。

 

 その雨の冷たさを受け、アリスは自我を取り戻す。

 

  "余は一体、何をしていた・・・?"

 

 

 アリスはマリアと過ごしていた日々を思い出す。

 

  "今はこんな人間と魔族がいがみ合っているけど―――"

  "また人間と魔族が仲良くできる日が来ると思うんだ!!"

 

  "そうだな―――、いつかそんな世界を目指したいものだ。"

 

  "アリス!私にそんな世界を見せるって約束して!"

  

  "どうしたんだ?突然・・・"

  

  "ねっ!?いいでしょ―――、約束!!"

  

  "・・・あぁ、勿論、マリア―――"

  "君にいつかそんな世界を見せると約束するよ。"

 

 

 そうだ―――

 

 余はマリアと約束した。

 

 それなのに・・・マリアは・・・

 

 「ア"ア"アァ"ーーーっ・・・!!?」

 

 アリスは呆然と立ち尽くしたまま、咽び泣く。

 

 既に戦意は喪失している。

 

 リカントはそんなアリスと一緒にエレナやシンを魔王城へと連れて帰る。

 

 マリアを失ったアリスは意気消沈し、まるで抜け殻のような日々が続いた。

 

 それから1年、3年、5年、10年と月日が経つ。

 

 アリスは相変わらず、自室に籠り、自問自答の日々。

 

 自分の中では既に答えは出ていた。

 

 マリアの死は神殿騎士がやったことだが、人質に取られる可能性を考えられなかった自分にも非がある。

 

 少し考えれば分かったことだ。

 

 それなのにマリアは人間だからといって、魔族の護衛を付けなかった。

 

 

 アリスがそんな日々を過ごしている間にエレナやシンは成長していった。

 

 エレナは子どもながらにマリアの死を受け入れ、強くなろうと魔法の特訓を行っていた。

 

 もし、あの時自分に力があれば、母親を護れたと想いながら―――

 

 一方のシンはアリスと同様に母親の死のショックで塞ぎ込んでいた。

 

 それでもシンは別の方向で母親と再会できないか研究を行っていた。

 

 それが死者の復活だ。

 

 彼は魔導と魂を司る死霊術の研究を行う。

 

 そして、様々な死者の声を聴く度に世界は不幸に包まれていると認識するようになっていった。

 

 『ねェ―――』

 『パパ!今度は僕の考えた時空臨界論について聞いてくれる?』

 

 

 『今日は、古代種のエルフたちの数十人の血から不老不死の術を作ってみたんだ―――』

 『これでどんな兵士も死なないで暮らせるよ。』

 

 

 『人は死んだ後も魂になってこの世界に残り続けるんだ―――』

 『でも生きてる人にはその魂は見えないし、触れない。勿論、お話しすることだってできない。』

 『だから、僕考えたんだ!魂になってもお話が出来る方法―――』

 

 

 シンは研究を始めていくにつれ、次第に狂い始めた。

 

 余がもっと早くそのことに気付いて止めていれば、あんな事故は防げたんだ。

 

 余はマリアだけでなく、最愛の息子であるシンすらも失うことになる。

 

 

 

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