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第764話 【デルタ∴サイン】すべてはここからはじまった②


~万族の都バルドリア~

 

 街中の修道院の一室、そこにマリアは住んでいる。

 

 月のキレイな夜、コンコンと窓を叩く音が聴こえる。

 

 「誰?」

 

 マリアは音の聴こえた窓の方へと歩く。

 

 「貴方は―――!?」

 

 窓を開けるとそこにはアリスがいた。

 

 ここは2階だというのにアリスは宙に浮いている。

 

 吸血鬼だから飛んでここまで来たのだろう。

 

 「アリス―――」

 アリスはそう答える。

 

 しかし、マリアはそういうことを聞きたいわけではない。

 

 「いえ、そういうわけではなく―――」

 「何で私がここにいると分かったのですか?」

 

 マリアは疑問に思ったのでそう聞いた。

 

 「父さんに聞いた―――」

 「この街の聖女はどこにいるのかってね。」

 

 マリアを助けた後、あのリーダーからは厳重注意を受けた。

 

 聖女を助けたとはいえ、アリスはまだ子ども。

 

 こんな夜に一人で危険だと、こっぴどく叱られた。

 

 でも多分、あのリーダーもアリスがこの都市の防衛を一任されているマグナリオスの息子だということには気付いたのだろう。

 

 それ以上のことは言われなかった。

 

 この時代の魔族は忌み嫌われる存在などではなかった。

 

 寧ろ、その逆―――

 

 力の高い魔族は率先して、邪神討伐を目指す為の戦力として重宝されていた。

 

 「なるほど―――」

 「確かにマグナリオス卿なら私がここにいることは知っていてもおかしくはありませんね。」

 「それで、そのアリスさんはどうしてここに?」

 

 「アリスでいいよ―――」

 「"さん"付けは性に合わない。」

 「理由はそうだな・・・・友達が欲しかったからかな。」

 

 「友達・・・ですか―――」

 

 「そう―――」

 「僕そういえば同年代の友達一人もいないなって―――」

 「そんな時に歳の近い君に出逢った。」

 「コレはもう運命だ。」

 「だから僕と友達になってくれないか?」

 

 アリスは少し恥ずかしそうに話す。

 

 マリアも生まれてからずっと修道院で暮らしている。

 

 同年代の友達はアリスと同じで一人もいない。

 

 「・・・・分かりました。」

 「ですが、友達というのは何をするのでしょうか?」

 

 マリアも友達というのが何なのかあまりよく知らない。

 

 「う~~ん、そうだな。」

 「とりあえず、夜の散歩でもどうかな?」

 

 そう云って、アリスは手を差し出した。

 

 「っ・・・!?」

 

 マリアは少し躊躇する。

 

 自分はアリスのように空を飛ぶことはできない。

 

 「恐がらないで大丈夫だよ―――」

 「絶対に離したりしないから―――」

 

 アリスはそう囁く。

 

 その言葉、その顔からアリスが本心でそう云ってると分かった。

 

 「離したら承知しませんよ―――」

 「"アリス"・・・!!」

 

 そういって、マリアはアリスの手を取った。

 

 二人は空を飛び、夜の街を散歩した。

 

 その景色はマリアが初めて見るものだった。

 

 とても広い街の景色を空から一望できる。

 

 こんな素敵なことがあったのかと感動した。

 

 そして、二人はとりとめのない会話をして、その日の散歩を終える。

 

 去り際、マリアがこう云った。

 

 「今日は楽しかったです。」

 「また、来てくれますか?」

 

 「・・・・勿論!!」

 「気に入ったのならまた夜に誘うよ!!」

 

 こうして、二人は度々夜の散歩を行う関係となる。

 

 二人は自分達のことを語り、親睦を深める。

 

 今日何があっただの、こんなことをしたいとか・・・そんな自分達のことを話していた。

 

 それは二人にとって大切な時間であり、とても幸せな時間となっていた。

 

 

 アリスが15歳の時―――

 

 このバルドリアの状況が大きく変わりつつあった。

 

 "邪神"の影響だ。

 

 周辺国家が甚大な被害を出しており、その勢力がこの国の国境付近に押し寄せているらしい。

 

 奴らは一体何者なのか?

 

 正体不明の脅威の出現に国は全力で対処を上げようとしてた。

 

 「皆さん、どうかご無事で―――」

 

 マリアは戦場へ向かう戦士達に祈りを捧げる。

 

 彼女もここ数週間、ほぼ休みなしで治癒の白魔法を掛け続けていた。

 

 治癒の白魔法は聖女しか使えない。

 

 聖女とは女神アークに選ばれた血筋。

 

 ごくわずかな数しかこの世界には存在しない。

 

 その負担は大きい。

 

 「アリス・・・母さんを頼むぞ。」

 

 マグナリオスはアリスの頭を撫でる。

 

 彼もこの国の防衛担当として、邪神に対抗するべく出撃しようとしていた。

 

 「分かった―――」

 「母さんは僕が護るよ!!」

 

 アリスは元気よくそう口にする。

 

 「うむ、任せた―――」

 

 「旦那様・・・少しアリス様のことでお話しよろしいでしょうか?」

 

 従者のベルモンドが少し心配そうな顔でマグナリオスに何か相談しようとしていた。

 

 「何の話かは分からないが、手短に頼む。」

 

 マグナリオスとベルモンドは奥の部屋へ二人で入っていった。

 

 アリスはマリアのことが心配になり、屋敷を抜け出す。

 

 

 「―――、それでアリスのこととは何の話だ?」

 

 「実は私この間見てしまったのです―――」

 「アリス様が日の下の元、外を駆け回っているところを―――」

 

 「なにっ!?」

 「それは本当か!?」

 

 吸血鬼は日の下で活動することは難しい。

 

 日の下で走り回るなど異常なこと。

 

 「えぇ、私はハッキリとこの眼で見ました。」

 「何か思い当たる節などはありますか?」

 

 アリスが実は吸血鬼ではない?

 

 いや、それはない―――

 

 あの牙と羽、それに血を求む体質。

 

 間違いなく、アリスは吸血鬼。

 

 うーむ、なら考えにくいが一つだけ可能性がある。

 

 「アリスは真祖の力を持った吸血鬼かもしれない。」

 

 「真祖・・・?」

 

 「あぁ、通常の吸血鬼とは違う吸血鬼の始祖の血を持った吸血鬼。」

 「真祖の吸血鬼は日の下でも人間達と同じように活動できると聞く。」

 「それだけではない―――」

 「魔力や筋力など通常の吸血鬼よりも遥かに高い素質を持つ。」

 

 「ですが、旦那様も奥様もその真祖ではないのですよね?」

 「何故アリス様が―――!?」

 

 「分からない―――」

 「しかし、真祖に関しては"隔世遺伝"が考えられる。」

 「私かヴァルネリアのどちらかの先祖に真祖がいて、それがアリスの体質として現れた。」

 

 「そんなことが・・・。」

 

 

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