第759話 【デルタ∴サイン】聖元
~ブラックボックス~
ここはブラックボックス。
異次元の狭間。女神アークが世界を監視し続ける真っ暗な空間。
暗がりの中、モニター越しに未央達の闘いを眺める女神アーク。
「この闘いの勝者のいずれかがここにやって来ると思われますが、いかがなされますか?」
十二天使の一人が女神アークに尋ねる。
闘いの結末を女神アークは既に予見している。
それでも彼女はその運命を受け入れるだけ。
誰が来ようが関係ない―――
「構わないわ―――」
「ここに来た者を歓迎してあげなさい。」
「その者の願いを叶えてあげるわ。」
神聖なる源―――
コレが世界中から信仰される女神アークという存在。
「かしこまりました―――」
「丁重に迎え入れたいと思います。」
「さて、進ちゃんはこれからどうなるのかしら?」
全てを知っている彼女がわざとらしく進の名前を口にしていた。
~アダムス エデンの園~
あんな小娘に生意気なことを云われるなんて、なんて不幸なんだ。
だが、それもまたオレにとっての糧になる。
そうやって、オレは力を付けてきた。
「オレはお前に残酷な不幸を与える―――」
「後悔しても知らんぞ。」
「やれるもんならやってみなよ!」
「ベェ~~~だっ!!」
未央はぺろりと舌を出して、片目の下まぶたを指で引っ張って「あっかんべー」をする。
まるで無邪気な少女だ。
「出でよ!闇黒剣!!」
未央は異空間から自らの武器を取り出す。
禍々しい大剣だ―――
凡そ、少女が持つには似つかわしくない身の丈と同じくらい巨大な大剣。
「かつて、ヌバモンド史上最高の腕を持つとされる鍛冶屋ブラッドが創ったとされる二振りの剣。」
「神聖剣と闇黒剣・・・。」
「その片翼か―――」
「行くよ♪」
今度は未央の方から仕掛ける。
ブンと闇黒剣を振り回す。
力任せの大振り―――
「舐めているのか?」
「そんな大振りが当たる訳ないだろう―――」
シンは簡単に躱してしまう。
当たり前だ。
進と違って動きが洗礼されていない。
いくらステータスが高くてもそんな攻撃はシンに当たりはしない。
「やっぱりダメか―――」
未央もそんな予感はしていた。
「天童流剣術:三日月!!」
シンは神速の剣圧を飛ばす。
「うおっと―――」
ギリギリで躱す未央。
「私がもっと上手く使いこなせてたらなぁ―――」
未央は自分に剣の才能がないことを残念がる。
そんな悠長なことをしていたら、シンがその隙を逃すはずが無い。
「天童流剣術:朧月!!」
揺らめく陽炎のように剣先が揺らめく。
未央を斬りつけた―――
「ッ―――!?」
未央の上体はバッサリ斬りつけられ、鮮血が噴き出す。
「未央様―――★!!」
エレナが叫ぶ。
今の一撃がどれだけのダメージなのか傍から見ても分かるくらいには重症。
「大丈夫―――」
「私は大丈夫だから―――」
「強がりはよせ―――」
「いくら魔王と云えども天童流剣術をまともに喰らえばタダでは済まない。」
"未央―――、無理をするな!!余と代われ!!"
「まだダメ!!」
「私、まだ何もしてないから!!」
「あの人に何も伝えられてないから!!」
シンを真っ直ぐなその眼で見つめる未央。
"何を云っている!!そんなことを云ってたらお前がやられるぞ!!"
「もう少し―――」
「やらせて。ねっ!?」
アリスの言葉にも一切譲らない。
未央は自分でも我が儘を言っていると分かっている。
それでもここで代わってしまったら何も変わらないんじゃないかと考えていた。
できないからやらないんじゃない―――
やろうとしないからできないんだ―――
未央の眼がそう訴えているのを感じる。
"危なくなったら代わるぞ―――"
「ありがと♪」
アリスは渋々承諾。
だが、それでこそ、真島 未央。
彼女はこんな形では諦めない。
自らの願望に常に一直線。
そんなやり取りをしている内に未央の身体は真祖の力で再生していく。
シンはそれを許さない―――
更なる追撃。
「天童流剣術:十六夜!!」
繰り出されるは無数の斬撃。
「形態変化!!」
闇黒剣は剣の形態から杖の形態へと変化する。
やっぱり杖の方が私は使いやすい。
「吸血気法:血の晩餐!!」
キイィィーーン!!
未央の杖とシンの刀身が弾き合う。
自らの血を使い、魔力が上げたか―――
魔力で身体能力を向上させる未央。
だが、それでオレは超えられんッ!!
シンの猛追―――
「天童流剣術:満月!!」
「吸血気法:血の咆哮!!」
未央とシン、二つの力がぶつかり合う。
二人の激闘はさらに苛烈を極めた。




