第749話 【デルタ∴サイン】天才 VS 天際
~アダムス エデンの園~
天童 進とシン―――
時代を超えた天童家の血筋。
両雄、相見える。
「進ちゃん―――」
「未央、エレナ―――」
「言いたいことは分かる。」
「だが、まずはオレに行かせてくれ。」
そんなの危険だよ―――
以前の私ならそう云ってたんだろうな。
「私はいいよ―――」
「進ちゃんがそれを望むのなら。」
「エレナちゃんもそれでいい?」
未央はエレナにも確認する。
「私も構わないわ★」
「でも、私の目的はシンを―――」
「弟を止めたいだけ★」
「殺すことではないわ★」
エレナはきっぱりとそう言い切る。
姉としてなのだろう―――
甘いのかもしれない。
シンは既に後戻りできない所まで来ている。
それでも尚、姉としてシンを助けたいと思っているということだ。
「分かった―――」
「もし、オレがシンを殺しそうになったら止めてくれても構わない。」
進はシンと戦う為、前に出る。
「進―――」
「お前にオレは殺せない。」
シンが意味深なことを云う。
「どういう意味だ?」
「言葉のままの意味だ。」
オレの力を侮っている・・・?
それとも、自分の力によほどの自信がある?
いや、この男は正しく現実を見ている。
・・・・血か。
オレやシンの中に流れる血のことを云っているのか。
進はシンの言葉の意図に気付く。
聖女の血をお互いに引いており、オレ達はお互いに対して殺意を当てることに何となく嫌悪感を抱く。
より濃い血を持っている方にそれが有利に働く。
簡単に言えば、オレがシンを殺そうとするとき、本能的にためらいが生じる。
それが不利に生じる。
逆にシンもオレ程ではないにしろ、多少はそういった嫌悪感があるはずだ。
「どうした?」
「オレのただの一言で怖気づいたか?」
シンは分かりやすい挑発をする。
血がどうとか関係ない―――
オレはオレだ。
進はゆっくりと歩を進める。
「そうだ―――」
「それでいい。」
「子孫がどれだけ強いか、オレが見てやろう!」
聞いてはいたが、確かにオレと瓜二つの顔だ。
その顔で何百年と生きて来たんだろうな。
進は目にも止まらないスピードで雪月花を鞘から抜刀する。
キイィィィィーーン!!!
激しい金属音が周囲に轟音の様に鳴り響く。
その初撃からお互いがお互い、肌と肌を触り合うように刀身同士が会話する。
「進ちゃん・・・!?」
火花がすぐに飛び散り、今にも草木に引火しそうなくらい激しい斬撃のぶつかり合い。
刀と刀の噛み合い―――
一瞬でも気を抜けば、刹那に命が取られそうなそんな瞬間。
懐かしさすら感じる。
この斬り合い―――
命懸けのやり取り。
強引にも現実を突きつけられる。
アダムス エデンの園―――、洞窟の中なのに大きく開け、天空から差し込む太陽が中央の花畑の美しさを引き立てる。
その美しさをシンは気に入り、ここを拠点にしていた。
まぁ、そんな美しいものも散るとき、それこそが一番輝く瞬間だとシンは考えている。
「天童家の者として、十分に鍛えていたことが伺える―――」
「"備えて"いたんだな―――」
「先祖として、これほどまでに嬉しいことは無い。」
「いいのか?」
「油断していると、やられるのは貴様だぞ?」
二人ともまだ会話をする程度には余裕がある。
お互い手の内は晒していない。
「天童流剣術:三日月!!」
「天童流剣術:三日月!!」
「天童流剣術:十六夜!!」
「天童流剣術:十六夜!!」
「天童流剣術:繊月!!」
「天童流剣術:繊月!!」
人体の関節をバネにして、可動域を限界以上まで引き出し放つ剣術。
二人の天童家の者が使う天童流剣術。
全てを斬る剣術が衝突する。
進とシンの力は拮抗する。
「聖剣技:聖乱衝王斬!!」
「おっ、次は聖剣技か!?」
雪月花から無数の光の渦が巻き起こり、シンを貫く為、迫り来る。
「おっ、おおぉぉーーっ!!」
事も無げに進の聖剣技を受け止めるシン。
「聖皇剣技:神天聖皇覇剣!!」
シンの頭上に巨大な白く輝く光の剣が無数に出現する。
それらが一つの巨大な剣となり、シン目掛けて突き刺さろうとする。
「いいねェ!!」
「もっと殺す気で来い!!」
「全部、受け止めてやるよォ!!」
ドオォォォォーーーッ!!
進の剣技は地面を抉りシンを貫く。
シンは貫かれながらも不敵な笑みを浮かべ、こちらに顔を向ける。
ニヤアァァ~~~~っ!!!
「これでもまだ無傷か―――」
進は驚くこともなく、そう呟く。
「言ってなかったかもしれないけど、オレってさ―――」
「『不老不死』・・・なんだよね。」
不老不死―――
老いもしないし、死にもしない。
なるほど、致命傷を受けてもすぐに治る訳だ。
「それが、どうした?」
「それでオレが諦めるとでも思ったか?」
「敗北を認めるとでも思ったか?」
「絶望するとでも思ったのか?」
「オレの先祖なのに考えが甘すぎるんじゃないか?」
淡々と口にする進―――
それが虚勢でないことをシンはすぐに察した。
「コレはイジメ甲斐がありそうだぜ―――」