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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
最終章 エレベーターに乗って異世界に来たオレ達は現実世界に帰る

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第746話 【デルタ∴カラミティ】エアルベアでは②


~人間の国 エアルベア~

 

 戦争が開始されてから数時間が経過していた。

 

 円卓の騎士達の奮闘もあり、人類サイドがかなり優勢。

 

 ペルダン、グレガーも派遣されたはいいが、ほとんど手を出すこともなく、時だけが過ぎていった。

 

 「このままボク達の出番もなく、終わるかもしれないね~~。」

 

 グレガーはそんな気の抜けたことを云い出す。

 

 「グレガー、油断しない方がいいと思う。」

 

 ペルダンは何か嫌な予感がしていた。

 

 それは数多の勝負で敗けてきたあの時と同じ感覚―――

 

 

 同時刻、ペルダン達から少し離れた見晴らしのいい丘にて。

 

 「荒木のヤツ、王権の奪取に成功したみたいだって―――」

 

 「あのオッサン、やるじゃん。」

 

 「でもランジネット公国ってクッソ小国だろ?」

 「それでイキられてもなぁ―――」

 

 黒いスーツにお洒落なネクタイをした者達が数十人。

 

 「揃っているみたいだな―――」

 

 しゃがれた声の男が彼らの前に立つ。

 

 圧倒的な威圧感を引っ提げて。

 

 「国光さん!?」

 

 男の名前は『国光 智明』。

 

 天童グループ第三事業本部の事業部長を務める男。

 

 徳川と同格の男。

 

 そんな男がこのヌバモンドの地にて、暗躍を行っている。

 

 まさしく、天童グループへの反逆。

 

 天童 真が亡くなったことを知り、やってきた。

 

 シンから教えられたこの世界の抜け道を使って―――

 

 「今回の我々の相手はあのエアルベアだ―――」

 「どんな手を使ってもいい。」

 「あの国を墜とし、アーサー王の持つ王権を奪取するのだッ!!」

 

 国光は集められた優秀な部下達に命じる。

 

 現状、ネオ魔王軍は劣勢。

 

 そんな状況を変える為の戦力投入。

 

 「国光さん―――」

 「お言葉ですが、本当に良いのですか?」

 「徳川さん達、第一事業本部の連中は進様達の側に付いているとか―――」

 「コレは天童グループに対する反逆に当たるのでは?」

 

 国光の部下の一人がそう云った。

 

 その者の言葉は至極当たり前の意見。

 

 真が亡き今、天童グループの後継者は進、新、心の三名のいずれか。

 

 その三人がシンと敵対しているが、自分達は逆にシンの側に付いている。

 

 それを反逆と捉えるのは自然の発想だった。

 

 「コレが天童グループに対する反逆か・・・。」

 「確かにお前の言うことは合っている。」

 「だが、考えてもみろ!」

 「これはある意味チャンスなのだ!!」

 

 

 「チャンス・・・!?」

 

 「社長が死んだ今、あの三人のガキのいずれかが私達の上に立つだろう。」

 「しかし、本当にそれでいいのか?」

 「君達はそれを本当に心の底から望んでいるのか?」

 「胸に手を当てて、ゆっくり、そして冷静に考えてみるんだ―――!!」

 「忘れていないか?」

 「私達がどれだけの苦痛を伴い、今の地位を築いてきたかを!!」

 「あんなポッと出のガキどもに易々と上を行かれていいハズが無かろうッ!!」

 「男なら野望を抱けッ!!野心を持てッ!!功名心を望めッ!!」

 「常に上を目指して登り続けろッ!!」

 「このままでいいなどという怠慢は今すぐ捨て去れッ!!」

 「そうやってこそ、私達は生きていると云えるッ!!」

 

 まるでスピーチのように部下達に語り掛ける。

 

 ゆっくりと頭に残る様に何度も同じようなワードを繰り返し―――

 

 大仰な身振り手振りを用い―――

 

 声のトーンやテンポをコントロールし―――

 

 国光は繰り返し言葉にする。

 

 ナチスのヒトラーは人々の心に強く印象付ける為、演説の際にいくつかテクニックを用いた。

 

 論理よりも感情の重視や単純な繰り返しの言葉、明確な敵と味方の構図、大仰な身振り手振り等々・・・。

 

 この時、国光もそれを行い、部下達に強く印象付けた。

 

 そして、彼らの心をコントロールしたのだ。

 

 

 「シンとアイツ等は衝突し合う―――」

 「コレは奴らを一網打尽に出来るチャンスなのだ!!」

 「残った吉秀の奴を潰せば、私達がトップに君臨できるッ!!」

 「そんな未曽有のチャンスを逃していいのか!?」

 

 

 中にはあまりの感動に泣きだす者もいたという。

 

 国光という男のカリスマ性が成せる業。

 

 こうして、覚悟を決めた仕事人(プロ)達が一斉に動き出す。

 

 その数、数十人。

 

 しかし、一人一人が一騎当千の戦力。

 

 そんな彼らが死に物狂いで騎士や冒険者たちに挑みに行っているのだ。

 

 戦況は一変する。

 

 

 「な、何が起こったというのだ・・・!?」

 

 ペルダン―――

 

 この時、恐怖に震える。

 

 先ほどまで完全に優勢になっていたエアルベアが一気にひっくり返され、円卓の騎士達は地に倒れていた。

 

 

 「ランスロット!?」

 

 「クッ・・・一体、この者達はどこから―――」

 

 「悪いな・・・コレも仕事なんでね―――!!」

 「俺達がのし上がる為の―――」

 

 「グアアアァァーーー!!」

 

 ランスロットがやられた。

 

 「グレガー!!やるぞ!!」

 

 ペルダンが吠える。

 

 自らの生命の危険すら感じる謎の黒い服の集団。

 

 いや、この集団を私は知っている―――

 

 あの天童 真が呼んだ天童グループの者達と同じ。

 

 ということは彼らも・・・。

 

 「あいよ―――」

 

 グレガーが応答する。

 

 そして、二人は大量の仕事人(プロ)集団に闘いを挑む。

 

 

 ペルダン達の奮闘も虚しく、エアルベアは敗北を喫する。

 

 そして、このエアルベアの大敗は歴史上名高く、ヴァルドラ平原で行われたことからヴァルドラ大戦と呼ばれることになる。

 

 そして、この国光の暗躍が後の新たな火種となることをまだ誰も知る由もない。

 

 

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